ビジネスマッチングで広がる事業機会
ECからIT事業へ、スプランドゥール社の多角的成長戦略

繊維産業から始まり、コロナ禍をきっかけにIT事業へと領域を拡大した株式会社スプランドゥール。お客様の声に応えるうちに広告代理店やアプリ開発、さらには一般社団法人ヒアルロン酸協会の設立へと事業を進化させてきました。今回はIT事業部責任者の関根氏に、事業展開の様子や大事にしている視点などについてお話を伺いました。
株式会社スプランドゥール IT事業部部長 関根 智彦 様
地場産業を活かした創業から、コロナ禍での新たな展開
ー御社の簡単な概要を教えてください。
当社は1997年に創業しました。創業から16期目頃までは、福井県の繊維産業が盛んという地域特性を活かし、主に繊維関連事業を展開していました。具体的には補正下着の製造や、海外・国内からのOEM依頼に応じた製品製造、製造工場の既存商品を国内外へ流通させる事業です。その後、美容系商材や化粧品なども手がけるようになり、一部ではECサイトを活用した販売事業も行ってまいりました。
ー関根様はいつ入社されたんですか?入社後はどのような事業を立ち上げられたのでしょうか。
私がスプランドゥールに入社したのは2020年4月で、ちょうどコロナ禍真っただ中のときでした。私の前職は美容皮膚科医が経営者だった会社で、Eコマースに特化したオンラインサイトを運営していた部門で働いていました。
スプランドゥールでは、最初はEC事業としてメーカー様のオンラインサイトの制作運営をする形でスタートしました。これが今のIT事業部の本事業でもあります。コロナの影響で多くの経営者が「ネット販売も始めるべきではないか」と考えるようになり、当時はIT導入補助金なども充実していましたが、多くの企業ではECやITの専門知識を持つ人材が少なく、新たにIT人材を雇用するハードルが高いという課題がありました。
そこで、前職のノウハウを活かして、「まずは業務委託という形でスタートしませんか。もし合わなければ雇用関係がないのでいつでも終了できます。未経験者を雇うよりも、私たちと一緒に新しい売上を一緒に作っていきましょう」という姿勢で事業を進めていきました。
EC事業を展開する中で、お取引先からは「ホームページも修正できる?」「商品のグラフィックデザインはできない?」「名刺を作ってほしい」「勤怠システムの不具合を直してほしい」など、さまざまな相談を受けるようになりました。こうやって業務範囲が拡大していったので、事業名をEC事業部から「IT事業部」に変更することになりました。
顧客ニーズから広がった広告代理店業務
ー広告代理店業務も手がけられているそうですね。
はい。あるクライアントから「実はテレビCMを出しているけれど、TVerにも広告を出したい」と相談されたことがありました。たまたま当社にテレビ局の制作経験を持つスタッフがおり、TVer側からも「代理店になりませんか」とお声がけいただいたこともあり、TVer広告の代理店業務を始めることになりました。
Eコマースの売上向上には効果的な集客が不可欠です。クライアントがTVer広告を希望した時に、比較的安価な広告制作サポートも提供できればより多くのお客様にご満足いただけると考えました。さらに、USENの「アプリンク」を使ったアプリ制作の代理店や、決済システムのPaidy代理店業務なども手がけています。これらはすべて「お客様のお役に立ちたい」という想いでお客様からのお声を実現しようとした結果、サービス提供につながった形です。
クライアントの悩みに寄り添う 信頼につながるサポート
ーお話を聞いていると事業領域がどんどん増えていっていますが、どのようなチーム体制で行われているのでしょうか?また、コンサルティング業務もされていますか?
IT事業部は現在5名体制で運営しています。基本的に外注は使わず、この少人数チームですべての案件に対応しています。将来的に売上が増えて業務が忙しくなれば、人員を増やすことも検討しています。
実は最も多いご依頼はコンサルティングです。Webサイト制作や運用業務を進める中で、クライアントから「ここがよくわからない」といった質問をよく受けます。そういった時にアドバイスを提供する、サポート的な役割が大きいです。クライアントの皆さまにはこういった細やかなサポートを高く評価していただいていて、それが長期的な取引関係につながっていると感じています。
予想外の展開を生み出したビジネスマッチング
ーBig Advanceはどのように活用されていますか?
