「獲れる魚」が変わっても、三陸で加工を続ける
石山水産の高鮮度冷凍と新たな製品づくり
岩手県の山田町と大槌町に工場を構える石山水産株式会社。イカやサケの一次加工を中心に、大槌工場への液体急速凍結機の導入を機に、一般の生活者向けの製品づくりにも踏み出しました。近年、魚の水揚げ状況が変わるなか、代表取締役の石山勝貴氏が大切にしてきたのは変化に対応し、「早めに、小さく始める」こと。これまでの歩みと販路開拓、製品開発、Big Advanceの活用について伺いました。
石山水産株式会社 代表取締役 石山 勝貴 様
三陸の2つの工場で、主にイカとサケを加工
— まずは御社の事業概要を教えてください。
当社は、山田町と大槌町の2カ所に工場を構える水産加工会社です。もともとはイカのつぼ抜きとサケのフィレ(半身)を中心とした一次加工の会社ですが、最近は生食向けも含めた一般のお客様向けの製品もつくるようになりました。昨今は秋サケの水揚げが少なくなってきたため、岩手県沿岸で盛んになってきたサーモン類の養殖ものも取り扱っています。またイカも不漁が続いていますから、国産に加えて、アルゼンチン産やアメリカ産の輸入イカも使いながら、製品の加工をしています。
— 現在、よく売れているのはどのような商品ですか。
イカの加工品がメインですが、みりん漬けや味噌漬けといった味付けしたものが少しずつ増えています。他にはサバの干物も扱っています。ただ、事業の割合としては、次の工場さんが使う原料をつくる一次加工が、今も7割ほどを占めています。
震災を機に、「加工度を上げる」道へ
— 大槌工場の新設と液体急速凍結機の導入には、どんな狙いがあったのでしょうか。
一次加工は原料を大量に使って製品をたくさんつくるという薄利多売の商売です。水揚げ量は年々減る傾向にあり、いずれ大量の原料が入手しづらくなることは、早くから見えていました。そこで、ひと手間加えた付加価値の高い製品が必要だと考え、大槌工場を企画したんです。加工製品をつくるというだけなら、必ずしも海の近くである必要はありません。それでも三陸の沿岸に工場を構える意味は、「浜に近く鮮度を生かせることだろう」と。そこで生食向けの製品もつくれる工場にして、鮮度を生かして凍結できる液体急速凍結機を導入しました。
— 周辺の会社でも、凍結機の導入は進んでいたのでしょうか。
震災前は、どの会社も昔からの設備を修理しながら使っていました。震災後、高鮮度の冷凍を選んだ会社は何軒かありましたが、液体急速凍結機まで入れたところは、ほぼなかったと思います。決め手は、メーカーさんがデモ機を長期間貸してくださり、いろいろと試作してみたところ、非常に良い製品ができるという手応えがあったことです。冷凍設備のメーカーさんから、熱交換の効率が高く、設備の効果も期待できると聞いたことも、後押しになりました。
— 導入してみて、いかがでしたか。
製品としては、かなりいいものができています。ただ、もともと一次加工のメーカーなので、一般のお客様への販売力はまだ弱く、そこは努力が必要です。一方で、看板商品の「漬け丼」を展示会に持っていくと話のきっかけになりますし、試食していただくと評価もかなり高いので、凍結機の性能は生かせていると思います。

三陸海岸の風景
看板商品の「漬け丼」と、広がる販路
— 製品づくりに伴い、販路はどのように広げていらっしゃいますか。
一次加工品には既存のルートがありますので、新しい商品も合わせてご紹介しています。この「漬け丼」は三陸鉄道さんとのコラボレーションで始まった商品で、三陸鉄道さんや地元の道の駅などにも置いていただいています。最近は、百貨店のギフトカタログへの掲載が増えてきており、ふるさと納税にも出していますね。山田町で養殖しているブランドサーモン「オランダ島サーモン」の刺身盛りは、凍結機の性能を非常に生かせる商品です。
— 5月には、二子玉川(東京都世田谷区)でポップアップストアも開かれたとか。
はい。二子玉川の駅ビルで初めて出店しました。期間は1週間ほどでしたが、お客様の反応が良く、最終日にはリピートで来てくださる方もいました。当社の商品を評価いただけたという実感を得られましたね。この話は、金融機関からご紹介いただいた方がつなげてくださったんです。こうしたつながりを大切にしていきながら、今回のノウハウを他の販路にも生かしたいと考えています。
変化の時代は、まず小さく始める
— 長く続く家業だと伺いましたが、石山さんは何代目にあたるのでしょうか。
株式会社になってからだと三代目で、その前の商売から数えると、少なくとも六代目ぐらいになるようです。先代は私の父、先々代は叔父でした。なんとなく自分が継ぐのかなという感じはありましたが、最初から積極的にやろうと思っていたわけではないんです。継いでみると、先代の頃とは水産業を取り巻く環境が大きく違うので、変化に合わせなければならない場面は昔よりずっと多いのではないかと思います。
— 変化が続くなかで、判断をする機会も多いのでは。ご自身のなかで軸にしていることは何でしょうか。
