2026年11月05日

町の薬屋から食品卸へ
永仮商事が対話と現場主義で届けるこだわりの味

鹿児島県を拠点に、地元の特産品や全国のこだわりの食品を地域密着型スーパーマーケット卸している有限会社永仮商事。代表の永仮浩二氏が一人で切り盛りする同社ですが、その歩みは順風満帆ではありませんでした。町の薬屋から食品卸へと転換した当初は、スーパーへ販路を開くことができず、10年におよぶ苦難の時期を経験。その状況を打破したのが、生産者とスーパーの間に立ち、「仕入れて届ける」側に回るという発想の転換でした。現在はBig Advanceも活用しながら、全国のこだわりの商品を発掘しています。時代の変化を見据えた今後の販路開拓や、一人経営だからこそ大切にしている人とのつながりについて、永仮代表にお話を伺いました。

有限会社永仮商事 代表 永仮 浩二 様

町の薬屋から食品卸へ。葛藤の10年を経て掴んだ事業の輪郭

─ まず、御社の成り立ちと、事業概要について教えてください。

当社は1988年7月に設立し、元々は「町の薬屋さん」としてスタートしました。高校を卒業してから薬の問屋に勤め、25歳のときに独立し、15年ほど薬屋を営んでいましたが、少しずつ大型ドラッグストアが台頭してきました。そうした時代の変化を肌で感じ、「このままでは自分たちのような昔ながらの薬屋は淘汰されてしまうのではないか」という危機感を抱き、食品の卸売業へと舵を切る決断をしました。

現在は、鹿児島県内をはじめとするこだわりの菓子や食品を、地域密着型スーパーマーケット中心に卸しています。具体的には、鹿児島名物のさつま揚げやきびなごの真空パック、屋久島の柑橘類、たんかんの加工品、奄美大島のサーターアンダギーなどを取り扱っています。特にさつま揚げは当日製造したものを当日中に冷蔵発送するなど、鮮度を重視してお届けしています。また、鹿児島のものだけにとどまらず、全国のこだわりを持った生産者さんの商品も仕入れて販売していただいていますよ。

─ 薬屋から食品卸へと転換されてから、すぐに事業は軌道に乗ったのでしょうか。

いえ、全くそんなことはありませんでした。転換のきっかけ自体は、鹿児島でこだわりの黒糖を製造されている方と、「黒糖を扱ってみたらいいんじゃないか」という話になったことでした。しかし、やはり黒糖だけでは売れませんし、スーパー側も簡単には間口を開いてくれません。最初は5年頑張れば形になるだろうと考えていたのですが、苦しい期間が結局10年ほど続いてしまいました。その間はほかにも仕事をしてなんとか事業をつないでいました。

転機は、取引のある金融機関から色々な生産者さんを紹介いただいたことです。最初は自社の商品を売ることばかり考えていましたが、担当者の方に相談して、仕入れる側に回ったらうまく行くようになりました。スーパーに売りたくても、なかなか動けない生産者さんはたくさんいます。スーパーと取引のある当社が間に入れば、生産者さんは販路ができ、スーパーは他店と差別化でき、当社も売上が作れる。この形がうまいことはまりました。

さつま揚げの生産者さんと知り合ったのも、この時です。卸をしていない生産者さんにも足を運んで「分けてもらえませんか」とお願いし、販売店さんには、最初は売れなくても置き続けてもらうよう頼んで、お店に馴染むよう一緒に取り組みました。今ではリピーターも多く、もう14年ほど続いています。

リピーターも多いさつま揚げ

地域の価格感と素材を重視。どんな商品か分かる安心感が購買の鍵に

─ 扱われている商品は、どのような基準やこだわりを持って選ばれていますか。

一言で言うと、無添加のものです。ただ、販売店さんによって基準は異なり、「着色料が入っているものは置けない」というお店もあれば、許容範囲が広いお店もあります。そのため、ある程度の許容範囲を持ちながら生産者さんとお話しし、原材料などを確認しながら進めています。また、価格も大切です。卸している鹿児島や宮崎のスーパーの店頭で売れる価格でなければなりません。この地域のお客様が購入される価格帯を見極めてチョイスしています。

できるだけ生産者さんの地元の素材を使っているか、その土地ならではの名物かといった点も重視しています。他で見かけないような珍しい商品も探しますが、こちらであまり知られていないものだと販売店の方も躊躇されます。そうした場合は私が見本を購入して、食べてもらって判断いただくこともあります。ただ、私たちが良いと思っても、最終的に購入するお客様の反応はまた別です。いざ販売してみても、リピートが無いこともよくありますね。

