中小企業の人手不足はなぜ解決しない?
118社取材で見えた「定着・育成・外国人材」3つの壁
人手不足の「本当の姿」——3つの類型
「また辞めた」「せっかく育てたのに……」「外国人材、うまくいかない」
人手不足に悩む経営者の声を聞いていると、問題の中心が「採用できないこと」だけではないと気づきます。求人を出しても来ない——それは確かに辛い。しかし、やっと入ってくれた人が定着しない。育てるお金も時間も、もう残っていない。そんな「次の壁」にぶつかっている会社が、全国にたくさんあります。
「採れない」より「育たない」「辞める」が深刻——そう感じた経営者も多いのではないでしょうか。「コネクト創刊1周年記念レポートVol.1」では全国118社へのインタビューで見えてきた「定着・育成・外国人材活用」3つの壁を、調査レポートとしてまとめました。自社の課題がどの類型に当てはまるか、ぜひ確認してみてください。
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類型① 採っても「辞める・育たない」
「100人育てたとして、最終的に5、6人が残った、という感じ。育ったとしても、よその会社に行ってしまうことも多い」(造船関連・塗装業 経営者)
造船関連の塗装業では、一人前になるまでに4〜6年かかります。その間の給与は決して高くなく、「最初から高い給料が欲しい」「もっとクリーンな仕事がしたい」と入社後すぐに離れる若者が後を絶たない実態が明らかになりました。
会社側のコスト負担も深刻です。製造業のある経営者はこう語ります。「小さな会社には経験者は来ない。未経験で入ってくれた社員を育てながら、経営も営業も自分たちで回している。次のステージを目指すにはもっと組織を作らないといけないが、育てる余裕がそもそもない」。
育成に時間をかけてようやく戦力になったころに辞めていく——求職者側の「定着しない」問題は、同時に企業側の「育成コストが回収できない」問題でもあります。人手不足は求職者と企業、双方にとっての構造的なすれ違いとして深刻化しています。
類型② 「安定志向」と「仕事の意味」——変わりゆく若手世代
「独立を目指す社員がほとんどゼロに近い。安定した、自分の時間もしっかりあって、そういった生活を送りたいという社員しかいない。今どうしても『権利か義務か』という話が先に出る」(飲食チェーン・取締役)
かつては独立志向の社員が多かったという飲食フランチャイズ企業では、この30年における若手の意識変容が語られました。働き方への意識の変化は飲食業に限らず、複数の業種で共通して聞かれた声です。
「たとえば年収3000万になりたいと言う。じゃあそのお金で何がしたいの?と聞いたら答えられない人がすごく多い。目標がない、これに尽きる」(飲食業・20代セクションマネージャー)
注目すべきは、この言葉が20代のマネージャー自身から出てきた点です。「今の若い世代は目標がない。自分の同年代を含めて」と自戒を込めながらも、「受け入れてくれる前提があるから相談する。上の世代も、話しやすい環境を作らなければ若手は相談してこない」と、経営側にも変化を求めました。
一方で取材を通じて、希望も見えてきました。「まず休みを増やし、週休二日を実現することから始めた」と語る経営者も多くいました。「今の社員が求める環境」に会社を合わせていく——その動きが、少しずつ現れ始めています。
類型③ 外国人材を「採ったはいいが、うまくいかなかった」
「日本語能力試験のN5にも最後まで合格しなかった。3年間、文字も読めない状態で、何も任せることができなかった」(外国人材を受け入れた経営者)
外国人材の活用が広がる一方、「一度入れたがうまくいかなかった」という経験を持つ経営者も少なくありません。外国人材支援を手がける経営者は「コミュニケーションの問題や文化ギャップで悩んでいた経営者が多い」と語ります。言葉の壁だけでなく、時間厳守・報連相といった日本の職場文化との違い、空気を読むコミュニケーションスタイルの差異が現場を難しくしています。
さらに、特定技能・技能実習に関わる法的手続きの複雑さなど、「採れればいい」では解決しない問題が山積しています。
<調査概要>
調査名称: コネクト創刊1周年記念レポート「地域中小企業のリアル」Vol.1
調査期間: 2025年3月〜2026年3月
調査対象: 全国118社の中小企業経営者・担当者(Big Advance会員企業中心)
調査方法: 対面・オンラインによる個別インタビュー(各社60〜90分)
対象業種: 食品製造、製造業、小売、介護・福祉、飲食、IT、造船関連など
Vol.2のテーマは「事業承継」。
「準備して臨むもの」というイメージとは裏腹に、多くの経営者にとって承継は「ある日突然」始まっていました。118社の取材で見えた3つの承継パターンを、次回もレポートでお届けします。