多くの企業がビジネスパートナーを探す時に、新しいつながりを求めて検索するのが一般的だと思います。私たちの場合は、どちらかというと紹介による案件が多いです。ただ、同業種の企業と多数取引すると競合関係を生んでしまうため、各職種につき1〜2社程度という上限を設けています。そんな中で、これまでご縁のなかった業種の企業様とつながるきっかけとして、Big Advanceは大切な出会いの場になっています。
例えば、USENのアプリ作成代理店業務に至ったのもBig Advanceがきっかけでした。
当社のオリジナル商品「ストロングマン」というメンズ用補正下着があるんですが、最初は「この商品を扱うアプリを作りませんか?」というお話を先方からいただきました。実は当社も自社アプリをやっていたので、「今後の参考になればいいな」くらいの気持ちで話を聞かせていただきましたが、話を進めるうちに「この価格でこんな面白いことができるんですね」となりまして、「代理店として活動させていただけないでしょうか」とお伺いしたところ、担当者を紹介していただけました。それがきっかけで代理店業務を始めることになりました。
また、Big Advanceで見つけた別の下着メーカー様から下着を仕入れたいと思いオファーしたのですが、先方が同じ福井の会社だったので直接お会いすることになりました。商談の中で私たちが「ECの運営をしています」と伝えたところ、非常に興味を持っていただき、2週間後には当社がその会社様のEC運営を請け負うことになりました。現在は商品の仕入れよりもEC運営のパートナーとして、困ったときに相談し合えるほど良好な関係を築いています。予想外の展開が生まれるのもBig Advanceの面白さだと感じています。
新たな挑戦 「ヒアルロン酸協会」
ー最近の新たな取り組みについて教えてください。
今年2月に、一般社団法人ヒアルロン酸協会を設立しました。こちらは会員制の組織で、ウェブサイトの運営サポートを弊社にて担当させて頂いております。
協会のトップは医師の方ですが、今年発行された最新の業界情報誌で東海地方のゴールドプライズを受賞された方など、実績豊富な専門家にも参画いただいています。美容皮膚科や形成外科などの分野で活躍する医師陣が中心となり、科学的根拠に基づいた情報提供と技術指導を行う体制を整えています。
ヒアルロン酸協会は、ヒアルロン酸に関する正確な知識を普及し、その技術向上を促進することで、社会に新たな価値を創造するための学びの場として設立しました。私たちは皆様と一緒にヒアルロン酸の普及と価値創造、知識や技術の向上を目指しています。これから一般の方や法人会員も募っていく予定で、会員の方向けに各種認定試験を実施していく予定です。例えば、4級試験は無料で受験できるようにして、3級以上の試験は会場で一斉に実施するなど、段階的に学びを深められる仕組みづくりを進めています。一般の方から専門家まで、それぞれの立場や目的に合った学びの場を提供します。将来的には、ヒアルロン酸協会が認定した商品のみを扱うECサイトや展示会、セミナーも開催したいと考えています。また、信頼できる医師や専門家の知見を得たいという女性の方々なども参加できる場を創出したいと考えています。
ーなぜヒアルロン酸協会を立ち上げようと思ったのですか?
化粧品や美容医療の協会のようなものはたくさんあるんですが、ヒアルロン酸に特化した組織というものがほとんど見つかりませんでした。「ヒアルロン酸」は大体の化粧品に入っている成分で皆聞いたことがあるのに、正確な知識や効果的な活用法について体系的に学べる場がなかったというギャップに着目しました。
現代の日本市場は、単に良い製品であるだけでは売れる時代ではなくなっています。特に化粧品や食品などの分野では、有名タレントを起用するよりも医師の推薦や認証を得る方が圧倒的に信用度が高い傾向にあります。そこで当協会では、送られてきた商品を審査し、認定されれば「ヒアルロン酸協会認定シール」を製品に貼付することも考えています。これによって、商品に信頼性というプラスアルファの価値を付与することが可能になります。
参入障壁の低いエステサロンなどは競争が激しくなっています。こちらもヒアルロン酸協会の正式認定を受けたお店としてサロンを展開できれば、他との差別化ができるようになります。
医師と一般消費者、そして企業をつなぐプラットフォームとして、ヒアルロン酸協会は美容業界における新しい価値創造と信頼をつくることを目指しています。
生態系に学ぶ、女性を中心としたマーケットアプローチの大切さ
ーキャリアの中で転機となった出会いはありますか?
一時期自営業をしていた時に、鉄道会社の常務の方と出会う機会がありました。その方とさまざまな対話を交わす中で、特に印象に残ったのは生態系についての話でした。
「蜂や蟻の社会では、すべてが女王を中心に回っている。人間社会では表面上は男性が主導しているように見えても、子どもを産むという根本的で重要な役割を担っているのは女性だ。それを肝に銘じておけ」と教えてくださったんですね。
この考え方はビジネスにも通じると思います。女性が心地よく入れるお店には男性も入りやすいですが、男性だけが利用するお店には女性は入りにくいという傾向があります。女性に認められ、女性が楽しいと感じる商品やサービスを提供できれば、うまく回るのではないかと常に意識しています。
時代のニーズと若手の発想を活かした事業戦略
ー今後の展望についてお聞かせください。
私たちは時代のニーズに合わせて事業内容を柔軟に変化させながら成長していきたいと考えています。現在はITビジネスに注力していますが、常に意識しているのは取引先のお客様にメリットをもたらす提案ができるかどうかという点です。
また、若手スタッフが発想した事業プランに可能性があれば、基本的には彼らの裁量で事業を成長させることを奨励しています。IT関連ツールについては世代による差が顕著なので、私自身も今月50歳になりますが、50代よりも40代、さらに30代、20代、10代と若くなるほど最先端ツールの使いこなし方が素晴らしいと感じています。こうした若い世代の技術力は尊重すべきですよね。私たちが経験値でサポートすることで、年齢に関係なく全員が対等に活躍できる環境づくりを心がけています。
仕事としての面白さとビジネス性・収益性を兼ね備えたプロジェクトを選びながら、会社として成長していければ大変ありがたいと考えています。
<会社情報>
株式会社スプランドゥール | |
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所在地 | 福井県福井市問屋町1丁目131 スプランドゥールビル |
設立 | 1997年 |
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※情報と肩書は取材当時のもの ※一部画像はスプランドゥール様提供 |