元航空エンジニアが起業
YDKメカトロニクス、特許モービル車で世界へ

50代での独立、窮地からの復活、そして海外展開への挑戦。元川崎重工業の航空エンジニアである安田氏は、航空技術を応用した革新的なモービル車(移動式コンクリートプラント)を独自開発し、特許を取得。海外市場を見据えて挑戦を続けています。創業2年目、仕事がほぼゼロという厳しい状況でBig Advanceと出会い転機に。冷凍機メンテナンスや産業機械の組立という新たな事業が軌道に乗り、現在は継続的な取引を確保しています。「1時間前に現場に着いて、ワクワクしながら準備している」と語る安田氏。技術を学ぶ楽しさ、人とのつながりの喜び、そして海外展開という大きな夢。技術者としての情熱が、新たな可能性を切り拓いています。
YDKメカトロニクス株式会社 代表取締役 安田 洋介 様
飛行機少年が航空エンジニアへ そして起業家に
─まず、御社の事業概要について教えてください。
当社は創業2年の会社で、現在は大きく2つの事業を展開しています。1つ目は、コンクリートのモービル車開発です。これは現場でコンクリートを練って打設(打ち固める作業)できる移動式のミキサー車で、特殊な混練システムを採用しています。2つ目は、冷凍設備や産業機械のメンテナンス事業です。
─安田様のご経歴について教えてください。
小学生の頃から飛行機が大好きで、百科事典がボロボロになるまで読んでいました。ILS(計器着陸装置)の仕組みを小学生で理解していたくらいです(笑)。厚木基地の近くで育ったこともあり、戦闘機や対潜哨戒機(たいせんしょうかいき)の離発着を見るのが日常で、パイロットになることが夢でした。
航空専門学校に進学して航空機を作る側の道に進みました。川崎重工業に就職し、約20年間、航空機のエンジンや機体整備に携わってきました。体調を崩して退社した後、いくつかの会社を経て、2023年6月に福井でYDKメカトロニクスを創業しました。
航空技術を建設現場へ 特許技術でモービル車を独自開発
─コンクリートのモービル車開発について詳しく教えてください。
最大の特徴は「同軸反転式」の混練システムで、今年(2025年)特許を取得した技術です!同じ軸で反対方向に回転する仕組みで、片側だけ回転するミキサーはありますが、両方を回すシステムは日本にはありません。だからこそ特許が取れたんです。
この技術の原型の同軸反転システムは、ロシアが空気力学と流体力学に対して使ってきた技術で、ヘリコプターや潜水艦に採用されています。西側諸国ではあまり採用していない技術ですね。同軸反転で推進力を生む技術を、攪拌力に転用したのが私の発想です。特許申請は通るだろうとは思っていたんですが、本当に取得できました(笑)。
このシステムを思いついたきっかけは、ある企業からのご依頼です。セメントと砂を混ぜたモルタルが、既存の片回しのミキサーではうまく混ざらないから、攪拌力のあるものが欲しいというニーズでした。同軸反転で攪拌すれば、今までより攪拌できるんじゃないかと提案して、試作品を作ったら見事によく混ざったんです。
JIS規格(国の定めた品質基準)に合致したコンクリートが作れるようになり、一応の目標は達成できました。まだいくつか問題はありますが、解決する予定です。

