地道な人脈作りが仕事を呼ぶ
中部食産株式会社がコロナや物価高でも生き残るための営業方法とは

岐阜県恵那市で鶏肉のハムをはじめ肉類の加工品を製造している中部食産株式会社。人々の生活の変化に合わせた販売方法やPR方法を模索し続けています。物価が高騰し、消費者の生活を圧迫している今、“少し高価”な食品が売れ続け、会社が生き残る方法とは?営業担当の大島氏にお聞きしました。
中部食産株式会社 営業部 課長 大島 誠 様
生肉の卸売はスーパーの変化と共に加工品へシフト
ー御社の歴史や背景、事業内容を教えてください
岐阜県の恵那市で、主に食肉の加工品を作らせていただいている会社です。創業当初は鶏肉をメインで扱っていて、もも肉やむね肉、ささみ等に切り分け要望に応じたカットやパックを行い地元のスーパーや飲食店に卸していました。昭和中期頃はスーパーも小売もチェーン化していなかった時代なので、地元のお店に納品したものがそのまま売られる形でした。岐阜県内で有名なスーパーも創業は恵那なので、当時からお付き合いがあります。そのスーパーが大きくなるにつれて取引件数も増えていきました。
昭和後期くらいになってくるとスーパーの多店舗展開が始まり、バックヤードにお肉を切るスペースが作られるようになりました。お肉を仕入れて切る、という仕事をスーパーの中でできるようになったので、私たちの仕事は減っていきますよね。その頃からハムやソーセージ、ベーコンなどのお肉の加工品を始めました。そこからどんどん加工品の比率が増えて、今は加工品が9割、生肉の卸が1割くらいです。
加工品も大きく分けて2つあって、自社ブランド「恵那峡フレッシュハム」等が業務用・一般用で半分弱、あとの半分強は、当社で「企画」・「製造」していますが、取引先のオリジナルの商品として市場にでていて、様々な食品を扱う業態に出させていただいています。
おせちの中のお肉商品を担当させてもらうなど、基本的には切るだけ、焼くだけ、温めるだけ、の状態にします。機械化して均一のものを大量に作るのは、大手に勝てない部分がありますが、逆に大手がやらないような小ロット・多品種を手がける細かい作業の部分を強みにしています。昨今は働き手も少なく、高級な旅館や名門料理店以外の飲食店やホテルで、素材からメニューを作って提供しているところが少なくなっており、私たちの加工品は多くのお客様に重宝されています。
ー豚肉や牛肉はよく見かけますが、鶏肉の加工品は珍しいですよね
日本人は基本的にもも肉が好きなんですよね。むね肉ってサラダチキンが出来るまであんまり人気がなかったんですよ。当社が取り扱っている奥美濃古地鶏(おくみのこじどり)も、過去ではもも肉がよく売れていくんですけど、余ったむね肉は冷凍で倉庫に積み上がっていきました。結局行先が無ければ捨てることになるんですが、産業廃棄物になるのでお金もかかります。良いお肉なので、加工品にすれば日持ちもするし、色んなところに出せるかな、と思って始めたのが奥美濃古地鶏の加工品です。サラダチキンのブームがきたことで鶏肉の加工品が注目されて、売れるようになりました。鶏のハムを作っているところはほとんどないので、営業としてはキラーアイテムとして持っていってます。意外なところだと、イスラム教などの宗教上の理由で食事制限がある人たちが、鶏のハムなら食べられると言って買ってくれたりもしますね。
外部環境に左右される業界 流れに合わせた取り組みも重要
ーネットで個人向けの販売やSNSでの発信も行っていますよね。
当社の商品を買ったことがある方で、もう一度買いたいけれどどこで買ったら良いの?というお客様に向けてネットでの販売を行っています。ただ、食品の場合はネットでの販売が価格競争になりがちです。商品価値を落としたくないので、大幅な値下げをした広告を打つような宣伝はしていません。
SNSも個人に向けた発信ですが、主に当社のことを知ってもらいたいという気持ちでやっています。イベントや新商品の告知ですね。
ー個人向け販売やSNSを始めたきっかけはあったのでしょうか
やはりコロナの影響は大きかったです。当社の売上の半分はホテル・旅館・外食で占めていたので、当時は年商も半分くらいになってしまいましたが、一般消費者向けの売上が少し伸びたんですよね。悲惨な状況から脱却するためにも、情報発信をしていこうということでSNSを始めました。
ー現在の状況はいかがですか?
