2025年03月06日

自動車用不織布製造で国内シェアNo.1
日本の繊維業再興を牽引するオーツカが見据える未来

岐阜県で自動車用不織布やインテリア用資材などを製造開発する株式会社オーツカ。最近ではBtoC向けのペット用品を製造販売したり、独自のリサイクル技術の開発で環境に配慮する取り組みを行っています。繊維業が衰退していく中で、日本の良質な繊維の製造を継続するためには何が必要なのか。世の中の変化に合わせて会社も変わっていくことが必要、と語る代表の大塚氏に、会社の取り組みや課題、今後の展望などを詳しくお伺いしました。

株式会社オーツカ 代表取締役社長 大塚 有企朗 様

「ガチャマン」の時代を経て不織布を製造

ー御社の歴史や背景、事業内容を教えてください

当社は昭和22年(1947年)に紡績工場として、この岐阜県笠松町で創業し、今年(2024年)で77年目になります。会社としての設立は昭和38年(1963年)で、今年が62期目です。

ここは尾州地区と呼ばれる地域で、糸を作っている会社がたくさんあります。70年前は繊維の町として、紡績から機織り、アパレルなどの繊維王国として世界に輸出していた時代がありました。機織り機を一回織ると一万円儲かる、という「ガチャマン時代」と呼ばれた時代ですね。工場がうるさいので打ち合わせは喫茶店で、という習慣ができ、愛知県から岐阜県にかけて喫茶店がたくさんあるのもそういった時代背景から来ています。

ただ時代と共に繊維業は衰退していって、今はアジア諸国の勢いに押されてしまっています。当社は糸から不織布の製造に転換し、約50年前に自動車用の不織布として採用されてから自動車産業の発展とともに成長してきました。

国内の車に使われている不織布では、全体の約25%のシェアを誇り、国内トップシェアになります。タイヤの上のフェンダーライナー、車内の床や天井、トランクの中などに使われています。安定した品質のものを供給できること、部品メーカーさんと同じように試験設備をたくさん取り揃えていることが強みです。当社の開発人員は社員全体の10%ほどを占めていて、開発強化にも取り組んでいるのが特徴です。

また、2年前からBtoC事業も始めまして、不織布を使ったペット用ハウスやおもちゃの製造販売もしています。

ー国内トップシェアとのことですが、車用の不織布は他の会社で作ることは難しいんですか?

技術と量、工場の体制が必要なので、どこでも作れるわけではないと思います。そして安定品質も必要ですね。QCD(品質・価格・納期)がセットになっていないといけません。
自動車に対応できる会社は限られているので、この3〜40年でしっかりと対応してきたことが当社の信頼を積み上げたと思います。実績と信頼があるからこそ、新しい製品を作る時には「これできますか?」とお声がけをいただいています。

BtoC事業を開始。ネコ用ハウス「にゃろにも」開発

ー自動車用の不織布やインテリア向けの資材などを扱われている中で、ペット用ハウスを手がけられたきっかけはありますか?

コロナ禍で半導体不足があって、自動車の生産台数が約3割落ちました。その時に自動車一本ではなく、他の柱も少しずつ始めていこうと考えました。この猫ハウス「にゃろにも」はその一つです。

発案は営業部の有志が行ったのですが、いくつか案がある中で最終的に形になったのがこの猫ハウスですね。試作を繰り返す中で猫カフェにも足を運んで調査をして、サイズが決まっていきました。現在はネットショップやふるさと納税で販売しています。これまでBtoBの事業をやってきたので、BtoCのマーケティングや宣伝方法に課題があって、なかなか売れなかったんですが、今年はふるさと納税で注文が入るようになりました。地道にやってきたことが成果に繋がったと感じました。

SNSやイベント参加でPR強化。SDGsの取り組みも

ーインスタアカウントをお持ちですよね。製造業でインスタを運用されているのは珍しいなと思いました。地域のイベントなどにも積極的に参加されていますね。

当社の認知拡大と採用を強化したいという目的です。業界では認知のある会社ですが、一般の学生さんたちが当社を知る機会が無いんですよね。イベントに参加したりインスタを活用して、当社のPRをしていきたいと思っています。採用を継続できなければ、将来の事業も継続できません。今特に力を入れて行っている部分です。

ー会社紹介動画を制作されていたり、HPにも親しみやすさが感じられました。リサイクルにも力を入れていると拝見しましたが、御社のSDGsの取り組みを教えてください。

特に2、3年前から未来を見据えた取り組みをしていこうと考えていまして、独自のリサイクル技術を開発しています。

従来の不織布は色々な機能を持たせるために、PET素材とPP(ポリプロピレン。カラーコーンなどにも使用される素材です)を混ぜてシートを作っています。例えばペットボトルだけを集めてリサイクルするのは単一素材なのでやりやすいんですが、PETとPPが混ざった材料をリサイクルするのは難しいです。なので、これをまた繊維に戻そう、という技術を独自で開発していて、新たに売り込んでいけたらと考えています。こういったリサイクルをすることで、端材と呼ばれるゴミが減ったり、サーマルリサイクルで燃やす燃料になっていた産業廃棄物を減らせるので、CO2排出量も低減できます。このような独自の技術を活用し、社会環境へ還元できる仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えております。

さまざまな出会いやチャレンジが未来をつなぐ

ーこれまでの中で、大塚様にとって印象的な出会いなどがあれば教えてください

実は大学時代に「鳥人間」をやっており、人生の中でもこの仲間は、大きな出会いでした。作業場の火災もあり、様々な困難もあり、私の代では優勝はできなかったんですが翌年優勝することが出来ました。その時の仲間は今も助けてくれますし、大学院まで6年間続けた鳥人間では、諦めない心を学びました。

今年はスタートアップの会社とも出会って、新しいリサイクルを始めようとしています。ゴールを見据えながら、地道にやっていきます。「飛躍」というのはすごいことでもありますが、その裏で歪みが生じたりすることもありますよね。だから少しずつ変化をしていこうと思っています。世の中も少しずつ変化していくので、その変化を見据えながら自分たちも変わっていくことが、今後の課題の一つですね。

ー今後の展望を教えてください

当社は綿(わた)から不織布を作るという事業をしていますので、この強みを国内のみならず、世界にどう発信していけるかということがまず1つ、大きな展望ですね。そのためには技術力もそうですし、PRも強化したいです。また、日本の繊維業が衰退したことで国内設備メーカーがなくなってしまい、輸入に頼っている機械や部品があります。そういったものを少しでも当社で作れないか、チャレンジしてみたいと思っています。少しでも日本の繊維産業を存続させていくための挑戦をしていきたいです。

<会社情報>
株式会社オーツカ
所在地 岐阜県羽島郡笠松町門間1815-1
設立  昭和22年(1947年)10月
URL  https://www.otsukacorp.co.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの
※一部画像はオーツカ様提供

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