廃ガラスが道になり、グラスになる。
田中商店が体現する「地球市民」としての生き方
リユースできなくなったびんは、道になる。グラスになる。そして地域の誇りになる。
廃ガラスを砕いて敷き詰めた「リグラスロード」の誕生から、びんをカットしたガラス工芸品を手がける工房「リグラス」の立ち上げまで、田中利和氏の活動は留まることを知りません。官と民、企業と市民をつなぐ「コーディネーター」として、73歳の今も人生のドラマを描き続ける田中氏が語る、循環社会への情熱と展望をお届けします。
株式会社田中商店 / 代表取締役 田中 利和 様
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商店街の潤いを目指した歩道づくりからガラス工房の立ち上げへ
─ 商店街の歩道をよみがえらせる「リグラスロード」の取り組みも地域活動の一つですね。
そうですね。水俣の商店街の歩道を工事するプロジェクトがあったのですが、リサイクルガラスを使った道を提案して採用されました。リユースができなかったガラスびんなどの廃ガラスを細かく砕いたものを敷き詰めることで滑りにくくなり、クッション性もあります。「リグラスロード」は私が命名したんですよ。水俣市のSDGsへの取り組みを紹介する「水俣ワーケーション」が開催された際には、その特長も説明しました。ただ、問題がありました。こういった取り組みをしても商店街の潤いにはつながりにくいのです。なぜなら、来た方に買っていただくものがないからです。
─ 問題をどう解決されたのですか?
ガラスにちなんだ民芸品を作るのはどうか、という話が出ました。琉球ガラスや薩摩切子といった案が出たのですが、そういった商品は高価になりがちです。それで、びんをカットしてグラスにするなど、カットガラス工芸といった形で商品開発をした方が単価も抑えられる、という提案をしたんです。すると「お前が提案したんだからお前がやれ」と言われまして(笑)。ガラス工房「リグラス」を立ち上げ、とりあえず私が職人になりました。もう大忙しです。
─ まさかのガラス職人もされているんですね。どんな商品があるのでしょうか?
昔ながらの飲料メーカーのびんをカットしてミルクピッチャーにしたり、花びんにしたりと、さまざまな商品を作っています。今は弟子もいて、290種類ほどの商品があります。店頭販売のほかイベントなどにも出店しているのですが、売れ行きは非常に好調です。購入者は若い女性が圧倒的に多いです。見た目がかわいいのか、商品の写真を撮っていかれます。彼女たちが写真をSNSにアップするので午後からはそれを見たお友達が来る、といった感じで私にとってはびっくりする世界ですね。また、年配の方にとっては懐かしいのか「これ昔のあれのびんだね」といって買っていかれます。こういった反応を見ていると、リユースは将来もっと追い風になる気がしています。

リグラスの花びん
市民と企業と行政をつないでいく、「地球市民」としての情熱
─ 最後に、これからの展望と活動へかける想いをお聞かせください。
私は今年で73歳になるのですが、まだまだやりたいことがあります。先日ちょうど水俣で会議があり、気持ちが引き締まりましたね。もっと体力をつけて考え方もどんどんリニューアルさせて、10歳くらい若返るつもりで頑張っていきたいと思います。
地球が誕生して46億年と言われますが、人類が誕生してからの長い歴史のなかでも、たった300年前の産業革命以降、物質文明が一気に進んだことで、今やウイルスや環境破壊などさまざまな問題が起きています。これを解決するために、やはりSDGsを意識し連携していかなければなりません。私たちがやろうとしているのは、SDGs17の目標にある12番目の「つくる責任 つかう責任」を果たしながら、企業や行政と連携して、11番目の「住み続けられるまちづくり」を実現することです。
─ 廃ガラスを活用した「リグラスロード」や「リグラス」のように、ですね。
そうです。今の社会は、生産から廃棄までの間で膨大なエネルギーを使って燃やしたり埋め立てたり、結局のところ資源が循環して完結していません。完結させるためには、そもそも廃棄物を一切出さない「ゼロ・ウェイスト」の視点での商品開発やルール作りが必要です。しかし今の世界は、どこもお金や欲に支配され果てしなく資源を欲しがり、核の脅威まで抱えています。そうなると、やはり「地球市民」としての考え方を一人ひとりが持たなければ、本当の世界平和はないという結論に行き着くんです。
こうした広い視点を持って、市民と産業界と行政が連携し、まるで「一揆を起こす」ような強いエネルギーで行動を起こしていく。それが、当社の理念「地域と共に未来を創る」です。当社は「びんを売ること」そのものが暖簾ではありません。官と民、企業と市民をつなぎ、循環の裾野を広げていく「コーディネーターとしての姿勢」こそが、田中商店の本当の暖簾なのだと思っています。

─ なぜそれほどまでに強い気持ちで動き続けられるのでしょうか。
私の父の遺言が「人生にドラマを作れ」でした。それが頭の片隅にドーンとあります。それをずっと作ってきて、今、人生のドラマの最終ページに差し掛かっています。ハッピーエンドで終わるのがドラマですよね。
「今日は何しようかっていう老後生活を送るな、バカタレが」という姿勢で、自分の人生ドラマを作っているんです。
<会社情報>
| 株式会社田中商店 | |
|---|---|
| 所在地 | 熊本県熊本市南区良町5-22-26(本社) |
| 設立 | 1954年12月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