今は外食関連の売上が良く、一般消費者向けや市販用が苦戦しています。おそらく物価高が影響していると思います。一般消費者は生きるために必要なお金(ガソリンや光熱費、食費など)が増えていくと、どこか削りますよね。削るのは人にあげるものや人に使うお金と、贅沢品です。ランクの高いウインナーを食べているけれど、ちょっと安いものに変えようかとか。買い物に行った時にジュースを買っていたけどやめようとか。私たちの商品は高級品の部類になっていて、ちょっと削ろうかという部分に入ってしまい、苦戦しています。
外食に関しても、もちろん回数を減らすような動きは出ていると思いますが、海外から来てくれるお客様がいたり、人手不足で加工品自体の引き合いが強い部分があるのでこちらは今のところ好調ですね。
すぐに成果にならなくてもマッチングや商談会で繋がりは作るべき
ーBig Advanceでは、ビジネスマッチングや商談会にも参加いただいていますね。成果はいかがですか?
Big Advance導入は、金融機関の方に勧められた当社代表から、やってみて、と渡されました。私は営業を任されているので、主にマッチング機能を使っています。昨年の商談会にもリアルで参加して、何社か面談して繋がっています。取引まで繋がるのはタイミングもあるので難しいところもありますが、どんなビジネスマッチングや商談会、展示会でもやったからといってすぐに成果に繋がることは少ないですね。繋がりが続いていけば、例えば3年後くらいに大きな仕事をする、ということもあります。飛び込み営業は相手にされない時代なので、こういったプラットフォームを使えばスムーズに話すことはできますよね。
繋がった企業はリスト化をして新商品の告知をしたり、メールで案内したりして、先方が欲しいタイミングと合えば話はすぐに進んでいきますので、気長に分母を増やしています。成熟し切った業界なので、市場は大きくなってはいないのですが、競合が後継者不足などで廃業してしまってその分の仕事が来たりすることがあります。そういう時に声をかけてもらえるかどうかは、こういう地道な活動をしているかどうかだと思います。
ー営業をされていて、見えてくる傾向のようなものはありますか?
これまで成約している企業は岐阜県や愛知県の近隣県が多いです。こちらのフットワークが軽く、来週行きます、と言えるのもあるし、お互い地元なので親近感があります。昨年は関東・中部・関西の大型展示会にも数回出ていますが、成約率が高いのはやはり中部です。今はオンラインでも商談はできますが、試食を送ったりすると時間がかかることもあり、遠方との成約は少なめです。食品だとなかなかオンラインとの親和性はよくないのかもしれません。また、そのエリアにはそのエリアの、地元の企業の商品が優先される傾向もあるんだろうなと思います。
社外での出会いが仕事もプライベートも豊かに
ー営業職だと他の方と知り合う機会も多いのかなと思います。これまでに良い出会いはありましたか?
そうですね、営業なので、同業他社や全く別の業種の他社の社員と会うことがあります。現場が一緒になったら食事に行ったりもしますし、お互いのお客様のニーズを満たすようなビジネスの話をすることもあるんですが、気が合う方なら家族同士で遊びに行ったりもしますね。歳が近いと同じような家族構成になるので、子供が同級生だったり、野球チームの話で盛り上がったりします。社外の人との出会いは、仕事の幅も広がるしプライベートも豊かにしてくれますね。
ー今後はどんなことに力を入れていきたいですか?
当社は岐阜の恵那市にある一中小企業ですが、まだまだ知られていないです。そこをどう世の中に知っていってもらうかが課題です。恵那市内でも知らない人はいると思うので、イベントや展示会に出たり、SNSを強化したいですね。商品をより知ってもらうために次のステップを模索中ですが、それができれば売上もついてくると思っています。
<会社情報>
中部食産株式会社 | |
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所在地 | 岐阜県恵那市長島町中野1204-78 |
設立 | 1962年9月 |
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※情報と肩書は取材当時のもの ※一部画像は中部食産様提供 |