静岡発・老舗食品卸のリブランディング
丸〆が挑む漬物・梅干しの新しい届け方
祖父の時代に始まった米問屋をルーツに持ち、時代の変化に合わせて漬物や梅干し、菓子などへと取り扱いを広げてきた株式会社丸〆。自社を「食のセレクトショップ」と位置づけ、商品力と提案力で取引先企業との信頼を築き上げてきました。さらに、2022年10月には、こだわりのいいものを集めた食のセレクトショップ「葵あおいちば」をオープン。「自分たちが本当に美味しいと思う、こだわりのあるいいものを届けたい」と語る営業本部長の大井文恵氏に、会社の歩みや商品のこだわり、自社通販で目指す将来像まで詳しくお話を伺いました。
株式会社丸〆 営業本部長 大井 文恵 様
米問屋から食のセレクトショップへ。信頼が広げた多彩なラインナップ
─ まず、御社の事業概要とこれまでの歩みについて教えてください。
当社は、静岡県静岡市に本社を構え、全国に向けた食品の卸売と小売を展開しています。もともとは祖父の時代に米問屋として始まりました。そこから父の代になり、「お米に合うもの」として梅干しやお漬物を取り扱うようになりました。食べることが好きだった父は、あちこち自ら足を運んで美味しいものを探していて。その頃に複数の百貨店とのご縁をいただき、地下食料品売り場に約30年間、テナントを出店していました。
その後、現在の社長である私の弟へと代が替わる中で、デパートの外商需要が減少しはじめました。そこで「デパートだけに依存せず、会社としての基盤をしっかりと作ろう」と考え、昔から行っていた卸売に力を入れることにしたのです。
─ 卸売に注力した理由は何だったのでしょうか。
転機となったのは、静岡のお茶屋さんへのご提案でした。通販事業を展開するお茶屋さんに向けて商品を企画・提案する中で、「この季節には、こんな商品があるとお茶を美味しく飲んでいただけるのではないか」というアイデアが生まれ、お菓子も取り扱うようになっていって。そうして現在の幅広い卸売商品ラインナップへと繋がっていきました。
また、こだわりのある通販事業者様から「自社向けにオリジナル商品を作ってほしい」とご依頼をいただくこともあります。例えば「無添加で国産原料を使用し、体に良いものを提供したい」とオーダーをいただいたら、当社はそれに合った商品を企画立案したり、生産者と一緒になって開発したりしています。私たちは自社を「食のセレクトショップ」のような存在だと捉えています。
─ そういったお取引先とは、どのように繋がったのですか?
百貨店に出店していた時代にお問い合わせをいただいたり、ホームページをご覧になって連絡をくださったりしたことがきっかけです。 例えば、掛川のお茶屋さんは、当社が販売していた季節商品の「桜梅」に興味を持っていただき、「梅干しから取引をさせてもらえないか」とお問い合わせをいただきました。そこを入り口として関係が深まり、今ではお漬物からお菓子や佃煮まで、非常に幅広い商品を納めさせていただくようになっています。
実は、当社はこれまでBtoBの営業活動を一切行ってきませんでした。どこかで当社の噂を聞いてくださったり、商品を見てくださったりして、興味を持ってお問い合わせをいただくケースがほとんどです。ご連絡をいただいた後は、お取引先様のカタログを拝見し、その会社が大切にしている系統やテーマ、客層のニーズに合わせて、商品をご提案できる点が当社の強みです。
お客様の声から生まれた「葵あおいちば」。“誰かにあげたい”を届ける店
─ 小売店である「葵あおいちば」は、どのような経緯でオープンしたのでしょうか。
もともとこの場所は当社の事務所や作業場でした。しかし、百貨店のテナントを終了したことなどもあり、お客様から「お漬物が買えない」といったお声を多くいただくようになったのです。それで、事務所の半分を改装して「葵あおいちば」をオープンさせました。
店頭の商品は、地元・静岡のものに限らず、全国の産地から味や品質にこだわりのある良いものを、長年お付き合いのある製造メーカー様から仕入れています。ご自宅用にとどまらず「美味しいから誰かにあげたい」と思ってもらえるような商品ラインナップをコンセプトにしていますね。
─ 特におすすめの商品や、お客様からの反響が大きいものはありますか?
人気商品の一つは「梅搾り」です。紀州完熟梅を使った4倍希釈のシロップで、ホットで飲んでも夏は炭酸を入れて飲んでも美味しいんですよ。あと「刻み奈良漬」も好評です。奈良漬けに対して苦手意識を持っている方は少なくありませんが、こちらの刻み奈良漬けは甘口で食べやすい仕上がりになっています。さらに、酒粕も一緒にそのまま食べるように作られているのが特徴です。20個くらい買っていかれるお客様もいて、「チーズの上に乗せて食べると美味しい」といった新しい食べ方を教えていただけることもあります。店舗は、お客様からいろいろな声を生でいただけることが嬉しいですね。

