2026年06月22日

父が築いた「共生」の味を守り広げる
博多製麺の二代目が奔走するBtoC

福岡の地で30年にわたり、こだわりの麺を飲食店へと届けてきた有限会社博多製麺。父の急病という予期せぬ事態をきっかけに、かつてアルバイトとして働いた会社の経営を担うことになったのが、代表・永吉世奈氏です。初めての会社運営に加え顧客の新規開拓、Big Advanceの「ちゃんと請求書」を使った事務作業のデジタル化まで、文字通り「何でも屋」として奔走する日々。その原動力は、血の繋がりを超えて自分を温かく迎え入れてくれた両親への深い感謝と、苦しい時に支えてくれた周囲の愛にありました。

伝統の味を大切にしながら、新たな商品の開発やEC展開に挑み、「博多製麺」を全国区のブランドへと育てるべく駆け回る、二代目代表の熱い想いと覚悟に迫ります。

有限会社博多製麺 代表 永吉 世奈

8割超のお客様が離れない「信頼と共生」の麺作り

― まずは、御社の事業概要についてお聞かせください。

当社は福岡市博多区を拠点に、ラーメンやちゃんぽん、つけ麺などを製造している製麺会社です。1995年の創業以来、スープの味を引き立てる安定した品質の麺を作ってきました。福岡の数多くのラーメン店でも愛用いただいています。もともとは私の父が創業した会社で、私は約1年前に父とともに代表を務めることになりました。今は現場のオペレーションから新規顧客の開拓まで、私自身が「何でも屋」として動き回っています。

― 創業から約30年、長い歴史をお持ちですね。

そうなんです。当社の麺は、お客様のスープと相性が良いという理由で多くのご契約をいただいてきました。そして驚くべきことに、現在お取引いただいているお客様の8割以上が、30年前の創業当時からずっと取引を継続してくださっているお得意様です。個人店もチェーン店もあります。私自身、後継ぎとして入ってまだ1年ほどですが、この数字には本当に驚かされましたし、父が築いてきたものの大きさを実感しています。創業当時からのお客様が今でも支えてくださっているのは、本当にありがたいことです。

― なぜ、それほどまでにお客様との関係が長く続くのでしょうか。

麺の品質と価格はもちろんですが、長期の信頼関係を何より大切にしてきた父の人柄だと思います。父は常に「お客様が困らないこと」を最優先に考えていました。利益は大切ですが、自分たちが大きな利益を得ることよりも、お客様も我々も双方が長く持続できる、いわば「食べていけるだけの利益」で頑張るという人でした。物価高騰が続く中、安さを維持するのは簡単ではありませんが、この共生目線での継続と安定こそが、多くの店舗さんに選んでいただけている理由だと自負しています。

健康と美味しさを両立する麺へのこだわり

― 博多製麺さんの作る「麺」そのものには、どのようなこだわりがあるのですか?

大きな特徴は「塩不使用」であることです。ラーメンやうどんの麺はコシを出すために塩水を使うのが一般的ですが、当社は父の方針で塩を一切使っていません。たくさん摂ると体に良くないですし、小麦本来の風味や自然な甘みを活かすためでもあります。その代わりに全卵を練り込むことでコシを出しているんです。他にも、竹炭パウダーを練り込んで     食物繊維を含む麺など、健康に配慮したバリエーションも持っています。

― その伝統を受け継ぎつつ、新しく挑戦されていることもあるそうですね。

はい。最近の健康志向やフィットネスブームに合わせて、プロテインを配合した麺や、全粒粉を使った麺の開発を進めています。ラーメンを食べる時って、特に豚骨などだとどうしても罪悪感を持つ方が多いですよね。当社の麺は塩不使用なので、比較的健康的だとは思いますが、より健康的に美味しく食べられる麺も作れたらいいなと。製粉業者さんとやり取りを重ねながら進めているところです。

不慣れな事務を効率化。「手書き」からDXへの第一歩

― 永吉代表は、以前はどのようなお仕事をされていたのですか?

