2025年05月22日

沖縄の金目鯛を世界へ
水揚げから小売まで〜進化する丸新水産の今

沖縄で金目鯛を専門に、調達から卸売まで一貫して行っている株式会社丸新水産。コロナ禍を機に会社を立ち上げ家族で経営を始めました。圧倒的な鮮度保持技術で取引先を開拓し、試行錯誤しながら事業に挑む代表の新垣氏に「かりゆしキンメ」の強みや新規事業への想いをお伺いしました。

株式会社丸新水産 代表取締役社長 新垣 昇司 様

沖縄の金目鯛ブランド「かりゆしキンメ」ができるまで

ー起業の背景を教えてください

当社は沖縄の金目鯛を調達から加工、卸売をしている会社です。創業は2021年2月16日、コロナ禍での立ち上げになりました。

父が漁師で、私も父と一緒に漁に出ていました。その後一度漁師を離れたんですが、なんとなく自分たちで金目鯛を売れないだろうか、飲食店もやってみたいなと思って過ごしているうちにコロナ禍が始まり、また父の元に戻りました。コロナ禍で飲食店の営業自粛に伴い魚を扱う需要が減り、販路の確保が難しくなってしまったこともあり東京の豊洲市場をはじめとする県外を中心に売っていましたが、なんとか自分たちで売れる方法はないかと考えて会社を設立することに決めました。

最初は鮮魚出荷を中心に行っていましたが、工場が完成してからは急速冷凍技術を用いて冷凍商品を作る仕事も始めました。飲食店でもストックできてフードロス削減にもなりますし、鮮魚を仕入れてお客さんが来ないという状況でも、鱗内蔵処理をして真空凍結した商品なら使いたい時に使えます。

次に金目鯛に名前をつけようと考えました。県外に出す時もブランド名があると付加価値をつけられますし、ネーミングすることで名前を知ってもらえますよね。沖縄らしい「かりゆし」を取って「かりゆしキンメ®」という名前にしました。かりゆしは沖縄の方言で「めでたい」という意味で、僕たちの金目鯛を食べてくれる人たちに幸せが訪れますようにと気持ちを込めて、船長である父が名付けました。

鮮度を保つ技術が強み 地元スーパーと取引開始

ー地域有数のスーパーとお取引を開始されたとお聞きしましたが、御社の商品の強みは何ですか?

かりゆしキンメは釣ってくるところから、加工してお客様に届くまでの圧倒的な鮮度保持が強みです。釣り上げる時は網を使わず、一本釣りで釣り上げます。6本の竿で深海600メートルから素早く釣り上げます。竿で釣り上げた魚から針を外したら、氷と海水でできた冷水の中に入れます。それを10分後くらいに船の魚槽に入れていきます。零度から1℃の海水を保てるシークーラー(漁船用海水冷却装置)の水の中にウルトラファインバブル(直径1μm未満の微細な気泡)状態の窒素ガスを入れて混ぜることで、魚の酸化や好気性細菌(酸素のあるところで増える細菌)の増殖を抑え、腐敗を遅らせるという技術を使っています。

こうすると本当に鮮度が良い状態が保てるので、他の産地よりも4日くらいは長く保てると思います。鮮度が良いので、次の日もその次の日も売れますし、海外出荷で2日後に届いても安心できるところも評価いただいています。普通だと水揚げしてから市場に並ぶまで少し時間が経つと思うんですが、僕たちは水揚げしたらそのままトラックに詰めて、工場まで運びそこで選別し出荷用と加工用と分けて、とにかく早く処理することを一番のアピールポイントにしています。

地元スーパーとは沖縄銀行様からの紹介で、Big Advanceを通して取引に至りました。鮮魚出荷の中だと取引全体の4割ほどを占める割合になっていて、重要なお取引先です。地元スーパーからは水揚げの時に◯ケース分欲しい、と注文いただけるので安定した供給ができています。今後はあまり在庫を抱えないような商売を目指したいと思っているので、決まった量を定期的に取引できる先が増えると良いなと思っています。

「お寿司の移動販売」が好評

ーここ(工場)でお寿司の販売をやっているのをインスタグラムで見かけました。他でも販売されていますか?

実は今、企業様や福祉施設を中心にお寿司やお刺身、冷凍ものの移動販売をやっています。初めは社会福祉協議会からの依頼があって、公民館に集まるお年寄りの方々向けに刺身を売りにきて欲しいと言われたんですね。最初は良かったんですが、1年くらいやっていくうちにだんだんと売れなくなってしまって。一度活動はストップしたんですが、これから小売に力を入れたかったこともあり、再度移動販売をやってみることにしました。

今はインスタグラムやラインを使って「(工場で)お寿司を販売しています」と配信をしていますが、平日だとお客様が仕事でなかなか買いに来られなくて、休日は僕たちの作業の都合で難しいんですよね。沖縄県にお住まいの方にかりゆしキンメの良さをアピールするためにも、直接お客様とお話しができる販売体制を作りました。伺ってもいいですか?とあちこちに電話して、今は25箇所くらいの企業様に移動販売で伺っています。

コロナ禍が家族経営のきっかけに。今後の展望は?

ー会社はご家族で経営されていると伺いましたが、みんなで仕事をしようと思って始まったんですか?

いえ、違います(笑)。もともと姉は病院の事務員で、兄は漁師でした(現在も)。僕は漁業をやったり建築をやったり、いろんな仕事をしました。妹も色々な仕事をしていましたが、コロナ禍で家族が集まるようになりましたね。会社を立ち上げる時は、父が会社を作ろう、金目鯛を売ろう、と号令をかけ、姉も色んな想像を膨らませながら参加して、兄も独立していつかもう一隻船を増やしたいという目標を持っています。それぞれ違う目標を持ちながらもみんなでうまくやっています。

ー今後の展望を教えてください

今までは加工した商品の卸先を見つけて営業して売る、というところに力を使っていましたが、今後は小売に力を入れたいです。これからは自分たちで釣ってきたものを、自分たちで食べられる状態にして出していこうと思っています。お寿司販売とか、金目鯛のダシを使った鯛めしとか。将来は沖縄で金目鯛専門の飲食店をやりたいです。

もっと「かりゆしキンメ」の質をあげる努力もしていきたいです。これまで県外を中心に出荷していましたが、県内で地産地消を促進したいですし、海外への取引も増やしていきたいという目標もあります。沖縄から県外、さらに海外へ、どんどん広めていきたいですね。

<会社情報>

株式会社丸新水産
所在地 沖縄県糸満市西崎町4丁目16-3
設立 2016年2月
URL

https://r.goope.jp/marushinsuisan/

※情報と肩書は取材当時のもの
※一部画像は丸新水産様提供
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