「福井発!ビジネスプランコンテスト2023」でモービル車がグランプリを獲得
─このモービル車の強みは何でしょうか?
なにより、小型で狭いところにも入っていけることです。3トン車両なので、普通免許でも運転できます。既存のモービル車も日本に存在しますが片軸式でどうしても混ざりがわるくなるんですね。当社が開発した新しい技術、同軸反転式は非常によく混ざりますので、攪拌力では当社のほうが上回っています。
もう1つの強みは、現場で練ることです。生コンは90分で固まって産業廃棄物になってしまいますが、モービル車なら現場で作ることができるので、その心配がありません。生コン工場で作って運ぶのではなく、現場で生コンを作る、これが当社のシステムです。
しかし、日本国内には全国に生コン工場があり、モービル車は競合してしまうんですね。土木事業に新たに参入することは生半可なことではありません。
─具体的にはどのような現場を想定されていますか?
そうですね。例えば、橋のジョイント交換では、必要なコンクリートはたったの2〜3m3 程です。しかも硬化時間が短い超速硬コンクリートというものを使うので、現場で少量の生コンを作れることに利点があると思います。
そのほか、自衛隊基地での滑走路補修や、災害時の緊急コンクリート製造など、狭い場所での施工です。
大きな現場は生コン業者にお任せして、私たちは少量の特殊なコンクリートが必要な現場を狙います。こういったニッチな市場で活躍できると思っています。
─海外展開も視野に入れているそうですね。
はい。実は、中小企業基盤整備機構北陸本部の方に相談したら、「日本で戦うのは厳しいから、海外戦略をしなさい」ときっぱり言われました。狙いはインドですね。建設ラッシュがまだまだ続くと思うので、全体のシェアを取れなくても、ちょっと入り込めればその”ちょっと”が大きいですから。
同軸反転を使った混練システムのモービル車は海外にもないので、国内で1〜2台の実績を作れたら、すぐ海外に挑戦します。

同軸反転で攪拌する技術を確立。特許を取得した。
Big Advanceで2社とマッチング メンテナンス事業を確立
─起業当初は苦しい時期もあったそうですね。
2023年6月に創業しましたが、周りの需要だけでは仕事がなくて、一番厳しかったのは今年(2025年)の4月、5月です。まずいなと思っていた時に、金融機関の方からBig Advanceを紹介していただいたんです。
商談依頼のメールを送り、すぐに2社からお返事をいただいて、取引が始まりました。
─産業用冷凍機などを手掛ける大手産業機械メーカーとお取引されていますよね?
はい、メーカーの北陸営業所の所長さんとお会いしまして、最初は電気系のトラブルシューティングを依頼されましたが、2回目に呼ばれた時に点検作業やオーバーホールを手伝ってほしいと言われました。オーバーホールというのは、分解して洗浄するだけでなく、摩耗している部品を新品に交換する作業です。
点検やオーバーホールは、漁港にある製氷施設の製氷機のコンプレッサーや、大手乳製品メーカー様、物流会社様に納入されている冷凍施設です。ありがたいことに、レギュラーの1人として呼んでいただいています。
─もう一社は愛媛の企業ですよね?
はい、自動包装システム機械のメーカーさんです。ポリオートクローザーという、段ボールなどのケースに充填されたポリ袋の口を閉じる機械のメンテナンスを依頼されました。品物が入っているポリ袋の口を熱線でふたをする機械なんですが、結構大掛かりなんですよ。
まずは研修ということで、先方の職人さんと2人、3週間で図面だけでポリオートクローザーを組み上げました。初めてのものでしたが、なんとか形にできました。ご満足いただけたようで、継続取引になりまして、次回は松山市で1カ月かけて同じ機械の組立をさせていただくことになっています。
─Big Advanceでマッチングをはじめられて、売上はいかがでしたか?
2社合わせて、4カ月で150万円以上の売上になりました。両社ともに継続的な取引が見込まれるので、よほどの失敗をしない限りは大丈夫じゃないかと思っています。
実は、こちらから提案している案件もあるんです。
福井の大手食品メーカーさんなんですが、卵殻粉砕機を提案しているんです。同軸反転の技術を攪拌ではなく、粉砕に利用できるのではないかと思っているんですね。この案件が実際に動けば、良い売上になります。
─Big Advanceが良い転機になったということでしょうか。
まさに窮地を救っていただきました。ピンチの時に金融機関様がBig Advanceを紹介してくださって、すぐに成約につながりました。人生、何があるか分からないものですね。
新しい現場が学びの場 技術を吸収する楽しさ
─メンテナンス業界では技術者不足が深刻だと聞きます。
はい、非常に深刻です。現場の仕事は学歴ではなく、瞬時の判断力と経験が必要なんです。例えば、アンモニアガスが漏れた時、1秒以内に危険を察知して逃げなければ命に関わります。レンチの持ち方から異常の察知まで、高度な技術が求められます。
日本は職人の技を低く見てきましたが、実際には非常に重要な技能です。今後、こうした技術者はさらに不足していくでしょう。
─そうした中で、安田様が重宝されているのは川崎重工業での経験があるからでしょうか。
それもありますね。航空機整備でいろんな機械に触れてきたので、基礎的な技術は身についています。でも、現場では経験だけではなく、新しいことを学び続ける姿勢も大切だと思います。
「川崎重工業で習ったジェットエンジンの圧縮の仕方とちょっと違うな」とか「エンコーダーを組み込んでこうするのか」とか、一つひとつの現場で学びがあるんです。実は、仕事自体がすごく楽しいんです。1時間近く早く着いてしまって、ワクワクしながら準備しています(笑)。移動するのもしんどい仕事だと思われがちですが、全然苦になりません。
独立して気づいた喜び 人とのつながりが何より楽しい
─これまでの人生の中で、一番印象に残った出会いを教えてください。
機械修理.comという会社の代表との出会いですね。モービル車だけでは難しいと考えて、整備などの仕事を探していた時にネットで知り合った業者さんです。公園の遊具整備や、農業設備の点検など、全く違う分野の仕事をご紹介いただきました。
山梨県の企業で、私の母校も山梨なので、そんなご縁で代表の方と意気投合しました。ご家族で福井に来てくださったのでご案内したり、私が山梨に行って家に泊まらせていただいたりと、交流が続いています。そちらの社員の方とバイクツーリングもしました。新たに何か一緒にやってみようという話もしています。
独立してからの方が、人とのつながりが楽しいです。
もちろん、サラリーマンより大変な面もありますよ。お金のこと、営業のこと、いろんなことが重くのしかかります。でも、人とのつながりの楽しさは、経営者になってから何倍にも広がりました。
いろんな人と新しい挑戦ができる、それが、今を頑張れる理由です。

