2026年07月14日

「あの演劇部の!」
但馬信用金庫が証明した演劇とまちの新しい関係

但馬信用金庫で2025年に生まれた「たんしん演劇部」。
第1回では、演劇部が生まれた経緯と、実際に業務が行われている営業店のロビーを舞台にした初公演までの道のりをご紹介しました。
今回は、公演後に生まれた変化についてお聞きします。地域からの反応、仕事への影響、そして演劇が人材育成にもたらす可能性。信用金庫×演劇という挑戦は、地域のあちこちに波紋を広げています。

但馬信用金庫 人事部 小山 尚之 氏 / 総合企画部 経営企画課 稲子 朋花 氏 / 加藤 碧 氏

舞台の幕が下りた後に起きたこと

─ 公演後、地域からの反応はいかがでしたか?

小山氏 信用金庫には親しみや温かみのイメージがあると思うんですが、演劇を観ていただいた方から「まさにそれを感じた」という声をたくさんいただきました。観られなかった方からは「次は絶対行くから」という声も。

なかでも嬉しかったのは、「次はうちの店にチラシ貼るから言ってね」と声をかけてくれたことです。こちらからお願いするのではなく、向こうから言ってくれる。本当に嬉しかったです。

2025年豊岡演劇祭のポスター

─ 演劇部の活動が、日々の仕事に影響していると感じることはありますか?

稲子氏 観光分野に携わっているので、外に出ていろんな方にお会いする機会があるんですが、但馬信用金庫と自己紹介すると、「あの演劇部の」と話を振ってくださって、話のつかみがバッチリなんです。演劇部がなければ、初対面の挨拶ってもう少し硬いものになると思いますし、演劇に関わっているという「私の別の側面」を知っていただくのも、もう少し後のはず。それが早い段階で自分の中身を知っていただけるので、ありがたいなと思っています。

加藤氏 働きながら演劇ができるんだ、ということを同世代に実感してもらえたのが大きかったです。道を歩いていたら「たんしん演劇部の!」と声をかけられることもあります。まさか信用金庫の職員としてそういう声をかけてもらえるとは思っていなかったので、すごく嬉しいですね。

お客様の顔の見える場所で、挑戦できる

─ 公演を終え、改めて地域の金融機関で働く魅力とは何だと思いますか?

稲子氏 お客様の顔がきちんと見えることです。公演を見に来てくださった方の多くが信用金庫のお客様でした。誰のために頑張るかが、はっきりと見える。それが私はとても好きです。

加藤氏 何かに挑戦する時に、味方をつくりやすいということだと思います。これまで役職員が積み重ねてきた信頼があるからこそ、新しいことをやっても「信金さんだから」と応援してもらえる。挑戦する時に、そばに応援してくれる人がいるというのは、大きな強みだと感じています。

稲子氏「演劇部という『自分の別の側面』が、地域との距離を縮める」

演劇が育てる、主体性と達成感

─ これは人事部である小山様に伺いたいのですが、演劇部の活動は、人材育成という面でも効果があると感じますか?

小山氏 それはまさに私が目指したいところです。演劇って、誰かの指示を待っているだけではできない。全体の流れを理解して、役割を考えて自ら動く必要がある。その経験が、主体性や当事者意識の向上につながればいいなと思っています。

それに、演劇には明確なゴールがある。短期間で同じ目標に向かって、それぞれが役割を担って達成する。その瞬間の感動は、仕事ではなかなか味わいにくいものです。そういう経験が仕事にもつながっていったらいいなと思っています。

─ 実際に、周りに変化はありましたか?

小山氏 公演が終わった後、ある職員から「演劇部について教えてほしい」と電話がありました。学生の頃に美術を専攻していたそうで、裏方として関わりたいと言ってくれて。プレイヤーじゃなくても、舞台装飾という形で演劇部に関わりたいという若手が出てきた。演劇を一緒に作りたいという職員が出てきたわけですから、本当に嬉しかったですね。

─ 地域企業が若手人材を獲得・定着させるために、必要なことは何だと思いますか?

小山氏 若い方と話していると、「安定」より「意味のある仕事かどうか」を重視している人が本当に多い。この会社は何のために存在しているのか、地域にどんな価値を生み出しているのか。それをいかに伝えられるかが、採用にも定着にもつながると思っています。

処遇ももちろん大事ですが、会社の存在意義を当金庫ならではの個性をもって発信できるかどうか。当金庫の場合、演劇部もその一つになれればいいなと思っています。

小山氏「『安定』より『意味』を求める若手に、演劇部で応えたい」

 

次回は、そんな3人の「演劇との出会い」の物語をお届けします。 

第1回:会場は営業店のロビー!たんしん演劇部、誕生の舞台裏はこちら
第3回:創設者はアブラゼミ。3人の出会いとこれからの物語はこちら

<会社情報>

但馬信用金庫
所在地 兵庫県豊岡市中央町17-8
設立 1924年8月(創業)
URL

https://www.tanshin.co.jp

※情報と肩書は取材当時のもの
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