「継ぐつもりはなかった」が8割
事業承継は「突然」やってくる
事業承継の「本当の姿」——3つのパターン
「嫌でしたけどね」「逃げ出せばいいなって、今だから言えますけど」「赤字と借金と、何もわからない状態で——」
覚悟を決めて継いだわけではない経営者が、それでも今日も会社を動かし続けている。取材を重ねるほど、そんな現実が見えてきました。事業承継とは「準備して、徐々に引き継いでいくもの」というイメージと、大きくかけ離れた姿です。
「コネクト創刊1周年記念レポートVol.2」では、全国118社へのインタビューで見えてきた事業承継の3つのパターンを調査レポートとしてまとめました。自社の承継、あるいは身近な会社の状況と照らし合わせながら、ぜひ読んでみてください。
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パターン① 「ある日突然」型——親の急病で否応なく代表に
「赤字で借金とかいろいろある中で、急に父が倒れて。どうすればいいのかと。全くの素人でした」(製麺業・代表)
創業30年以上の製麺会社の現代表は、別会社で営業職として働いていた最中に父親が突然倒れたことで承継を余儀なくされました。引き継いだのは赤字と借金と、何もわからない状態。一から自分で対応していくことになりました。
急病や急逝による「ある日突然」の承継は、複数の企業で見られた事例です。引き継いだ直後の慌ただしさと混乱がいずれのケースにも共通していました。
パターン② 「気づいたら継いでた」型——状況に押されて帰郷、経営者としての準備はゼロのまま
「嫌でしたけどね。まあいつでも逃げ出せばいいなって、今だから言えますけど」(鞄製造業・代表)
鞄製造業の代表は、板前になりたかったという夢を持ちながら、「半分介護」のために帰郷しました。帰郷後に自ら製造ラインを立ち上げ、コロナ禍を機に異業種との融合に活路を見出しました。「コロナのせいでこうなったとは言いたくない。コロナのおかげで変われた会社になりたい」という言葉には、消極的な帰郷から自ら意味を作り出した経営者の姿がありました。
「父親も自分の代で終わらせるかどうかは迷っていたみたいで。継ぐ前提の勉強もしなかったし、前に勤めた会社も辞めるつもりで入ったわけではなかった」(プラスチック製造業・代表)
ある製造業では、先代自身が事業継続について迷っていたという状況のもと、帰郷と承継が曖昧なまま進みました。「継いでほしい」「いつか継ぐかもしれない」という前提が親子間で明示されていなかったケースが多いのが、取材を通じて見えた共通点でした。
パターン③ 「逆算して帰ってきた」型——スキルを積んでから継いだ好事例
「強みがないとダメだなと思っていて。商売って掛け算だと思うんですけど、自分がこの仕事に戻ってきた時に何ができるかと考えて、会計の専門性を持ってから継ごうと決めた」(精肉業・代表)
和牛を扱う精肉店の現代表は、監査法人で公認会計士として5年間のキャリアを積んでから帰郷しました。「会計はどの企業でも通じる共通言語。様々な会社のベストプラクティスを見られる」という発想で、自分の「掛け算の軸」を意図的に作ってから承継に臨んだといいます。
注目すべきは、このように「何を身につけてから継ぐか」を設計して動き出した経営者が、118社の取材の中で極めて少数だったということです。「継ぐかもしれない」という前提はあっても、具体的に備えていたケースはほんの一握り。そこにこそ、事業継承の現実があります。
<調査概要>
調査名称: コネクト創刊1周年記念レポート「地域中小企業のリアル」Vol.2
調査期間: 2025年3月〜2026年3月
調査対象: 全国118社の中小企業経営者・担当者(Big Advance会員企業中心)
調査方法: 対面・オンラインによる個別インタビュー(各社60〜90分)
対象業種: 食品製造、製造業、小売、介護・福祉、飲食、IT、造船関連など
Vol.3のテーマは「発信力不足」。「いい仕事をしている自信はある。でも、誰にも知られていない」——118社が抱える「外に伝える力」の課題を、次回もレポートでお届けします。


