2026年08月27日

海老名の洋菓子店・ロリアン
店舗にとどまらず、年間80か所の百貨店催事へ

神奈川県海老名市で創業37年を迎えた「ロリアン洋菓子店」。地元で愛されるお店には、今日もケーキを求めるお客様が訪れています。今や年間80〜90か所の百貨店催事に出店し、4つのECサイトを運用。全国のスーパーや観光施設への卸事業も手がけ、着実に事業を広げています。なかでも、東日本大震災をきっかけに生まれた「保存クッキー缶」には、忘れられない出会いがありました。夫の家業に飛び込み、「絶対結果を出します」と経営に参画した専務取締役・小島有加里氏に、これまでの歩みを聞きました。

有限会社ロリアン 専務取締役 小島 有加里 様

地元で愛される洋菓子店。手作りの味を、全国へ

— 店頭販売がメインかと思いますが、事業内容を教えていただけますか?

事業内容は洋菓子の製造販売です。店舗販売のほかに、百貨店の催事出店、インターネット通販、そして卸事業の4本の柱で運営しています。今は店舗と催事で売り上げの大半を占めており、残りが通販と卸事業です。通販は楽天・Amazon・Yahoo・ギフトモールの4モールで展開しています。お店のケーキはもちろん、催事、通販のケーキも、全て手作りで作り置きができないので、その日に作ってその日に出荷しています。スタッフが頑張ってくれていますが、スケジュール管理は本当に大変です。

— 人気商品や、こだわりを教えてください。

旬のフルーツを使ったケーキやデコレーションケーキが人気です。お子さんのお誕生日のためにケーキを選びにいらっしゃる方が多いですね。ショーケースを覗いて目を輝かせているお子さんの姿を見ると、こちらまで嬉しくなります。

メロンをふんだんに使ったケーキが目を引く。桃、マスカットと、季節の移ろいとともにショーケースの顔が変わっていく。

— 小島様が経営に参画されたきっかけを教えてください。

創業者である夫の両親からお店を引き継ぎ、夫と長男がパティシエとして現場を担当し、私が経営と営業を担っています。私のアイデアと夫のパティシエとしてのこだわり、そしてコストとのバランスで、毎日喧嘩しています(笑)。原材料費の高騰など、課題は尽きませんが、これまでもさまざまなハードルを乗り越えてきましたので、あまり深く考えずやっていこうと思っています。 

三代目のパティシエは洗練されたデコレーションが得意

経営に加わって気づいた「変えるべきこと」——切り拓いた催事出店 

— 百貨店の催事での出店や通販事業は、ご両親の代からでしょうか。

いいえ、どちらも私が始めたんです。「今までやったことがない、本当に大丈夫?」と言われましたよ(笑)。それでも、両親のように店舗で販売しているだけでは停滞してしまうと思っていましたから「絶対に結果を出します」「ちょっと費用はかかるけど、やらせてください」と食い下がりました。

催事出店のきっかけは、海老名にある百貨店から「地元の洋菓子店にぜひ出店してもらいたい」とお電話をいただいたことです。15年ほど前の話ですが、担当の方が出店のコツなどをアドバイスしてくださったおかげで結果を出せました。それ以来、多くの百貨店に出店できるようになりました。

— 催事出店のコツとは何でしょう?

そうですね……厚かましいんですけど、出店場所はこちらから提案させていただいてます。先方が場所を用意してくださるんですが、「必ず売り上げを出すので、あの場所でやらせてください」ってお願いするんです。お客様の目に留まるかどうかは、出店場所で大きく変わってきます。せっかくなら良い場所で出したいですから。もちろん、言ったからには結果を出さなければならないので、プレッシャーは大きいですよ。ただ、そこで良い結果が出ると、長いお付き合いをさせていただけるようになります。正直、ちょっと「強がり」みたいなところもあるんですけど(笑)。

地図を片手に、ケーキを積んで。経験ゼロから始めた一人営業

— 営業を担当されているとのことですが、どのように始めたのでしょう?

もちろん、最初からオファーがあるわけではないので、商品を持って、1年くらいはずっと営業していました。車に商品を積んで、まだナビもない時代だったので地図を見ながら、東京や横浜など、一人でいろんな場所に行きましたよ。

担当の方に商品の説明をしても、名前も知られていない、町の小さな洋菓子店なので「じゃあまたね」と追い返されることも多々ありました。でも、そこで落ち込んでいてもしょうがないですしね。「相手にされないのが当たり前。だからいいや、また次!」と切り替えていきましたね。