音楽が好きで作曲もこなす。自身で設計した真空管アンプ。
技術で世界へ、音楽で恩返し、広がる未来への挑戦
─今後の展望について教えてください。
まず、モービル車を販売して実績を作り、それを元に海外に輸出するという展望があります。
メンテナンス事業の方も、「メンバーを増やせれば、オーバーホールを委託できる」とお声がけいただいています。オーバーホールは単価が良いので社員を雇って軌道に乗せて、雇用を生み出せる会社になりたいですね。
モービル車事業とメンテナンス事業の2つが同時にできればいいなと考えています。
─安田様はトランペット奏者としても活動されていますが、音楽活動の展望もありますか?
9歳からトランペットを始めて、音大を考えたほどです。川崎重工業を辞めてから、本格的に再開して、YouTubeに載せたことがきっかけでドイツでの演奏も実現したんですよ。
会社が大きくなったら、ピアニストをお呼びしてトランペットを交えたコンサートができればいいなと思っています。もっと事業がうまくいけば、ドイツでお世話になった人たちに恩返しがしたいです。ドイツの古い教会を修復している仲間がいるので、修復のためのチャリティーコンサートができれば最高ですね。
モービル車の海外展開、メンテナンス事業の拡大、そして音楽活動。技術も音楽も大好きなんです。やりたいことは尽きません。だからこそ、一つひとつ、実現に向けて進んでいきます。

<会社情報>
| YDKメカトロニクス株式会社 | |
|---|---|
| 所在地 | 福井県福井市稲多新町2-7 |
| 設立 | 2023年6月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |








