人と向き合い、木と向き合う早川工務店
時代は変わっても変わらず守りたいものがある
岐阜県多治見市にある早川工務店は、曽祖父の代より木の家づくりを続けてきた地域密着の工務店。4代目の早川氏は、幼少時代から木の匂いと現場の音に囲まれて育ってきました。代々受け継がれてきた木への向き合い方を大切に、時代に合った経営戦略を融合させながら、住まいづくりに取り組むことで、この先の50年を見据えています。また、Big Advanceを通じた設計士や異業種との出会いをきっかけに、新たな協働にも前向きに挑戦。地域に根ざしながら、外に開かれた視点を持ち、「これでいい」ではなく「これがいい」と感じられる住まいを目指す早川氏に話を伺いました。
有限会社早川工務店 代表取締役 早川 威佐夫様
暮らしの中で自然と受け継がれてきた「技術」と「心」
─まず、御社の事業概要について教えてください。
早川工務店が法人としてスタートしたのは1975年ですが、家業としての歴史を辿ると、曽祖父の代まで遡ります。曽祖父は宮大工として、寺社建築にも携わっていました。昔の大工さんは木を上手に使う技術に非常に長けており、その技を活かした日本の木造住宅の美しさや木を組み合わせることで得られる強さは、現在の家づくりにも息づいています。当社では木の家にこだわって、新築住宅からリフォーム、古民家改修まで、社員大工が幅広く対応。手間を惜しまない丁寧な仕事を積み重ねてきました。


─4代目として育ってきた、ご自身の原点を教えてください。
正直に言うと、私は最初から「経営者になろう」と思ってこの仕事に入ったわけではありません。大工の家に生まれ、気がつけば、木の匂いと現場の音に囲まれて育っていました。家のすぐ下には作業場があったので、大工さんたちが木を刻む姿は、私にとって特別なものではなく、ごく当たり前の日常という感じでした。
長男として生まれましたが、誰かに「継げ」と言われてきたわけではありません。ただ、振り返ってみると、自然と現場に近づく道を歩いていたような気がします。友だちが遊びに行くのと同じ感覚で、工場や現場を覗いていました。木屑の匂い、金槌の音、職人さん同士のやり取り。それらはいつの間にか私の体に染みついていたのです。
─一度、家業の外に出られた理由は?
大学では建築を学び、構造や断熱、設計の理論を学ぶ中で、この仕事の奥深さを知りました。卒業後、同級生は設計や現場管理、住宅の営業などへ就職する人が多かったですね。私も卒業後すぐに家業に入る決断はせずに、大手ハウスメーカーに就職。約5年間、営業や現場管理を経験し、数字やスピードを求められる世界に身を置きました。厳しい環境ではありましたが、その経験があったからこそ、「早川工務店の良さ」や「規模が小さいからこそできる仕事」が、よりはっきりと見えるようになったと思います。
「誰がつくるか」が見える家を、社員大工とともに
─早川工務店ならではの強みを教えてください。
早川工務店には、社員として働く大工がいます。昔から変わらないこの体制は、私たちの大きな特徴です。気心の知れた仲間と一緒に現場を進められることは、何にも代えがたい強みだと思っています。
ただ、この形を続けていくのは簡単なことではありません。職人の高齢化、若手不足など、実は業界全体が同じ課題を抱えているのです。それでも当社がこだわるのは、「誰がつくっているか分かる家」。顔が見える関係性の中で、責任を持って仕事をする。その姿勢だけは、これからも守り続けたいですね。
外に開くことで生まれた、新しい出会いと仕事
─Big Advanceを使い始めた理由を教えてください。
Big Advanceを使い始めたのは、「これまでとは違う出会いがほしい」と思ったからです。実際に利用してみると、設計事務所や不動産会社、家具・インテリアに関わる方など、多様なつながりが生まれました。すぐに仕事につながらなくても、「知り合うこと、知ってもらうこと」自体に価値がある。そう感じられるようになったのは、大きな変化だと思います。
振り返ると、ここまで歩んでこられたのは、人との出会いのおかげです。職人さん、設計士さん、お客様。その一つひとつの縁が、今の自分をつくっています。派手なことはできませんが、現場に立ち、顔を合わせ、話をする。その積み重ねを大切にしながら、これからもこの町で、木の家をつくり続けていきたいですね。

