良い仕事をしているのに、誰にも知られていない
中小企業の「発信力」の現実
3つ目の課題——「良いものを持ちながら、誰にも知られていない」
人手不足、事業承継——。全国118社への取材を通じて見えてきた課題を、これまで2回にわたってお届けしてきました。最終回となる今回のテーマは、「発信力」です。
優れた技術がある。品質にこだわり続けている。地域の人たちに愛されている。それでも、社外には届いていない——そんな企業の姿が、取材を重ねるほどに浮かび上がってきました。「良いものがあれば、いずれ伝わる」という言葉の裏側にある現実を、3つの類型で整理しました。
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類型① 「良いものがあるのに、言わない」——奥ゆかしさが、壁になる
「価値は元々あった。伝えないと伝わらない。日本人は奥ゆかしいから、陰ながら努力して言わない。でも言うべきだと思う」(食品製造業・代表取締役)
この言葉を語ったのは、三重県を拠点に弁当・給食事業を手がける食品製造業の経営者です。長年にわたって品質にこだわり、1日1万5000食を製造しながらも、その価値をなかなか外に発信できずにいた経験から出た言葉でした。
実はこの経営者自身、1年半前からお客様へニュースレターを発行し、自社の取り組みを丁寧に伝える広報活動に取り組み始めています。「弁当がなぜ冷たいのか」「どれだけの手間をかけているか」を言葉にすることで、価値への理解が深まり、単価の向上にもつながると考えているからです。
「良い仕事をしていれば、いずれ伝わる」——そんな職人気質の謙遜文化が、発信の壁の一つになっている中で、この経営者は自ら言葉にすることでその壁を越えようとしています。
類型② 「発信したくても、担当者がいない」——意欲はあっても、人手が足りない
発信の意欲はある。ツールも一応ある。しかし、それを担当できる人材がいない——そんな中小企業の実態が複数の取材で浮かび上がりました。
千葉県で習い事教室を経営する代表は「インスタは娘に任せています。若いから早いし、作るのが上手くて」と話します。ホームページを作成してみても「わからないから最初はほったらかし」で、知人のサポートを得てようやく更新できるようになりました。こうした話は、この企業に限りません。
SNSの運用やホームページの更新を、子や孫が担っている。発信の「担当者」は、実は家族だったというケースが多くあります。
兵庫県のオフィス機器・文具店を営む代表は「SNSはうちの若い社員がやってくれてます」と話し、センスのある20代の社員がインスタグラムを担当。撮影の工夫や投稿企画を任せることで、フォロワー1,000人を達成したキャンペーンも実現しました。
日常的に発信を続けるには、専任の人材か、継続的にサポートしてくれる存在が必要です。家族や若手社員に任せることが、発信を続けるひとつの現実的な一手かもしれません。
類型③ 「発信した会社は、実際に動き出した」——言い続けることで、世界が広がる
一方で、「発信する」という選択が、企業の可能性を大きく広げた事例もあります。
愛知県のある製造業では、2000年代からブログでの情報発信を続けていました。「NASAと仕事をしたい」とブログに書き続けたところ、それが縁となってJAXAの宇宙関連案件につながり、Google・JAXA・東京大学のロボット研究等との取引に発展していきました。「言い続けることで、本当に動き出した」という言葉は、発信と可能性の間にある確かなつながりを示しています。
発信しているかどうか——その差が、企業の未来を大きく左右しているのです。
「埋もれてしまう前に、届ける」コネクトが生まれた理由と、1年間で起きたこと
「世界シェアNo.1の製品を手がける会社でも、知られていないことがある。そういう企業にスポットライトが当たるような機会を作りたかった」——株式会社ココペリ代表・近藤繁はそう語ります。
『コネクト』は、中小企業支援プラットフォーム『Big Advance』から生まれたウェブメディアです。2025年3月の創刊以来、全国118社を取材してきました。取材先は、地域に根ざした中小企業が中心です。
記事の公開後、取材企業から「記事を見た方から商談のお声がけをいただいた」「問い合わせが届いた」という報告をいただいています。なかでも印象的なのが、愛知県のバネ製造業の事例です。『コネクト』で掲載した取材記事をきっかけに、テレビ番組の制作会社ディレクターから出演オファーが届き、テレビ番組への出演が実現しました。メディアがメディアへの扉を開いた、『コネクト』としても象徴的な出来事でした。
1年間・118社が教えてくれたこと
Vol.1「人手不足」、Vol.2「事業承継」、そして今回の「発信力」——
人が集まらない。後継者が見つからない。良いものが届かない。その背景には、「自分たちのことを、外の世界に伝えていない」という共通点があるように思います。
『コネクト』は2年目に入ります。引き続き、全国の中小企業のリアルな声を届けていきます。
<調査概要>
調査名称: コネクト創刊1周年記念レポート「地域中小企業のリアル」Vol.3
調査期間: 2025年3月〜2026年3月
調査対象: 全国118社の中小企業経営者・担当者(Big Advance会員企業中心)
調査方法: 対面・オンラインによる個別インタビュー(各社60〜90分)
対象業種: 食品製造、製造業、小売、介護・福祉、飲食、IT、造船関連など


