2026年10月29日

確かな旨さと飽きないラインナップ
らじょうもんが届ける純米酒の魅力

山形県山形市に拠点を構える純米酒専門店「らじょうもん」。日本酒業界が新しい“香り系”酵母の開発競争にしのぎを削るなか、1930年に発見された歴史ある「きょうかい6号酵母」に着目し、日々の食事との相性を重視した確かな旨味と奥行きを追求しています。小まめにラインナップを入れ替えるショーケースや地域の未活用果実を活かしたリキュール開発、Big Advanceを活用した酒に合う無添加食品の発掘など、その歩みは常に飲み手の日常に寄り添っています。アジアや欧州への輸出も進め、日本酒の「ネクストステージ」を切り拓く同社の挑戦と展望について、代表取締役の熊谷太郎氏と専務取締役の熊谷小百合氏にお話を伺いました。

株式会社らじょうもん 代表取締役 熊谷 太郎 様/専務取締役 熊谷 小百合 様

「本当にうまい酒」を広めるため、純米酒専門店への挑戦

─ まず、御社の成り立ちと事業概要について教えてください。

熊谷太郎氏 当社は2008年に「正酒屋六根浄」という屋号で創業しました。当時市場に出回っていた日本酒に対して自分が本当に飲みたいと思えるお酒が少ないという感覚を抱いていたんです。本当にうまい酒を世の中に広めて、「日本酒業界の基準、いわばグリニッジ天文台みたいな存在になってやる」という大風呂敷を広げて山形の片田舎で立ち上げました。当初は酒造りをしており、冬は蔵人、春から秋にかけて酒を売るというスタイルでした。

純米酒の専門店として、様々な蔵元さんと連携しながら新しい価値を持った酒をリリースし始めたものの、店を営むなかで痛感したのは、日本酒を飲む層、純米酒を愛飲する層というのは限られているということです。そこで店舗を改装し、酒粕や麹を使ったパンやお菓子の製造・販売もスタートさせました。お酒を飲めない方にも発酵食品や酒の魅力を知っていただくきっかけを作りたかったのです。2017年に現在の場所へ移転し、店名を「La Jomon(らじょうもん)」と改めました。パン、お菓子の販売は店舗を移転するまで続けました。「正酒屋六根浄」時代に経験した、お酒1本、クッキー1袋を買っていただけることのありがたさは今でも忘れることはありません。

現在は小売販売の他、プライベートブランド酒の国内卸、それから輸出業にも注力しています。香港や中国、タイといったアジア圏に加え、最近ではオランダへの輸出も着実に伸びており、酒類や日本の食品を海外へ届けるノウハウを順調に蓄積してきています。

─ 日本酒業界に対する疑問というのは、具体的にどのようなものだったのでしょうか。

太郎氏 私が酒造りをしていた時代は、香りを追い求めるか、伝統的な燗酒(かんざけ)かという、二極化が進んでいました。今もそうですが、当時から酵母の開発競争が盛んで、技術的に新しい酵母を使った酒を次々に生み出していました。しかし、香りを前面に出すと料理との相性があまり良くないと私は感じていました。食べ物と合わせておいしいお酒を提示していかなければ、消費者に飽きられてしまう。2008年頃からずっと抱いている危機感です。日本酒の消費量が伸び悩んでいるのも、そうしたことにも一因があると考えています。だからこそ、自分が一隅を照らすことができたらと思っています。初心者の方にも、飲み慣れた方にも納得いただける純米酒を出していきたいです。

派手さより奥行きを。「6号酵母」と山形の恵みで拓く食中酒

─ そうした哲学の中で、特に「6号酵母」という酵母に特化されていると伺いましたが?