東濃信用金庫 大塚氏 右:早川 威佐夫氏
設計士の想いを、現場で形にするという役割
─設計士との仕事で、印象に残っている出会いはありますか。
当社で家を建ててくれたオーナー様が新規のお客様を紹介してくださることもありますが、個人の設計士や設計事務所の仕事を、施工のプロ集団として当社が請け負うこともあります。だからこそ、設計士の方々との出会いは、私にとっても会社にとっても非常に大きな意味を持つのです。
そのきっかけを作ってくれたのが、Big Advanceです。このプラットフォームを通じて出会った設計士の方とは、実際にリフォームの仕事をご一緒しました。最初は正直、緊張もありましたが、やり取りを重ねるうちに、「この方の考えを、きちんと形にしたい」と思うようになりました。
設計士の方々は、お客様の想いを最初に受け取る存在です。その想いを、現場で現実の形にしていくのが私たちの役割。難しいオーダーに頭を悩ませることもありますが、その分、完成したときの喜びは大きく、記憶に深く残ります。
手間を惜しまない仕事が、建物を美しくする
─特に印象に残っている仕事を教えてください。
これまで携わってきた中で、特に印象に残っているのが、古民家を改修した田園レストランです。きっかけは、1通のメールから。設計事務所の方が、腕のいい大工をもつ施工会社を探していたところ、当社のホームページが目に留まったそうです。設計士の方も「自分の描くビジョンを実現したい」「お客様の思いをきちんと反映したい」という強い気持ちがあるので、大工の手を選ぶといいますか。細かなオーダーを実現できる技術力を評価していただいたのだと思います。
こうした経緯で仕事を受け、古い丸太小屋はお洒落な田園レストランへと生まれ変わりました。その横には、オーナーご夫婦の新築住宅を施工。どちらも細部にまでこだわった設計力と技術力が、建物の美しさを引き立たせています。
この仕事は決して簡単なものではありませんでした。それでも完成した建物を前にしたとき、「やってよかったな」と心から思えたのです。効率だけを考えれば、もっと楽な道はあります。ただ、手間をかけた分だけ、建物はきちんと応えてくれる。その事実が、今の自分の仕事観を支えています。


民家を改修した田園レストランとオーナー様の新築住宅
自邸を建てて気づいた、「これでいい」「これがいい」
─ご自身の住まいづくりは、仕事にどんな影響を与えましたか。
私自身の価値観を大きく変えてくれたのは、今から12年前に建てたマイホームです。それまでは自社の設計で家を建てるのが通例でしたが、外部の設計士さんの力を借りて、より早川工務店らしい建物を表現したいという思いがあって、神奈川県の設計士の建物を見に行きました。その家が感動するほど素晴らしくて、「この方にぜひ自分の家を設計してもらいたい」と思ったのがきっかけです。
完成したのは、奇をてらわず、シンプルに、木組みの美しさが見える家。決して派手さはありませんが、とても静かで、落ち着きがあります。毎日暮らす中で、「これでいい」「これがいい」と思える瞬間が12年経った今でもあります。この経験は、お客様に住まいを提案するときの言葉に、確かな実感を与えてくれています。
経営者になっても、現場に立ち続ける理由
─経営者として、今大切にしていることは何ですか。
代表という立場になり、現場に出る時間は、昔より確実に減りました。書類仕事や打ち合わせ、経営の判断。頭を使う場面は増えましたが、それでも私は、できる限り現場に足を運ぶようにしています。やっぱり、答えは現場にあると思うんです。職人の動き、現場の空気。図面や数字だけでは分からないことが、現場には詰まっています。大工たちがどんな表情で仕事をしているか、どこで悩んでいるか。その小さな変化に気づける距離にいることが、経営者としての自分を支えてくれている気がします。
経営については、正直、今も手探りです。代々続いてきたやり方がすべて正解とは限らないし、かといって、急激に変えればいいとも思っていません。守るべきものと、変えていくべきもの。その線引きを、日々考え続けています。
数字を見ることも大切ですが、それ以上に気になるのが、「人が無理をしていないか」「現場がちゃんと回っているか」。仕事が続くのは、人がいてこそ。誰か一人に負担が偏ってしまえば、長くは続きません。だからこそ、スピードよりも持続性を大事にしたい。これは、父や祖父の背中を見て、自然と身についた感覚かもしれません。
若い世代につなぐために、今できること
─次の世代へ、どんな思いを伝えていきたいですか。
業界全体を見渡すと、明るい話題ばかりではありません。若い大工が減り、なり手不足が続いています。正直、不安がないと言えば嘘になります。それでも、私は悲観しすぎないようにしています。なぜなら、「ちゃんとした仕事をしていれば、必ず誰かが見てくれる」と信じているからです。実際、現場を丁寧に見てくれる設計士の方や、お客様からの紹介で新しい縁が生まれることも多いです。
若い人たちに伝えたいのは、「この仕事は、決して楽ではないけれど、誇れる仕事だ」ということ。自分の手がけた建物が、何十年も残り、人の暮らしを支える。その実感は、簡単に得られるものではありませんが、だからこそ価値があると思っています。いきなり大きなことはできません。でも、働く環境を整え、無理のない体制をつくり、一つひとつの現場を大切にする。その積み重ねが、次の世代につながっていくと信じています。

<会社情報>
| 有限会社早川工務店 | |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県多治見市市之倉 11-181 |
| 設立 | 1975年 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


