2025年06月05日

“難しさ”こそが技術向上の糧
トライ&エラーで新分野開拓 株式会社オカダ精機

福井県で精密部品の加工を手がける株式会社オカダ精機。どれほど難易度の高い依頼に対してもまずは挑戦し、技術を培ってきました。祖父の代の船舶関連部品製造から続く技術の系譜は時代と共に形を変え、現在では航空宇宙関係の精密部品製造にも活躍の場を広げています。今回は、人とのつながりやコミュニケーションを大切にし、信頼と実績を積み重ねてきた岡田代表にお話を伺いました。

株式会社オカダ精機 代表取締役 岡田 英樹 様

はじまりは船舶部品設計会社 精密部品加工業への道のり

ー会社概要と創業の背景を教えてください。

当社は金属部品の加工を行っており、お客様から図面をいただいて個別のパーツを製作しています。最近は航空宇宙関係の会社からの依頼仕事が増えていますが、メインは工作機械の部品や自動車部品メーカー向けの製造ライン部品などの加工です。

私の祖父はもともと船舶のタコメーター関連の設計者として働いていましたが、戦争による疎開で福井に来て創業しました。祖父の残したノートには、パソコンもない時代にフリーハンドで描かれた美しい設計図が残されています。その精密さには今でも驚かされます。

私が幼い頃に会社は一度潰れ、父が新たに部品加工の会社として再スタートしました。当時父に専門的な技術や知識があったわけではなかったのですが、仕事をこなすうちに技術を磨いていきました。

-岡田代表ご自身のキャリアについて教えてください。

私は船員を養成する専門の高校に進み、船乗りになりました。商船に乗って7年ほど、主にサウジアラビアなど中東方面を航行していました。1980年代にイラン・イラク紛争が始まり、戦争で被害を受けた船が次々と出てくる状況を目の当たりにした頃、父から「手伝ってくれないか」と呼び戻されたこともあり、製造業に転身することを決めました。

父の会社は小さく設備も限られていましたが、独学でいろいろな勉強をしながら、少しずつ事業を形にしていきました。

-最近は航空宇宙関係の企業からもお仕事の依頼があるとのことですが、そちらについても教えてください。

小さな機械だけでは限界があると感じていたので、より高性能な機械を導入し、地元企業から精密な削り加工の仕事をいただくようになりました。転機となったのは、福井県の企業紹介雑誌に掲載されたことでした。

雑誌を見た東京のお客様から電話をいただき、『こんな仕事をやりませんか』とお声がかかりました。そのお客様は電子顕微鏡関連の事業をされていて、簡単な仕事から始め、徐々にハードルの高い仕事を任せていただけるようになりました。

この辺ではなかなか手に入らないレアメタルの素材を削る仕事など、『こういうことをやってみないか』とご依頼いただくようになりました。初回は難なくできたのですが、次の注文ではさっぱりできなくて。でもお客様が『時間がかかってもいいから、いろいろトライしてみて』と言ってくださり、いろんな工具メーカーのドリルを買い集めて試行錯誤を重ねました。そうしてようやく良い形になり、継続的にお仕事をいただけるようになりました。

そのお客様の取引先を紹介していただいて、今度は関東の医療機器の部品関係のお仕事もするようになりました。その仕事は完成品を川崎の会社に送って表面処理をしていたのですが、そこの金属加工会社からも『うちの仕事もやってほしい』と声がかかり、航空や宇宙関連のアルミの薄い部品の加工など、専門性の高い仕事へと広がっていきました。

自分から積極的に営業することはほとんどないのですが、これまで仲良くなったお客様が別のお客様を紹介してくださり、その紹介の連鎖で取引先が増えてきました。

Big Advanceで実現した県外マッチング

-どのようにBig Advanceの活用に至ったのですか?

コロナ禍で仕事が極端に落ち込んだ時期にBig Advanceに登録したのですが、日本全体の景気が落ち込んでいたこともありしばらく活動できずにいました。そんな中、信用金庫の担当者の方が案件を2、3件紙にまとめて持ってきてくださるなど、活用を促してくれました。

そうした中で、山梨県で機械設計をされている企業様とのマッチングが実現しました。その企業様は、山梨県内で小ロット製造できる企業が減ってきていることにお悩みだったため、福井県にある当社までお話を持ちかけてくださったのです。現在も数ヶ月おきに依頼をいただき、120万円ほどの取引になっています。

また、Big Advanceでホームページも作成したところ、以前よりもお問い合わせをいただけるようになりました。「大判焼きを作る金属の機械を作ってほしい」と問い合わせてくださった企業様には、お客様のこだわりに応えるため、現地まで出向いて要望に合わせた機械を製作しました。このようなオンリーワンの機械の製作依頼であっても当社は対応しています。Big Advanceのビジネスマッチング機能、ホームページ作成機能を通して取引先の拡大につながって良かったです。

多くの人との出会いが事業の軸に

-御社の雰囲気をみているとみなさん仲が良さそうですよね

そうですね、特にお客様とのコミュニケーションは非常に大切にしています。現場では仕事中に従業員とお客様が雑談することも歓迎していますし、休憩時間にお客様と一緒にコーヒーを飲んだりすることもあります。そういった日常的な関わりが、後々仕事の面でも助けになることが多いんです。困ったときに情報提供してくれたり、助言をくれたりと、日々のコミュニケーションは事業を進めていく中で支えにもなっています。

品質向上と新技術導入で不良率ゼロを目指す未来へ

-今後の課題と展望について教えてください

現在の課題は、設備投資の判断が難しくなっていることです。機械価格は以前の1.5倍に上昇し、人件費も増加する一方で、休日や残業にも制限があり、採算性の確保に苦慮しています。それでも最近は精度向上を目指し、新たな測定機を導入しました。これにより、従来1日を要していた検査作業が数分で完了できるようになったので、今後の業務効率化とお客様からの信頼向上に繋がると期待しています。

今後は精度保証により力を入れ、不良率を0にすることが目標です。新しい測定器の導入により、これまで目視や触感で確認していた平面度や平行度などの測定が数値化され、客観的な精度保証が可能になります。

現在は新規顧客の獲得よりも、既存のお客様との信頼関係を深め、より高品質な製品の提供に注力しています。不良率0を目指し、既存のお客様との関係維持と精度保証への取り組みを継続してまいります。

<会社情報>

株式会社オカダ精機
所在地 福井県鯖江市石田下町4-11-3
設立 2015年4月
URL

https://www.okadaseiki.com/

※情報と肩書は取材当時のもの
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