駿府城公園「おでんやおばちゃん」が守る
静岡おでんの五か条と商売の原点
駿府城公園でおでん屋を営む杉浦 孝氏。第1回は、夜の商売を手放した杉浦さんの話をご紹介しました。
今回は静岡おでんについてお聞きしました。黒いスープに黒いはんぺん、そして夏でも食べられるという、他のおでんとはひと味違う食文化。知れば知るほど、一杯のおでんの奥に静岡の歴史と暮らしが見えてきます。
おでんやおばちゃん 店主 杉浦 孝 氏
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五ヶ条が教えてくれる、静岡おでんの流儀
─静岡おでんについて教えてください。
静岡おでんには「静岡おでんの会」が定めた五ヶ条があります。1つ目は黒いスープ。牛すじで出汁をとった、濃い口醤油ベースです。2つ目は黒はんぺんが入っていること。一般的にはんぺんといえば白くてふわふわしたものですが、静岡では違います。サバやイワシなど青魚の練り物で、つみれを平らにしたようなものです。3つ目が串に刺さっていること。もともとは自分で鍋から串を取り、最後に串の数や形で会計をするスタイルだったんです。4つ目は出汁粉をかけること。サバやイワシの削り節と青のりを混ぜたもので、たこ焼きのかつお節に近いイメージです。そして5つ目が、駄菓子屋にもあるということ。駄菓子屋さんにおでんがあるというと、驚かれることが多いです。昔は文房具屋さんのストーブの上に家庭用の鍋が乗っていて、そこから自分で取って食べるなんてことも普通にありました。これが静岡おでんの文化的な核心かもしれません。
─スープを飲まないと聞いて驚きました。
そうなんです。出汁粉をかけて食べるので、スープを飲む文化がないんですよ。おでんといえば、寒い日に熱々のスープで体を温めるイメージだと思うのですが、静岡おでんにはそれがない。だから1年中食べられる。夏の海の家や市民プールの売店にも昔はおでんがあって、かき氷や焼きそばと並んで串を取って食べていたんです。今でいうコンビニのホットスナックのコーナーが、昔の静岡では「おでんコーナー」だったわけです。

もったいない精神が生んだ、美味しくなる知恵
─黒はんぺんはどんなものか教えてください。
静岡県内全域に広まっているわけではなく、富士川から大井川の間、いわゆる中部地区に集中しているんです。昔は川を渡ることが簡単ではなかったので、その地域の中で独自に発展した食文化だと言われています。
昔から、駿河湾ではイワシが大量に取れたんですが、生のままでは長く保存できないので、加工して練り物にしたんです。骨ごと使いますから、弾力があってしっかりした食感です。
由来については面白い話もあって、徳川の時代に半兵衛という料理人が殿様にイワシの練り物を出したところ、「これは何だ?」と聞かれて「半兵衛です」と自分の名前を答えたのが「はんぺん」の語源だという説があります。後付けかもしれませんけどね(笑)
─静岡おでん全体に通じる背景のようなものはありますか?
全部つながっているのは「もったいない精神」だと思っています。黒はんぺんはイワシを加工して日持ちさせるところから生まれた。出汁粉は静岡の特産品である削り節の副産物を有効活用したもの。モツや牛スジも、もともとは捨てられていたものを使い始めたのが起源です。今では牛スジなんて高級食材ですけどね。
捨てるものを知恵で美味しくしてきた、その積み重ねが静岡おでんという食文化を作り上げてきたんだと思います。知れば知るほど、一杯のおでんの奥に静岡の歴史と暮らしが見えてくる。それがこの食文化の面白さですね。
第1回は、杉浦さんが駿府城公園に出店した物語をお届け
第3回は、杉浦さんの人生を変えたヒッチハイクの話と、今後の展望をご紹介します
<会社情報>
| おでんやおばちゃん | |
|---|---|
| 所在地 | 静岡市葵区駿府城公園1-1 |
| 設立 | 2004年4月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


