「食べられない」を「食べられる」に。
倉敷花桜ハムが貫く、
特定原材料不使用のハム・ソーセージづくり
岡山県早島町に拠点を構える株式会社薫製倶楽部。「倉敷花桜ハム」のブランドで、特定原材料9品目不使用・食品添加物不使用のハム・ソーセージを製造しています。代表の森雅昭氏は薬剤師でもあり、ハム・ソーセージづくりを専門に学んだ職人ではありません。だからこそ、特定原材料や添加物を「入れないでつくる」発想にたどり着き、北海道から九州まで約450店舗へ販路を広げてきました。アメリカ・オクラホマで出会ったスモーカー(薫製機)から始まる独自の道のりから、給食に使ってもらいたいという長年の夢まで、じっくり伺いました。
株式会社薫製倶楽部 代表取締役・薬剤師 森 雅昭 様
薬剤師から薫製の世界へ。知らないからこそ生まれた発想
─ まずは事業の概要と、森代表の経歴について教えてください。
当社は株式会社薫製倶楽部という社名で、「倉敷花桜ハム」のブランドでハム・ソーセージに特化した製造販売を行っています。創業から28年ほど、売上の構成はソーセージが6割、ベーコンが3割、ハム・焼き豚などその他が1割で、現在は5種類を製造しています。
実は私はもともと薬剤師なんですよ。今も資格は持っていますから「元」ではなく、現役の薬剤師でもあります。ですから、ハム・ソーセージのつくり方を専門に勉強してきた人間ではありません。これが当社の商品づくりの根っこにつながっているんです。
ハム・ソーセージのメーカーは日本に数多くあり、岡山県内にも複数社が存在する中で、当社はいちばん遅く参入した立ち位置です。後発だからこそできる商品づくりを大事にしています。
─ 商品の最大の特徴を教えていただけますか?
いちばんの特徴は、特定原材料9品目──卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、くるみ、カシューナッツ(食品表示法で表示が義務づけられたアレルゲン)──を一切使わないこと。商品の裏面を見ていただくとわかるのですが、原材料表示の「スラッシュ以下」、つまり食品添加物の記載がひとつもないんです。これを全商品で徹底していて、工場全体でアレルゲンを持ち込まない体制を取っています。
私が調べた限りですが、ここまで実践しているメーカーは全国でもほとんどなく、東北に1社いらっしゃる程度です。それくらい希少な取り組みだと自負しています。アレルギー対応は製造ラインの管理が本当に大変で、1回流したら徹底的に洗い流してから次にいかないといけない。たとえばハム・ソーセージで入っていなくても、焼き豚で醤油を使えば小麦が入ってきますから、工場全体で徹底するのは簡単ではないんです。だから当社は焼き豚も醤油を使わずにつくっています。
また、倉敷ソーセージはボイルするのではなく、焼いて食べるソーセージです。これも特徴の一つですね。

特定原材料9品目不使用、食品添加物不使用、賞味期限約1か月。倉敷花桜ハムの強みが詰まった商品ラインナップ
─ そもそも、なぜ「入れない」商品づくりに行き着いたのでしょう?
正直に申し上げると、私がハム・ソーセージのつくり方を勉強していなかったからなんです。日本のハム・ソーセージづくりでは一般的に、水分を加えながら練り上げる製法が採られており、商品によっては卵や乳由来の原料を使うこともあります。
でも私はそういう「常識」を知らずに始めたので、参考にしたのはインターネット黎明期に英語で取り寄せたアメリカやドイツの製法書でした。海外のレシピでは、卵や乳、小麦を入れなくてもソーセージはつくれるんですよ。だから「入れない」ことを当たり前として始められた。知らなかったからこそ、できたんです。
当社は加水の工程を行っていないため、肉の含有量が相対的に高く、素材本来の味わいがしっかり感じられる設計になっています。
さらに薫製の技術が保存性につながっており、当社のソーセージは冷蔵で約1か月の賞味期限を実現しています。冷凍流通が多い業界の中で、冷蔵で対応できる点も大きな差別化になっています。
オクラホマで出会ったスモーカーが、すべての始まりだった
─ 人生の転機になった出会いがあれば、ぜひ伺いたいです。
薫製倶楽部を始めるきっかけになった、アメリカ・オクラホマ州にあるスモーカーメーカー(薫製機メーカー)の社長との出会いですね。
サラリーマン時代、「スモーカー」で検索しても日本語の情報がひとつも出てこなかったんです。インターネット黎明期でしたから。それでアメリカのメーカーを見つけて、10日ほど休みを取っていきなり訪ねて行ったんです。オクラホマがどこにあるかも知らずに(笑)。ロサンゼルスからバスで2日かかってたどり着きました。
突然東洋人がやって来たわけですから先方も驚いたでしょうね、英語もそれほど話せませんでしたし。でもそこで肉の薫製が美味しくて「これだ」と思い、それからずっと個人輸入でスモーカーを買い続けています。いまだに日本にはそのメーカーのスモーカーは1台も入っていないと思います。完全な直輸入です。
日本のハム・ソーセージのスモーカーはほとんどドイツ製が主流で、製法もドイツ式に最適化されています。一方、当社の工場はほとんどアメリカ製の機械で、製法もアメリカ式。これも他社にはない特徴で、営業の場面でも「当社の商品はアメリカ式でつくっています」といつもお伝えしています。
今振り返れば、何の保証もなくアメリカまで会いに行ったというのは、なかなかの行動だったかもしれません。ただ当時から海外旅行はよく行っていて、訪れた国は20を超えていますから、海外への抵抗はまったくなかったんです。

工場長による薫製機紹介。このスモーカーとの出会いが森社長の人生の転機となった
「食べられない」をなくしたい。給食という長年の目標へ
─ 最後に、今後の展望について教えてください。
これからは小売店をさらに広げていくのと並行して、長年やりたかった給食市場への参入に挑戦したいですね。アレルギーのあるお子さんに「みんなと同じものを食べてもらう」ことに、当社の商品は確実に貢献できると思います。
創業100年近い無添加志向のハム屋さんも同じようなことをおっしゃっていました。本物を求める層は確実にいる。当社の特定原材料9品目不使用・食品添加物不使用という強みは、まさにそこに刺さると思っています。それから外食産業も視野に入れています。
創業からずっと右肩上がりだったのは、やってきた方向が間違っていない証だと思っています。展示会、紹介、オンラインの三本柱で出会いを広げていきたいですね。アレルギーで悩む方、食品添加物を避けたい方に「ちゃんと食べられる選択肢」を届け続ける。これからもこの軸はぶらさずに進んでいきたいです。

森代表(中央)を囲んで。玉島信用金庫の亀山氏(左)と東氏(右)
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<会社情報>
| 株式会社薫製倶楽部(倉敷花桜ハム) | |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県都窪郡早島町前潟611-1 |
| 設立 | 1998年6月 |
| URL | |
| ※情報と肩書きは取材当時のもの | |


