なぜ電気工事業者が沖縄フェアを?
大興電設がマッチングで叶えた地域活性プロジェクト

昭和57年創業、電気設備工事一筋で歩み続けてきた有限会社大興電設。鹿児島県いちき串木野市を拠点に、従業員9名の少数精鋭で地域のランドマーク的建物から一般住宅まで幅広い電気工事を手がけています。コロナ禍で建設業界にも大きな影響が出る中、同社が新たに挑戦したのは意外にも「沖縄物産フェア」の開催でした。電気設備工事業者がなぜ沖縄の物産を扱うのか。仕掛け人である潟永様に、地域活性化への強い想いと、Big Advanceを活用したビジネスマッチングの成功についてお伺いしました。
有限会社大興電設 営業部長 兼 エリアソリューション部長 潟永 朋弘 様
電気設備工事一筋 地域に根ざした少数精鋭の技術力
ー御社の事業概要について教えてください。
当社は昭和57年(1982年)6月に創業し、今年で44年目を迎えました。主に電気設備の工事を専門にしています。他の会社は電気もやって水道もやってという形で生計を立てているところが多いのですが、私たちは電気設備一本でやらせていただいています。
これまで携わった代表的な建物としては、いちき串木野市薩摩藩英国留学生記念館やいちき串木野市防災センター、いちき串木野市総合案内所などがあります。
また、隣の薩摩川内市では九州電力が出資して建てた川内文化ホール跡地活用の新築工事にも携わらせてもらいました。
この施設には有名コーヒー店や子供の遊び場、イベントスペースなどが入っていて、子供から大人まで市民が集う場所として注目を集めはじめているようです。

施工事例:薩摩藩英国留学生記念館(https://ssmuseum.jp/contents/)
信頼獲得の秘訣は「プラスアルファ」の丁寧な仕事
ー他社との差別化で大切にしていることはありますか?
“ 気の利いた工事 ”を意識していて、頼まれた仕事にプラスアルファすることをずっと大切にしてきました。例えば机の下の配線を整えたり、屋根裏に置かれた大量の配線を種類ごとに分けてまとめたりしています。依頼された仕事には含まれていない小さな作業ですが、こういった細やかさの積み重ねが評価につながっていると思います。
ーこれまでで一番大変だった時期はいつですか?どう乗り越えましたか?
どの業界も同じだと思いますが、コロナ禍の時はすごく影響を受けました。
工事が遅れるという以前に、本当に仕事が少なくなる状態でした。工事が全て止まってしまい、現場が動かないんです。また、材料費の高騰が続き、電線も2週間に一度値上がりするような状態なので、見積もりを出してから実際に工事を依頼された時には、材料の値段が上がってしまっていて利益が少なくなるわけですよね。
私たちのような小さな会社は事前に何百万も投資して在庫を抱える余力がないので、電材業者さんに都度、発注しています。在庫を抱えないように、無駄を出さないようにしているので、そのバランスが難しいところですね。
ただ、そんな厳しい状況でも、これまで長年お付き合いをさせていただいたお客さんから声をかけていただけることで、なんとか仕事を続けていくことができました。小さいことの積み重ねですが、やっぱりこういう時に人との繋がり、信頼関係を構築してきたことが支えになっているなと感じます。
沖縄での経験が生んだ新事業
ー新規事業で沖縄物産フェアを手掛けていると聞きました。なぜ物産フェアを始められたのでしょうか?
私は沖縄で13年ぐらい観光業に携わっていました。ホテルで営業やマネジメントの仕事をしていたので、他のホテルやお土産屋さん、行政の方とのお付き合いがありました。
Uターンでいちき串木野市に帰ってきて8年になりますが、この町がもっとにぎわってほしいという思いで多くの地域行事に参加してきました。その中で、ホテルアクシア くしきの の総支配人と話をする機会がありました。コロナ禍の緊急事態宣言でも地元従業員の雇用を守りたいと奮闘した話や、地元のランドマークとして人を集めて、そこから町に活気を広げていくスキームを作りたいという話をしていました。地元のために頑張る姿に共感し、一緒に新しいプロジェクトに挑戦することを決めました。
そんな中で、たまたま沖縄の知り合いから「沖縄の離島フェアができる会場を探している」と連絡がありました。鹿児島県で沖縄に特化したイベントは今までなく、「沖縄」のコンテンツは集客も見込めます。ホテルアクシアさんと話をして、まずは第一歩を踏み出してみようということになりました。新規プロジェクトがたまたま「沖縄」であった事が沖縄物産フェアのはじまりでした。
ー実際に開催してみたイベントの様子はいかがでしたか?