震災が契機にはなりましたが、水揚げが変わり、周りの変化に合わせて「変わらざるを得ない」という面が強いでしょうか。当社は、大槌工場で生食向けの加工に早くから踏み出していました。大槌町でサーモン養殖が始まった際には、処理を請け負う業者が求められていましたが、手を挙げる会社はわずかだったんです。当社ならサケ用の加工機械を転用でき、取扱量も確保できるため、引き受けることにしました。
こうした判断をするときの軸は2つあります。ひとつは、自社単独ではやらないこと。漬け丼も三陸鉄道さんとのコラボでしたが、ある程度の販売先が見込める状態にしておかないと、売れる目処がないまま売っていくのはきついですから。
もうひとつは、「早めに小さく始める」こと。まず少しやってみて、翌年にその倍へ増やそう、その翌年はさらに増やそうという形でできるといいのではと思っています。始めるのが早いほど後の負担は減りますし、もしうまくいかなくても、軌道修正について早めに判断することができます。これまで続けてきた技術やうちを頼ってくださるお客様を大切にしつつ、新しいことを考えるのはある意味楽しい部分でもありますね。
ホームページは、商談の「看板」として
— Big Advanceを導入されたきっかけを教えてください。
金融機関からのご紹介です。それまでの当社の情報は、震災後に補助金を受けてグループでつくった合同の紹介ページに、会社概要が少し載っている程度でした。いずれは自社のホームページをと思っていましたが、専門の業者さんに頼むとかなりの金額になりますので、Big Advanceのご紹介を受けて、これなら取り入れやすいと思いました。
— ホームページの必要性はずっと感じていましたか?
そうですね。新しい商談先や商談会でお会いした方のことは、必ず調べますよね。私自身もそうです。相手は何をつくっているのか、どんな加工ができるのかを知りたいですから、ホームページの有無で印象はまったく違ってきます。相手の方もきっと同じように調べるはずなので、そうした情報を少しでもお届けできればと。商談会などでの「看板」のような役割を期待していました。
— 実際の活用状況はいかがですか。
ページは私自身がつくりましたが、とても簡単にできました。製品紹介には、商談相手が知りたいであろう「どんな製品があって、どんな加工ができるのか」を載せています。ホームページ経由のお問い合わせも、たまにいただきますね。また、別に運営しているECサイトにも、ホームページから移動できるようにしています。ECサイトの概要づくりやSNSの更新は、先ほどお話した、ポップアップストアを紹介してくれた方に手がけていただきました。

Big Advanceでのホームページづくりについて語る石山氏
一緒に成長できる人との出会い
— 石山さんにとって、印象に残っている出会いはありますか。
私が常務になった頃、「これから自分たちが何かやらなければ」というタイミングで出会った、近い年代で近い立場の得意先の方です。やるべきことが見えてきて、伸びていける時期に出会った相手とは、お互いに影響し合えます。年が近い分話しやすく、仕事も広がっていきました。その方とは10年以上のお付き合いで、のちに会社を辞められ、今は海洋系の大学で教授をされています。転機というより、自分が成長するタイミングで、一緒に成長できる人に出会えたことが良かったと思います。
人手不足に向き合い、変化に応じて進む
— ところで、三陸地域の人材面はいかがでしょうか。
そうですね、やはり大変ですね。震災以前から過疎化が進み、若い人は減り続けていましたが、震災後は働ける人がさらに減り、特に復興期は建設関係の需要が高く、人材確保は厳しかったです。求職者が選ぶランキングでは、水産関係は下の方になってしまうでしょう。ただ、震災後に施設はかなり新しくなり、働く環境も随分とよくなっています。昔の水産加工場のイメージにとらわれず、もう一度目を向けていただければと思います。それに水産関係は手作業の部分も多いので、技術や経験を積んだ方は本当に強いですし、長く働いていただけます。地域の将来を考えると、若い世代が戻ってきてくれたらうれしいですね。
— では最後に、今後の展望を教えてください。
当社は会社の歴史が長く、その根幹の部分は引き継ぎながら、新しいことにもその都度挑戦していきたいです。水揚げ状況が不安定ななか、ひとつのことに固執せず、環境の変化に合わせた仕事をしっかりやっていければと。最近、実は三陸で真鯛の水揚げが増えていまして、それを使った製品もつくっています。これからも変化に対応して、いろいろなものを提供していきたいですね。
<会社情報>
| 石山水産株式会社 | |
|---|---|
| 所在地 | 岩手県下閉伊郡山田町境田町3-19 |
| 設立 | 1978年3月14日 |
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| ※情報と肩書きは取材当時のもの | |


