会場は営業店のロビー!
但馬信用金庫「たんしん演劇部」始動
演劇でまちづくりを進める兵庫県豊岡市。その豊岡に拠点を置く但馬信用金庫に、2025年、前例のない部活動が誕生しました。その名も「たんしん演劇部」。しかも初公演の舞台は、実際に業務が行われている営業店のロビーでした。
人事部のベテラン職員、小山尚之氏、そして芸術文化観光専門職大学1期生の新入職員、稲子朋花氏・加藤碧氏。この3人が立ち上げた演劇部。立ち上げの経緯と想いを聞きました。
但馬信用金庫 人事部 小山 尚之 氏 / 総合企画部 経営企画課 稲子 朋花 氏 / 加藤 碧 氏
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文化で地域貢献。信用金庫に、演劇部
─ まずは、「たんしん演劇部」について教えてください。
小山氏 但馬信用金庫内で、2025年に立ち上げた演劇部です。信用金庫が「地域に貢献」というと、どうしてもお金がイメージされます。でも、お金だけではなくて、文化や芸術でも貢献できることがあるんじゃないか、というのが出発点です。
豊岡は「演劇のまち」なので、演劇という文化の魅力を地域の内外に伝えたい。職員に対しても同じです。演劇ってなんとなく敷居が高いイメージがありますよね。それを1人でも崩せたらいいなと思っています。

演劇部を立ち上げた小山氏
演劇でまちづくり。豊岡という土台
─ 豊岡が「演劇のまち」になった経緯を教えてください。
稲子氏 前々市長が「演劇で地方創生をする」という方針で市政を進めたことがきっかけです。その流れの中で2020年に豊岡演劇祭が始まり、今年で7年目。今では国内外から100を超える団体が参加する、日本最大級の演劇祭に育っています。
─ その豊岡に、芸術文化観光専門職大学という珍しい学校もできましたね。
稲子氏 演劇祭のフェスティバルディレクターでもある平田オリザさんが深く関わって、2021年に開学した、芸術文化と観光の視点から地域活性化を学ぶ日本初の学校です。私と加藤さんはその1期生の卒業生です。
加藤氏 豊岡という土地に、「演劇でまちをつくろう」という動きがあって、その人材を育てる学校ができて、そこで学んだ私たちがこの信用金庫に入った。必然のような流れだなと思います。
─ お2人はもともと金融機関を志望していたんですか?
加藤氏 大学の実習でインターンとしてお世話になったのがきっかけです。豊岡で働くなら但馬信用金庫、と考えていましたが、まさかここで演劇をやることになるとは思っていませんでした(笑)。
稲子氏 私も同じです。インターンで関わった事業支援やまちづくりが、学んできたことと重なりました。現場に近いところで動ける信用金庫の方が自分に合っていると感じました。
─ 演劇部ができることは、入庫前から知っていたんですか?
小山氏 加藤さんには内定の時に「演劇部を創るぞ」と伝えていたんですが、後から聞いたら「どうせできないよ」と思ってたらしくて(笑)。こっちは「よっしゃ、まず1人!」と思ってたのに。
加藤氏 社会人になっても演劇は続けるつもりでいたので「信用金庫と演劇」と思ってはいましたが、まさかの「信用金庫で演劇」でした(笑)。

加藤氏「まさかここで演劇をやることになるとは」
承認まで交渉ゼロ。演劇部、あっさり爆誕
─ 演劇部を立ち上げることは、すぐに許可されたのですか?
小山氏 本当にすんなりでしたよ。個性を大事にする経営陣だったことが大きいですね。加えて、信用金庫として地域文化の担い手となり、演劇を通じて人と人をつなぐ挑戦でもあり、すっと話が進みました。
何回も交渉して「お願いします」と頭を下げる、みたいなのは一切なくて、逆に「頑張れ」と背中を押してもらいました。何より我々劇団の本気が伝わったということでしょう。
金融機関で演劇部ができたのは日本初です……おそらく(笑)。
─ 組織内の反応はいかがでしたか?最初から歓迎されていたのでしょうか。
小山氏 正直、最初からうまくいったわけではありません。演劇ってどうしても「趣味」のイメージがあって、賛成が2割、反対が2割、どちらでもないが6割。そんな感じでした。
加藤氏 ゲネプロ(本番前のリハーサル)を職員に見てもらう機会を作ったんです。実際に見ていただいたら、応援しようと思ってくれた方がぐっと増えた印象です。理解が広がるにつれ、「頑張ってね」と声をかけていただくようになりました。
小山氏 最初は無関心だった人が「いいじゃないか」に変わっていく瞬間を目の当たりにしました。
会場は支店の中!信用金庫のロビーで演劇披露

2025年豊岡演劇祭、本番のようす。会場は支店のロビー。 (写真/トモカネアヤカ)
─ 初公演の舞台が信用金庫のロビーだったと伺いました。
小山氏 豊岡演劇祭への参加作品で、実際に職員が働いているロビーを舞台にしました。金融機関のロビーで演劇をやったのは世界初ではないでしょうか!
ただ、それだけに準備は大変でしたよ。本番は閉店後ですから、お金が合わなかったらどうしようなど、いろんなことを想定しなければなりませんでした。でも、やってみると、別の店舗の職員が手伝いに来るなど、サポートしてくれる人が日に日に増えていきました。これもうまくいった大きな理由の一つだと思っています。
本番は大成功でした。終業後、週1で2時間の練習を3カ月。頑張ったかいがありました。
初公演は地域にどんな変化をもたらしたのか。
次回は公演後に生まれた波紋と、演劇が職場にもたらした変化についてお届けします。
第2回:「あの演劇部の!」と声をかけられる存在に。公演後のストーリーはこちら
第3回:創設者はアブラゼミ。3人の出会いとこれからの物語はこちら
<会社情報>
| 但馬信用金庫 | |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県豊岡市中央町17-8 |
| 設立 | 1924年8月(創業) |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