2023年2月に、第1回沖縄フェアを開催した時は1200人の入場客数でした。初めての開催で段取りもわからず、みんな疲弊していましたが、携わった皆さんがすごく楽しかったと言ってくれた事で新しいアイデアが出始め2回目、3回目と開催できることになりました。
集客が課題だったので、回を重ねるごとに様々な工夫を凝らしました。2回目の開催時には鹿児島県の観光連盟に声をかけたり、より沖縄を感じる商品の提供、SNSやラジオを活用した告知に力を入れました。3回目の開催では行政の補助金も活用して専用ののぼりやパネルを作り、琉球舞踊や地元高校の合唱部にも出演していただきました。5メートル×7メートルの首里城のパネルもステージに設置しました。
沖縄の行政や施設さん、周りの方々の協力のおかげで、2回目は2100人、3回目は2800人、そして第4回目も先日終わったばかりですが、結果は3500人の方に来ていただくことができました。
Big Advanceが結んだ沖縄との新たなビジネス
ーBig Advanceはどのように活用されていますか?
今回の沖縄フェアでは、Big Advanceを通して4社の沖縄の企業さんと取引につながりました。そのうち2社は九州初上陸の商品を扱っており、今回のフェアではこれらを含め、合計714点以上の商品を仕入れました。
マッチング先を探す時は、「コスメ」「化粧品」「沖縄」などのキーワードで検索して取引の可能性がありそうな企業に積極的にアプローチしています。例えば、石垣島の特産品を取り扱う企業様とは面談でお話を聞かせていただいてから、商品サンプルを送っていただきました。ひと口食べたら「あっ、これはいいな」という感じで、すぐに取引が決まったんです。
Big Advanceのマッチングの良いところは、金融機関の審査を通過している企業同士なので相手がこちらを信頼してくれることです。当社を全く知らない企業からしたら、なんで建設業の会社が沖縄のもずくを仕入れるんだって不審に思われるかもしれないですよね。会員企業という信頼が前提にあると、話をスムーズにすすめられるので本当に効率的だなと思います。
Big Advanceではその他にもホームページ機能や請求書の作成・管理ができるオプション機能も活用しています。以前は他のホームページサービスを使っていたんですが、途中で機能制限ができて使い勝手が悪くなってしまったので他のサービスを探していました。Big Advanceならホームページも作れるし、マッチングもできるし、直感的で使いやすい請求書機能も使えるということで、一石三鳥だなと思って導入しました。
厳しい指導が教えてくれた経営者としての心構え
ー人生の中で転機となった出会いはありますか?
沖縄の外資系ホテルで働いていた時の上司との出会いですね。その人は社内で1、2を争うぐらい厳しい人でした。「自分が経営者だと思って働きなさい」と言われ、徹底的に追求されそれに応える日々でした。当時はその厳しさが辛いことも多かったんですが、地元に戻り、会社でマネジメントをする立場になると、「ああ、あの時言われたのはこれか」と思い出すことが多いですね。
私が前職を辞める時にもらったフォトブックにその人が書いてくれたのは、「これからは経営者としてしっかり頑張ってください。地域・従業員を守ってください」という内容でした。今思い返すと、本当にその言葉の通りになったなと思います。
本業を大切にしながら描く地域商社への展望
ー今後の事業展望についてお聞かせください。
本業である電気工事を事業の柱として維持しながら、物産事業については現在の会社規模に見合ったペースで着実に進めていきたいなと思っています。
物産事業は年間でフェア売上が約350万円、その他を含めて年間500万円ほどの実績があります。ですが、これを1000万円、2000万円の規模に急激に拡大するとなると、本業への影響があるので現実的ではありません。地域振興への貢献ができるように、適切な規模で継続していきたいと思っています。
将来的には地域商社のような事業を立ち上げて、沖縄商材・地元商材の流通において橋渡し役になりたいと考えています。実際に、過去にお付き合いのあった企業様から「沖縄商品の仕入れルートを探している」「アイスクリーム商品の卸先を求めている」といったご相談も増えてきています。
私たちが大切にしたいのは、地域の人たちに喜んでもらえる持続可能な事業展開です。フェアの開催時はイベントの運営に集中的に取り組んで、普段は地道に地域とのつながりを深めていく。人と人とのつながりを育み、長期的な信頼関係を築いていくことを大事にしていきたいです。
<会社情報>
有限会社大興電設 | |
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所在地 | 鹿児島県いちき串木野市薩摩山1328-1 |
設立 | 1982年6月 |
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※情報と肩書は取材当時のもの |