地方からでも夢に挑戦できる!
地域格差をなくすモデル事務所ルトンデュトン

鹿児島で活躍するモデル事務所「ルトンデュトン合同会社(Le Ton Du Temps management)」。「東京に行かなければモデルの夢は叶わない」という常識を覆し、地方にいながらモデルとしてのキャリアを築ける環境づくりに取り組んでいます。クラウドファンディングを活用し事業を展開する同社の魅力と、今後の展望についてお話を伺いました。
ルトンデュトン合同会社(Le Ton Du Temps management) 代表 宇野 京 様
地方のモデル志望者に新たな選択肢を
ー御社の事業概要と、鹿児島でモデル事務所を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
当社はモデル事務所なので、モデルのスカウトから育成、キャスティングなど、モデルが活躍できるように支援しています。また、所属モデルを起用したイベントや企画なども手がけています。
私自身がモデルとして30年以上活動してきた経験がありますが、その中で感じたのは、地方と東京では仕事量に大きな差があるということです。地方のモデル志望者は東京のモデル事務所のレッスンに通ったり、東京に拠点を移したりしなければならない状況がありました。
特に鹿児島は飛行機でしか東京に行く手段がなく、東京の仕事を遠く感じます。いきなり東京に行ってモデル事務所を探そうとしても、すぐに入れるわけではありませんし、レッスン料だけ取られてそれに見合ったレッスンを受けられないケースもあります。そこで「鹿児島でモデルを育てて、東京でも活躍できるようにできないか」と考えました。
幸いにも、東京のモデル事務所が提携してくれることになったので、鹿児島でレッスンをして、鹿児島の現場である程度経験を積んだ後に、東京の現場にも出られる体制が整いました。現場の雰囲気や流れは大きく変わらないので、鹿児島の現場で慣れておくことで、東京の現場でも困らないようにする。そんな橋渡しの役割を担いたいと思いました。
また、鹿児島には「モデルの権利」をしっかり管理している事務所がありませんでした。権利関係の管理は、企業が安心してモデルを起用するための重要な要素です。そういった本格的なモデル事務所を鹿児島にも作りたいと思いました。
モデル業界の変化とルトンデュトンの特徴
ーモデル業界はこの30年でどのように変化してきましたか?
モデル業界の仕事は企業の景気の良さと比例する部分があります。私が10代の頃は業界全体に活気があり、仕事もたくさんありました。その後、少しずつ仕事が減ってきた状況に拍車をかけたのがSNSの出現です。カメラの加工技術が上がったことも作用して、「モデル」の定義が曖昧になってきています。
以前は、モデルが俳優やタレントの領域に進出することが多かったのですが、現在は逆に俳優やタレントがモデルの仕事を取りに来ている状況です。そのため、モデル、タレント、インフルエンサーの境界がどんどん曖昧になっています。
また、ファッションショーも減少傾向にあります。高級ブランドのファッションショーは招待制で、バイヤーや著名人向けのビジネス展開の場ですが、最近は「その場で買える」イベント型のショーが増えてきています。これは私たちが言う「ファッションショー」ではなく「イベント」になるのですが、こういったイベントはモデルにギャラが出ない、出演者は出演料を自ら払う、見ている人はその場で買う、といった形式で収益をあげています。本来のクリエイティブな「ファッションショーを作れる人」を育成する必要もあると思いました。
ー御社ではどのようなモデルを育成していますか?