多彩な割り方が楽しめる夏にも冬にもおすすめの「梅搾り」

小さくカットされていて食べやすい「刻み奈良漬」
仕事への認識が変わった、ハワイでの漬物販売
─ 大井様のこれまでの人生の中で、印象深い出会いや転機となったエピソードを教えてください。
人生における大きな転機を挙げるならば、約40年前に、お漬物を売るためにハワイへ行った経験です。静岡県人会が主催で、当社以外にも飲食関連のお店4軒ほどと一緒でした。当時は、日本からお漬物を売りにやってきたということ自体が珍しく、現地のラジオ番組でも取り上げていただきました。最初は2週間だけの予定でしたが、反響もあり滞在が大きく延びたうえ、急遽マウイ島やロサンゼルスにも行くことになりました。ハワイでは、お漬物を食べる習慣がある日系二世の方々が多く暮らしていらっしゃったこともあり、本当に驚くほどよく売れました。
実は、若かった私にとって、重たい缶を抱えて持ち運ぶお漬物の販売は決して格好のいい仕事ではありませんでした。しかし、催事場に立っていると、現地のお客様が「若いのに偉いね」と温かく声をかけてくださったり、差し入れをくださったりして、重労働でしたがとても楽しかったです。ハワイでお漬物が受け入れられて、「この仕事をやっていて良かった」と思えました。その後も、トータルで10年間くらい行きましたが、多くの方々と繋がることができたあの時間は、今でも私の大切な原体験となっています。
目指すは自社通販の“選べるギフト”とオンリーワンの商品づくり
─ 最後に、今後の展望や力を入れていきたい活動について教えてください。
将来的には、大規模ではなくても、自社で直接販売を行う通販サイトを持ちたいという目標があります。当社にはお漬物や梅干し、お菓子、佃煮まで本当に多種多様な商品が揃っているので、その中から例えば「まるごと静岡セット」や「おつまみセット」など、贈る相手の好みに合わせてお客様自身がチョイスできるような、オリジナルのギフトセットを提案したいです。現在は卸売がメインであるため、どうしてもお取引先様のテーマに合わせた商品展開が中心となっていますが、自社で直接販売できる場があれば、私がお客様に届けたいと思ったテーマや組み合わせを、そのままダイレクトに提案することができるようになります。
そして、お漬物や梅干しといった渋い商品だからこそ、もらった瞬間に思わず「わっ」と声が上がるような、可愛らしいラッピングやパッケージにもこだわっていきたいと考えています。若い世代の方々は、お漬物を日常的に食べる習慣があまりないのではと思いますし、誰かへのプレゼントとして選ぼうとはなかなか思いません。だからこそ、そこに意外性を持たせたいのです。「こんなにかわいいならちょっとあげてみたいな」と思ってもらえるような、そんな商品づくりをしていきたいです。

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<会社情報>
| 株式会社丸〆 | |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県静岡市葵区葵町11-1 |
| 設立 | 1958年6月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