博多製麺でのアルバイトを経て商社で営業をしていましたので、新規のお客様の開拓や経営面はある程度知識がありました。しかし、父が突然倒れたことで急遽会社を継ぐことになり、直面したのが慣れない事務作業です。以前は請求書や納品書など、すべてが手書きで、月末に紙で計算するのもとても大変で……今の時代にはそぐわないじゃないですか。私はエクセルがそれほど得意ではありませんし、どうにかして事務作業を簡略化したいと考えていたんです。

― そこで導入されたのが「ちゃんと請求書」だったのですね。

金融機関の方に、請求書の作成に困っていることを相談したのがきっかけでした。担当の方がこのサービスを教えてくれたんです。実際に使ってみるとシンプルで本当に使いやすかったです。請求書の備考欄には来月のお休み予定など、お客様への大事なお知らせを記載しています。

今は新規顧客の方への対応などで手が回らずストップしてしまっていますが、ホームページも作りたいです。Big Advanceのものは、自分でも手軽に写真などの変更ができ、キャンペーンも簡単に載せることが可能だと聞いて魅力的だなと思って。やはりPRにもっと力を入れるべきだと考えているので、今後着手したいです。

周囲の愛に支えられた、「博多製麺」存続への決意

― 「コネクト」は出会いをテーマにしていますが、永吉さんの支えになった方はいますか?

たくさんいます。実は私は養子なんですよ。20年前に日本に来て右も左も分からなかった私を、本当の家族のように支えてくれた近所の不動産屋さんのおばちゃんたち。いつも「話そうか?」「大丈夫?」と気にかけてくれて、今でも栄養ドリンクや食事を差し入れしてくれるような、本当の親や祖母のような存在なんです。彼女たちの優しさがなければ、私は日本で頑張り続けることはできなかったでしょう。

そして何より父と母です。彼らは「どこの人でも、人だから平等にせんといかんけん」と言って、血の繋がりを超えて本当に温かく、優しく接してくれました。アルバイトとして働いていた時も、昼の弁当を出してくれたり、服を買いに連れて行ってくれたりと、たくさんお世話になりました。

― そうした深い繋がりが、今の精力的な活動の原動力になっているのですね。

そうですね。父が倒れて会社が危機に瀕した際、たとえ借金があったとしても「長く続いたこの会社を自分の手で立て直したい」と強く思えたのは、両親への感謝の気持ちがあったからです。私が後継ぎで入ってこの会社を存続させることができるのかどうかと悩み、大変でしたが、その時は金融機関の方にも大変力になっていただきました。

博多の味を全国の食卓へ。ECとSNSで描く次なる飛躍

― 最後に、今後の展望について教えてください。

まずは、2025年末にオープンした大手ECショップで、BtoCに力を入れていきたいです。これまで飲食店への卸がメインでしたが、もっと一般の方にも博多製麺を知っていただきたいんです。楽天市場では、家庭で簡単に調理できる、スープ付きの豚骨ラーメンや醤油ラーメン、ちゃんぽん麺などを販売しています。また、スープなしの麺だけの商品もあり、平打ちのちぢれ麺や細麺ストレートなどを取りそろえています。麺にとても自信があるので、食べたら美味しいと思ってもらえると思っています。ただ、どうやって皆さんに知ってもらって食べてもらうか。それが今の課題です。なかなか取り組めていませんが、今後はホームページの制作や色々なSNSでの発信にも挑戦したいです。

1日24時間では足りない、48時間あればいいのにと感じるほど忙しい毎日ですが、父が守ってきた味をより多くの人へ届けられるように頑張りたいです。

<会社情報>

有限会社博多製麺
所在地 福岡県福岡市博多区半道橋1-9-33
設立 1995年11月
※情報と肩書は取材当時のもの
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