太郎氏 日本酒の味の骨格を決める要素の中で、私たちが核として据えているのが「きょうかい6号酵母」です。1930年(昭和5年)に秋田県の新政酒造さんで見つかった歴史ある酵母です。新政酒造さんが「6号酵母のみを使用する」と方針転換して銘柄「No.6」などで脚光を浴びるまで、業界では存続が危ぶまれるほど扱われない弱小酵母でした。新しい酵母を尊ぶ風潮は根強く、現在でも6号酵母を使うことに抵抗感を覚える蔵元は少なくないように感じます。

しかし、香りが穏やかであっても、酸味やふくらみといった奥行きのある味で飲ませるお酒のほうが、圧倒的に食事と調和しやすく、そういう意味で、6号酵母は素晴らしいんです。酒といえば日本酒だった頃の味、その原点に立ち返らせてくれます。そこから先は各蔵が蔵付き酵母などで個性を出せばいい。「まずは一度6号酵母でやってみたらどうですか」と思い、10年前には「6号酵母サミット」という蔵元さんを招いてのイベントにも取り組み始めました。

新政酒造さんは秋田の米で醸していますが、私たちは山形の米を用い、山形ならではの6号酵母の表現を追求しています。それが日本酒の愛好家にとっても話題になり、新しい魅力として受け入れられていると感じています。

─ 地域の果実を使ったリキュールなども話題を集めていますね。

太郎氏 さくらんぼのお酒もベースは6号酵母のお酒で、大変好評で完売しました。山形県産の「紅さやか」という鮮やかな色が出るさくらんぼを使用しています。紅さやかは主に受粉木として栽培されていて、市場に出回らずに終わることも多いと聞きました。そこで生産者さんを紹介していただき、地域の未活用資源をお酒と絡めて価値ある商品にしようと開発したのが始まりです。

土台となる日本酒そのものが抜群においしいからこそ、リキュールもおいしく仕上がるんですよ。初めて作った際は少し甘みが強かったため、今年は甘みを抑えてより味の完成度を高めました。常に改善を加えながらいろいろな酒を作っています。

いつ来てもわくわくするショーケースを目指す。飲み手の毎日に寄り添う酒を届ける

─ 販売方法やお客様への発信など、工夫されている点はありますか?

太郎氏 私自身、酒が好きでこの業界に入ったからこそ、何よりも飲み手の心理に寄り添いたいと考えています。自分が心から好きなお酒だけをショーケースに小まめに入れ替えて並べています。お客様にはその時々の良い酒を楽しんで選んでいただきたい。ショーケースを、日本酒業界のスター選手が並ぶ「一軍」の場だと考えているんです。2020年のコロナ禍では、外で飲まなくなり宅飲みに移行しましたが、その時も当店はあまり売り上げを落としませんでした。お客様が宅飲み用に毎週のように違うお酒を購入して行かれて、それが今ではライフスタイルとして定着している気がします。

そして、週に1度、1本の映画を観に行くような感覚で当店に足を運んでいただきたいですね。1本2000円前後の純米酒を購入すれば、家で1週間じっくりと味わったり、酒のストーリーや会話を楽しんだりできます。映画1回分と比べても割が良いのではと思います。最近は若い方を中心に、ホームパーティを開くようなスタイルも増えており、そうした豊かな時間に寄り添える存在でありたいと思っています。

また、SNS が登場してから、消費者側のテンポが早くなったとも感じています。SNSで飲んだ酒をアップするなど、情報共有してもらえる影響が大きいです。楽しく飲んで共有してまた次の酒、と移り変わっていくので、そういった今の消費スタイルにも合わせて飽きられないよう、味と話題性を両立させたものを出すようにしています。

現在はX(旧Twitter)を中心に、インスタグラムやFacebookを使い分けています。特にXは若い世代が見てくれて反応が最も早く、頻度高く更新しています。炎上リスクの緊張感もありますが、その分真剣に向き合える面白さがありますね。

無添加食品をBig Advanceで発掘。酒の場を豊かにする感動の味

─ 店舗には各地のこだわりの食品も並んでいますが、仕入れの判断基準は何でしょうか。

太郎氏 第一条件は、「添加物が極力入っていないこと」です。そして実際に食べて感動のあるものを選定しています。添加物が入っていないというだけで、あまりおいしくないものも世の中にはたくさんあります。しかし、中途半端なものは仕入れても長続きしないので、感動するおいしさのあるものにこだわっています。