─ 店頭で好評な商品には、どのような特徴があるのでしょうか。

根強く人気があるのは、お煎餅やあられ、カステラです。誰にとっても馴染みがあり、見てどんな商品なのか分かるので、手に取られやすいのではないかと思います。販売店の皆さんからよく言われるのは、「パッケージが素敵でも、中身が見えないと売れない」ということです。パッケージが綺麗でも中身が一切見えない商品は、どういうものか分からないのでお客様が手に取りづらく、販売店からも断られてしまうことがあります。私たちも観光地に行った時、試食して美味しかったら買いますし、箱に入っていてどういう商品か分からないものは買わない。それと似ていると思います。

対話でロスを防ぐ。店舗ごとの調整で築く信頼関係

─ 卸先に商品を置き続けてもらうために、どのような工夫をされているのでしょうか。

売れる商品の動きは常に変わりますから、店舗の担当者さんに「最近はどうですか?」と頻繁に聞き、数量のバランスを整えています。1回で送る量には運賃との兼ね合いもあり限度があります。その枠の中で商品の比率を変え、お店で廃棄ロスが出ないように調整しています。お店ごとに売れる商品や客層が異なりますから、この調整はすべての卸先ごとに行っています。

─ それをすべてお一人で管理されているのですね。

そうです。現在の卸先は鹿児島と宮崎が中心ですが、頻繁に連絡を取り合い、月に1回は宮崎へ行って直接話を伺っています。その際「今のペースでいいよ」と言われれば維持しますし、要望があれば変えます。お店の担当者と常にコミュニケーションを取っていることで気さくに話してくださるので、一人ではありますがうまくやっていけているかなと思います。

「仕入れ」で活かすBig Advance。成長を支える出会い

─ Big Advanceはどのように活用されていますか。

鹿児島のものだけでなく、全国のこだわりを持った生産者さんの商品も扱いたいので、Big Advanceで良いものがあれば商談をさせていただき、それをスーパーに案内しています。長く続いているところで言うと、沖縄の企業で、チーズケーキを扱っています。冷凍で送って解凍して店頭で販売するフローズン・チルドの商材ですが、最初から評判が良くずっと続いています。京都の飴や兵庫のにんにくなども扱っていただきましたが、時期や消費者の関心の移り変わりもあり、継続取引にはなりませんでした。スーパーの限られた棚を確保し続けるのは難しいですね。

─ 地域によって受け入れられやすい商品は違うのでしょうか。

違いますね。最近も大分の椎茸の生産者さんとお話しして、佃煮や出汁などの商品のサンプルと価格をいただき、案内してみました。ただ、原価やロットの面でなかなか難しくて。それに鹿児島や宮崎はカツオが獲れるので鰹節が身近ですし、宮崎にも椎茸の産地があります。出汁の商品がたくさんある中で、「わざわざ大分のものを」とはなかなかなりません。良い商品でも、その土地の食文化に合うかどうかが大きいんです。

人とのつながりの力で、変化の時代を乗り越えていく

─ これからの事業展開について教えてください。

取り扱う商品へのこだわり自体は変わりませんが、攻めていく販路は広げていかなければならないと考えています。これまでメインにしてきた地域密着型スーパーが減少していっているからです。大手スーパーになると、本部主導の仕入れになり、私たちのような小さな卸が新しく入り込む余地はほとんどありません。営業をかけようにも、相手となるスーパー自体がなくなってきているのが現状です。

生鮮品も仕入れているのですが、野菜やお米、果物などを、スーパーではなくグループホームなどの小さな施設へ直接卸す取り組みを進めたいと考えています。小さな施設は食材を安く買うのが難しいため、適正な卸値で小ロットから提供できれば双方にメリットがあります。今後2、3年のスパンで取り組んでいくつもりです。また、私自身が動けなくなった時のことも考え、WEBでも少しずつやっていこうと考えています。人口減少が進む中で同じやり方に固執していても先細りしてしまいますから、まだあまり手がつけられていない領域に挑戦していきたいですね。

─ これまでと今後、大切にしていきたいことについて教えてください。

決まったルーティンとして、「午前中は在宅で事務作業、午後は必ず外に出る」ということを徹底しています。午後になったら、たとえ具体的な用事がなくても必ず外へ出て、取引先のお店に顔を出すようにしているんです。顔を出すと「また来たの」と言われることもありますが、そこから会話が生まれて次の話がしやすくなり、「こんな商品ない?」と声がかかるようになります。「地元ではこんな食べ方をする」といった話を聞いたら、今度は卸先に伝えてみたり。

昔ながらのやり方ですが、小さなところが生き残るにはこういったことを大切にしなければならないと思っています。情報を流すだけならAIでもできますが、それでは商売にはなりません。一人でやっている会社ではありますが、知らないことがあれば年齢に関係なく質問しますし、相談に乗ってくれたり教えてくれたりする人が何人かいて、本当に周囲の人にも恵まれていると思います。これからも人とのつながりを大切にしながらやっていきたいです。

<会社情報>

有限会社永仮商事
所在地 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘7-19-5
設立 1988年7月
URL

https://www.big-advance.site/c/189/1248

※情報と肩書は取材当時のもの
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