2025年07月14日

「神の湯」1300年の歴史と科学的実証で差別化
玉造温泉まちデコがコスメで街を再生させる

コロナ禍で観光客が激減する中、新たな販路開拓に積極的に取り組んできた島根県の玉造温泉まちデコ。1300年の歴史を持つ玉造温泉の恵みを活かした化粧品事業で、Big Advanceを活用したビジネスマッチングや製薬会社との連携を行い、さまざまな方法で町とともにV字回復を目指します。今回は同社の販路開拓の取り組みと、他の温泉地にはない独自の強みについて、大北氏にお話を伺いました。

株式会社玉造温泉まちデコ 取締役副社長 大北 順一 様

地元のみんなで町おこし 民間主導の会社設立

ー会社設立の経緯について教えてください。

当社は2007年7月に設立されましたが、その背景にはバブル崩壊後の旅館業界の危機がありました。団体旅行から個人旅行が主流となり、玉造温泉の旅館15軒のうち4軒が倒産するという状況になりました。

「次は自分たちの旅館かもしれない」という危機感から、地元の皆さんが団結して観光協会を民営化し、行政に頼るだけでなく民間だけでも何か町にできることはないかということで、旅館のオーナーさんや土産品店さんなど6人がポケットマネーで100万円ずつ出し合って町づくり専門の会社を作ったのがはじまりです。

実は私と現在の代表である角(代表取締役:角 幸治氏)との出会いは、私の実家が玉造の旅館内で商売をしていた時でした。角は当時、旅館の予約部で営業部長をしており、1年間予算をもらって頑張ったけれど、成果が思うように出せなかった時に「玉造自体に人が増えれば、おのずと旅館の集客も上がるんじゃないか」と考えるようになったそうです。そんな時に観光協会の民営化の話があって、角が事務局をやることになり、それと同時期に民間のまちづくり専門の会社である弊社が設立され、二足のわらじで事業が始まりました。そんな中、玉造温泉のイベントで、夏休み期間中毎日開催する夏祭りを一緒に立ち上げることになったんです。夏祭りはおかげさまで大盛況で終えることができました。そして夏祭りの片付けをしている時に、もっとワクワクすることがしたくなった私は「こんなの面白くないですか?」と角に提案したのが、美肌をキーワードにした化粧品ブランドやエステなどをメインにした美肌館構想でした。その美肌館構想が、その後【玉造温泉美肌研究所姫ラボ】になりました。

ー化粧品事業を始めたきっかけは?

設立当初「日本最古の美肌温泉の温泉水が入っている」ことを特徴とした「キラキラミスト」という化粧水スプレーがありました。ただこれは売店や土産品店などで販売していました。もともと街に明かりを灯すことをコンセプトに設立された会社なので、姫ラボを立ち上げるときに念願の温泉街への出店をすることになりました。コンセプトショップがあることで、温泉街のイメージアップ、温泉の説明、なにより温泉水が化粧品になることで玉造温泉水の美肌効果のイメージアップにつながり、玉造温泉=美肌を連想でき、結果として玉造温泉のイメージアップにつながることになりました。

歴史と科学的実証 他の温泉地にはない2つの強み

ー玉造温泉水と他の温泉水との違いは何でしょうか?

玉造温泉には2つの大きな強みがあります。

1つ目は歴史です。1300年前の出雲風土記に

「一たび濯(すす)げばすなわち形容(かたち)端正(きらきら)しく、再び沐(ゆあみ)すればすなはち万(よろづ)の病(やまひ)除(い)ゆ。古(いにしへ)より今に至るまで、験(しるし)を得ずといふことなし。故(か)れ、俗人(くにひと)神の湯と白(い)ふ。」

と、玉造温泉のことが書かれています。一回温泉に入るだけでお肌が綺麗になり、病気も治って、効果がなかったことはないから皆が神の湯と呼んだという記録が残っているのです。歴史はお金では買えませんし、これは玉造にしかないものです。

2つ目は科学的実証です。

全国には美肌の湯や美人の湯と呼ばれる温泉地が200カ所以上ありますが、それらは泉質によって言われているのが一般的です。玉造温泉水は科学的に実験して、その実証実験のデータがあります。

昔からの言い伝えと、現代の科学でそれが実証されている。この2つが揃っているのは全国を探しても玉造しかないと思います。

直販重視の価格設定 素人だからこその戦略

ー商品の価格はどのように決められているのですか?