熊谷小百合氏 添加物が入っているものは一口目に「うまい」という強いインパクトがありますが、食べていくうちに飽きてしまうんです。一口目の派手さはなくても、添加物を使わない良質な食品は、6号酵母の純米酒とも飽きずに楽しめる相性の良さがあります。

─ 全国の食品を探すにあたり、Big Advanceを活用いただいていますね。

小百合氏 はい、Big Advanceを通じて全国の生産者様とつながりを持たせていただいています。ただ、マッチングの進め方には私たちなりのこだわりがあります。サイト上で興味のある商品を見つけても、いきなり相手企業様にオファーを出すことはせず、まずは一般客として、その企業様のECサイトなどから購入して取り寄せるようにしています。オファーを出せば、先方は親切に無料でサンプルを送ってくださることが多いのですが、試食してみて私たちの求める基準に合わなかった場合、お断りするのが心苦しくて。ですから一顧客として試してみて、条件に合った場合にお声がけするようにしています。

また、大手スーパーでは扱っていないような、小規模な事業者様が小ロットで丁寧に作られている隠れた逸品を探すことも意識しています。わざわざ足を運んでくださるお客様に、ここでしか買えない商品をお届けしたいですからね。

─ これまで具体的にどのような企業様と商談成立されましたか?

太郎氏 例えば、兵庫県の企業さんです。こちらの「蟹みそ」は長い間ずっと取り扱いを続けている定番商品なのですが、完全に無添加で飛び抜けておいしかったんですよね。この蟹みそを使って、店頭では新しい食べ方の提案もしています。三陸の「むきホヤ」に蟹みそを塗って食べると、めちゃくちゃおいしいんです。このホヤとカニ味噌に6号酵母の純米酒を合わせるペアリングは、ぜひ多くの方に試していただきたいですね。

小百合氏 他にも、岡山の倉敷花桜ハムさんの無添加ソーセージや上質なベーコン、宮崎の企業さんのドライフルーツのような「黒にんにく」など、素晴らしい出会いがたくさんありました。

太郎氏 新しい調味料や食品があると、お酒と合わせた新しい食の提案もどんどん広がっていきます。隠れた良いものと出会える場として、Big Advanceにはとても助けられています。良い商品をお持ちの企業様からぜひオファーをいただけると本当に嬉しいですね。

無添加食品や山形県産100%ジュース、調味料などが並ぶ

人生を変えた一杯との出会いを次世代へ。世界に広げる日本酒の魅力

─ 最後に、これからの事業計画や展望についてお聞かせください。

太郎氏 私が酒業界に入ったきっかけそのものが、大学生のときに出会った宮城県の銘酒「真鶴(まなつる)」の山廃純米でした。初めて飲んだ瞬間、「日本酒とはこんなにもうまいものなのか」と衝撃を受けました。日本酒を楽しむ大学生活を送りながらも、卒業後は全く別の業界へ就職しましたが、東京農業大学短期大学部の醸造学科に入り直し今に至ります。

もしあの時に真鶴の山廃純米に出会っていなければ、私が醸造を学ぶことも、こうして酒屋を開くこともきっとありませんでした。あの一杯が私の人生を大きく変えたように、私たちが届けるお酒が、誰かにとってのそういう出会いになるかもしれない。そんな感動する酒を今後も「らじょうもん」から出していきたいなと思っています。

また、この酒屋を立ち上げた当初から、私は周囲に「世界に行くんだ」と言い続けていました。山形の小さな店で酒を売っているだけなのに何を言っているんだ、と思われていたかもしれません。それでもJETRO(日本貿易振興機構)の商談会等にわけもわからずがむしゃらに参加し、跳ね返されながらも挑戦を続けてきた結果、世界とつながり、現在は輸出量も着実に増えています。海外では十四代や新政といった銘柄が高い価格で取引されていますが、私たちはそれに続く「ネクストステージの日本酒」を紹介していきたい。国内外問わず、本当にただ皆さんに日本酒の魅力を知っていただきたいんですよ。

<会社情報>

株式会社らじょうもん
所在地 山形県山形市平清水210
設立 2022年2月
URL

https://www.big-advance.site/c/166/1880

https://lajomon.stores.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの
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