本来、高級ファッションショーには175cm以上などの身長条件がありますが、そのルールも最近は少しずつ崩れてきています。身長基準に満たなくても魅力や個性がある人は起用されるようになり、親近感がある人が出ることでマーケットも広がっています。
当社では身長に関わらず、しっかりとしたモデルスキルを身につけるレッスンを行っています。身長160cm台の人でショーウォークができるのは日本では当社だけかもしれません。身長が足りなくても正しく歩けるモデルを育てられるのが、他と違うところですね。
クラウドファンディングが想いを伝える機会に
ーBig Advanceのクラウドファンディング(※)を選ばれた理由を教えてください。
3つの理由があります。まず、インキュベーターマネージャーの紹介があったので「良いな」と思ったこと。次に価格面です。助成金を利用しながら進めたのですが、予想より安価に実施できる点が魅力でした。また、以前に別のプラットフォームでクラウドファンディングを検討した際にはうまく進まなかったのですが、Big Advanceでは柔軟に対応いただけたのが良かったです。初めてのクラウドファンディングで分からないことも多く質問が多かったと思いますが、丁寧かつ迅速に対応していただいた点も決め手になりました。
※一部金融機関ではCAMPFIRE社と連携してクラウドファンディング機能を提供しています
ークラウドファンディングを実施して感じた効果はありますか?
実施期間が短かったので、準備期間や告知の時間をもう少し取るべきだったなという反省点はありますが、良かった点としては、クラウドファンディングを実施することで、会社の理念や想いを伝える機会が増えたことです。実際にクラウドファンディングのページを見ていただくことで、分かりやすく伝えることができました。また、本当に信じてくださる方がいることを実感できてとても嬉しく思いました。
どんな環境でも互いを認め合う 多様性を大切にした事務所づくり
ー固定観念にとらわれない多様なモデルを育成されていますが、そのきっかけや考えはどこから来ていますか?
私自身の育ってきた環境が影響していると思います。多民族国家に住んでいたことがあり、校則の少ない自由な学校に通っていたんですが、日本の高校に入学して窮屈さを感じました。その後、オーストラリアの高校に留学したんですが、日本では「はみ出し気味」に見られていた私がオーストラリアでは「すごく真面目でちゃんとしている」と評価されたんですね。同じ人間でも環境によって評価が変わることを実感しましたし、どの環境でも互いを認め合う関係が大切だと思いました。
モデル事務所には様々な個性を持った人が集まってきます。普通の社会では機会を得にくい人たちでも、この業界では生き生きと活躍できる可能性があります。
身長は高くなくても肌が美しい人、一般的な「可愛い」「美しい」の基準からは外れていても写真映えする人など、それぞれに魅力があります。自分で「私はこうじゃないからダメだ」と決めつけなくても、クライアントのニーズに合えば仕事があるんですよね。みんな素敵なところがあるから、そこを磨けばいいと思っています。
また、私は英語を話すのでどの国の方が来ても大丈夫ですし、心理学の臨床心理も勉強していたので発達障害や多様な特性を持つ方への対応も理解しています。それぞれに合った対応ができるので、どんな人が集まっても私は大丈夫だ、と思えるのも大事ですね。
一人だけが特別なのではなく、みんなが特性を持って集まることで多様性が成り立っています。お互いのプライバシーに踏み込まず、良い距離感で仲が良く、バランスの取れた関係を築いています。
鹿児島から世界へ
ー今後の事業展開について教えてください。
今年は40歳以上のモデル部門を立ち上げましたが、半年以内にキッズ部門も本格的に始動させる予定です。また、東京のプロダクションと提携し、モデルだけでなく俳優の仕事もできるようになりました。所属している人それぞれが持つ可能性を広げ、様々な場で活躍できるようにしていきたいです。
また、事務所単独ではなく、デザイナー、ヘアメイク、カメラマンなど様々な専門家と協力して素敵な作品を生み出していきたいと考えています。そうすることで「鹿児島ってすごい」と思ってもらえるような刺激を提供し、地元の方々にもワクワクしてもらえるような存在になりたいです。
<会社情報>
ルトンデュトン合同会社(Le Ton Du Temps management) | |
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所在地 | 鹿児島県鹿児島市易居町1−2 みなと大通り別館 6階13号室 |
設立 | 2024年3月 |
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※情報と肩書は取材当時のもの ※一部画像はルトンデュトン様提供 |