実は我々は全員商売は素人だったんです。社長の角も私も、もう1人いる藤田も全員素人でした。原価率もよく分からない状態で製薬会社さんに相談したところ、「どういう販売の仕方をされますか?」と聞かれて「自社で丁寧に1つずつ商品を説明して売りたいです」と答えました。そうしたら「じゃあ原価率はこれぐらいですね」という感じでスタートしました。
通常の化粧品メーカーさんより原価率はかなり高いです。品質にこだわり、直販を基本ベースとした考え方の価格設定にしているので、お客様からはお求めやすい価格になっています。

Big Advanceで大阪のシールメーカーとの商談が実現

ーBig Advanceを活用するようになったきっかけを教えてください。

もともとは山陰合同銀行さんのビジネスマッチングサービスを何年か利用させていただいていました。その中で新しくBig Advanceが使えるようになるという話を聞いて、当初は代表の角が登録していたのですが、私の方が販路開拓を担当しているということで去年から引き継ぎさせていただきました。

やはりコロナになって、温泉街の集客に大きな変化がありました。それまでは玉造温泉に観光に来た方がうちのお店に寄って商品を買う、という行動が主だったのですが、観光客が来なくなったことで売上が3割ほど下がりました。その時に自分たちで集客や販路開拓をやっていかないといけないという考えになり、Big Advanceでのビジネスマッチングを積極的に活用するようになりました。

ーBig Advanceでの具体的な成果はいかがですか?

最初はビジネスマッチングを活用し、商談会にも参加しました。なかなか商談までは結びつかなかったのですが、1社、大阪のシールメーカーさんとお話をさせていただいています。現在、サンプルと見積もりをいただいている状況です。

例えば、石鹸などにモコモコした感じのシールを貼って、お客様の興味を引いて購入につなげたり、QRコードをつけたりもできます。特に「キラキラミスト」というスプレータイプの商品に関しては、振らずに使うとガスだけ出てしまって中身が余ってしまうという現象が起こります。現在は1個1個スタッフが人の形に切ったシールに注意書きをしてマスキングテープで貼っているのですが、そういった使用上の注意を含めたシールをきちんと作れれば、スタッフの作業効率が上がることはもちろん、B to Bでも通用する商品になるのでは、と考えています。

温泉水を他社に提供し知名度向上 地域全体の持続可能な発展を目指して

ー温泉水を他の製薬会社に提供されているそうですね。

はい。サティス製薬さんの「ふるさとプロジェクト」に参加しており、メンズスキンケアブランドのバルクオムさん、他にも複数の化粧品会社さんが玉造温泉水を使った商品を販売しています。

年商何十億の会社が何千万もかけて広告を出して「玉造温泉水配合ですよ」と言って宣伝してくれるんです。本来は自分たちでお金を出してやらないといけないプロモーションを無償でやってくれている状態に近いと考えています。いろんなメーカーさんに使ってもらって、とにかくいろんな方に知ってもらうことで玉造温泉の知名度を上げる戦略です。

ー今後の事業展開についてお聞かせください。

玉造温泉は1300年以上の歴史があります。私たちの時代で廃れさせたくありません。しっかりと次の時代にバトンを渡せるような土壌を作っていきたいと思っています。

また、人口が減ったり、いろんな社会情勢で影響を受けることが地方にはあると思いますが、やはりそれに耐えうる成長もしていかないといけません。

ただ、むちゃくちゃ大きい会社にしようという気は全くなくて、働いている人が幸せで、地域の人が幸せで、背伸びせずに持続できることが一番いいと思っています。うちは堅実に一歩一歩進んでいく会社なので、着実に成長していければと考えています。

<会社情報>

株式会社玉造温泉まちデコ
所在地 島根県松江市玉湯町玉造46-4
設立 2007年7月
URL

https://www.hime-labo.com/

https://www.youtube.com/channel/UCks0D34AN4fsa9BJ6FcVEYw

https://www.youtube.com/@tama-navi

※情報と肩書は取材当時のもの
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