— 営業のご経験はあったんですか。

ほとんどなかったです(笑)。でも、とにかく事業を拡大しないといけないと思っていたので、がむしゃらに動きました。

さすがに飛び込み営業はしませんでしたが、「これから行きますから待っててください」と電話をして、どうにかアポイントを取っていました。当時は、女性ということで少し下に見られることもありましたが、そこはあまり気にしませんでした。先方もスーツを着た男性の方には身構えるのでしょうけど、私には気楽に話をしていただけるんです。商談はまずはお話をさせていただけるところから始まりますしね。そこから「実績はこれだけあって、サポート体制はこれだけ整っているので、絶対売り上げを伸ばします」と説明していきました。

おかげさまで、地道な営業の積み重ねが実を結びました。今では、年間で80~90か所ほど、都市圏の主要百貨店をはじめ、地域密着型百貨店にも幅広く出店させていただいています。

Big Advanceで広がる、新しいつながり

— Big Advanceはどのようなきっかけで始めたんですか。 

金融機関の方から「登録しておくとさまざまな出会いや結びつきがあるので」とご紹介を受けて登録しました。使いこなしているとは言えないのですが、金融機関の担当の方が熱心で、「こういう問い合わせが来ていますよ」とサポートしてくださるので、とても助かっています。

大分のトキハ百貨店さんとはこちらから商談依頼したのをきっかけに、昨年(2025年)、催事出店させていただきました。今年もオファーをいただいているので、引き続きお付き合いできそうで嬉しいです。自分で足を運ばなくても、大分の百貨店とつながりができるというのはBig Advanceならではだと思います。Big Advanceも含めて、金融機関さんとのつながりのおかげで広がりが生まれているなと感じています。

あのお客さまに届けたくて——震災から5年かけて作ったクッキー缶

— 通販サイトを拝見すると、「保存クッキー缶」という商品がありますね。

5年保存ができるクッキー缶です。さくさくした食感とバターの香りのするクッキーで、バニラ、ココア、ミックスの3種類が入っています。開発のきっかけは東日本大震災です。

震災が起きた3月11日、東北のあるお客様に午前中着でクッキーを発送していて、それがちょうどお手元に届いていたそうです。地震が起きて、その方はクッキーを持ってお子さんたちと避難所に向かわれました。

3日ほど食料が届かず、お子さんはずっと笑うことができなかったといいます。そんな中で「そうだ、クッキーがあったね」と開けてみたら、お子さんが笑顔になったそうです。そのことを、震災から半年ほど経ってメールで教えてくださいました。

正直、震災の後は「こんな大変な時に、お菓子なんか作っていていいんだろうか」と、悶々としていたんです。でもそのメールを読んで、「よし、この美味しいクッキーを、保存できる形にして、あのお客さまに届けよう」と奮い立ちました。

— 開発にはどのような苦労がありましたか。

何といっても、開発に5年かかったことですね。まず、窒素ガスを充填する機械や専用のオーブンなど、設備投資が必要だったんです。金融機関の方が相談にのってくださって、補助金などのサポートもあり、機械を導入することができました。耐食の検査だけでも2年半かかりました。配合や味も何度もやり直して、やっとの思いで完成した商品です。

完成したら、まずあのお客様に届けようと思っていたのでお送りしたら、わざわざ会いに来てくださったんです。お土産をいっぱい持って。「あの時は本当にありがとうございました、子どもたちもすごく喜んで、思い出になったクッキーなんです」と言っていただきました。その方との出会いがなかったら、この商品は生まれていなかったと思います。出会いって、本当にすごいなと感じた瞬間でした。

今では通販のほか、観光施設や保護猫活動のイベントなど、オリジナルラベルを付けてさまざまな場面で使っていただいています。ギフトとしても人気があるんですよ。

5年保存できる缶入りクッキー。オリジナルパッケージでのご注文も可能

ショーケースの前で、目を輝かせる子どものために 

— 最後に、今後の展望をお聞かせください。

子どもの日のケーキコンテストやパティシエコンテストなど、お菓子を通じて多くの体験をしていただける場を作っています。小さなお子さんが「将来パティシエになりたい」と思うきっかけを作りたい。職人不足が業界全体の課題でもあるので、ものづくりの楽しさを伝えていきたいと思っています。

当店は、創業から地元のお客様と一緒に歩んできたお店です。今、来てくださっているお客様のお子様が大きくなって、その方がお子様のためにケーキを買いに来てくれる、そういうお店になりたいと思っています。

ショーケースを覗いて「わーっ!」と言ってくれる子どもの顔を見るのが、一番好きな瞬間です。そういう瞬間をこれからも積み重ねていけたらと思っています。

<会社情報>

有限会社ロリアン
所在地 神奈川県海老名市東柏ヶ谷2-2-40
設立 1989年7月
URL

https://www.rorian.jp/

https://www.instagram.com/roriangram/

※情報と肩書は取材当時のもの
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