2026年10月13日

「幸せの種」をまく本づくり
リーブルが自費出版で紡ぐ社会貢献

高知県高知市に拠点を構える株式会社リーブルは、印刷業から自費出版、WEB制作へと事業の幅を広げてきました。「幸せの種をまく」という社是のもと、著者一人ひとりの想いに寄り添う誠実な本づくりを追求。高精細な印刷技術と企画・編集・デザインから印刷・製本・流通までを自社で完結させる一貫体制を強みに、絵本や写真集などのグラフィック系出版をはじめ、全国から多様な出版ニーズを獲得しています。
代表取締役の坂本圭一朗氏は、社員全員で企業価値を明文化した「リーブルDNA」を制作し、社員の自発的な挑戦を後押しする風土を育むなど、組織作りにも注力。苦難の時期を経て、誠実さという行動指針や自費出版で目指したい社会貢献という使命に辿り着いた坂本氏に、これまでの歩みとこれからの展望についてお話を伺いました。

株式会社リーブル 代表取締役 坂本 圭一朗 様

印刷・自費出版・WEB制作。内製化で切り拓いた多角化の道

─ まず、現在の事業内容と、その成り立ちについて教えてください。

当社は、元々は高知県軽印刷株式会社という社名でスタートした印刷会社です。現在も印刷の仕事は続けていますが、14〜15年ほど前から印刷業界全体が価格競争などで厳しくなる中、新しい取り組みを模索し始めました。

ネット印刷などが台頭してくる中で、本が好きだった前社長が「自費出版の仕事をネットで全国から受注できないか」と、取り組み始めたのが約15年前のことです。そこから多くの苦労もありましたが、少しずつ全国から出版の仕事を受注できるようになっていきました。また、コロナ禍で印刷の仕事が激減した際に、以前から裏メニュー的に受けていたホームページ制作などを、表の事業としてスタートさせました。当社が自前のサイトで自費出版を受注していることを知るお客様から、ホームページの制作を依頼いただいこともきっかけの一つです。

現在の事業の割合は、印刷が4割、出版が4割、そしてデザインやWEB・動画撮影などの事業が2割という構成に変化しています。

─ 事業内容を広げるにあたって、専門の人材も採用されたのでしょうか? 

いえ、外部から新しい人材を入れたわけではありません。今いる社員たちが兼任というか、少しずつスキルを身につけて対応してきました。デザインは元々できましたが、当初、コーディングなどは外部の制作会社に依頼していました。しかし、「自分たちで更新や改善ができた方がいい」と、勉強会を開いていただいて、今では社員がコーディングから通販カートの実装まで行えるようになりました。こうした内製化の取り組みが、事業の幅を広げる大きな力になっています。

絵本や写真集で際立つ印刷技術と、制作の一貫体制が強み

 ─多くの出版社や印刷会社がある中で、御社の強みはどこにあるとお考えですか?

自費出版を手がける会社は印刷会社を母体とするところが多いですが、当社は特に絵本や写真集といった「グラフィック系」の出版に強みを持っています。印刷技術が評価され、絵本『ひかるもの』をはじめ複数作品が、日本グラフィックサービス工業会主催の「ジャグラ作品展」で最高賞をいただきました。当社の印刷は、網点が細かいハイビジョンのような印刷技術に加え、色の幅が広い特殊なインキを使用しているため、通常の印刷と比べ発色が非常に良いんです。

またホームページも、文章主体の書籍コンテンツと、絵本や写真集主体のグラフィックコンテンツという、2つのページを設けるような形になりました。当初意図してはいなかったのですが、それが結果的に良かったのかもしれません。自費出版といえば自分史や闘病記といったものが主流で、グラフィック系に特化した自費出版を打ち出しているサイトは意外と少なく、需要をしっかりと掴むことができたように思います。

そして、企画からデザイン、印刷、製本、流通までを社内で一貫して行える体制も大きな強みです。絵本にはイラストも描ける担当者が、写真集には元印刷オペレーターの担当者が対応しています。そのため、文章のアドバイスから印刷の専門的な部分まで、ジャンルやニーズに対して細やかに伴走できる体制が整っています。

挫折の20代を経て。顧客と誠実に向き合う仕事観の確立

─ リーブルに入社される前はどのようなご経歴だったのでしょうか?

私は熊本県の天草市出身で、大学進学を機に関西へ出ました。いわゆる就職氷河期と呼ばれる時代で、不採用が続きだんだんと諦めモードになり、資格試験の勉強を始めてみましたが、それも長続きしませんでした。20代の頃は競馬場で警備のアルバイトをしながら、平日は家に引きこもるような生活。

先の見えない、悶々とした日々を送っていましたが、その後、関西の個別指導塾に就職し、講師としての仕事を始めました。28歳の頃、一人娘だった妻の実家に不幸があり、「高知に帰りたい」という妻を支えたいという思いから、一緒に高知県へ移住することを決めました。

高知でも塾講師として働き始めたのですが、そこでの3年間は自分にとって本当に厳しい「地獄の3年間」でした。塾長は情熱に溢れる素晴らしい教育者で、勉強を教えるだけでなく、子どもたちがしっかり社会で羽ばたけるように指導していくような方でした。私もそうなりたいと願いましたが、30年間で染みついた「すぐ笑ってごまかす」「分からないことを分からないと言えない」などの悪い癖をすべて見抜かれ指摘されました。生徒は教師の鏡と言いますが、生徒を通して自分の弱いところや悪いところを見せられているような気がして、変われない自分へのもどかしさから精神的に追い詰められていきました。最終的には、「君の良さが出せないなら、別の仕事の方が向いているのではないか」と諭され、その塾を辞めることになりました。

─ そこから、どのようにしてリーブルへ入社されたのでしょうか?

妻からは「あまり人と話さない仕事がいいのでは」と心配されましたが、私は人と接すること自体は好きでした。それに、塾講師として学んだことを次の職場に生かすことが、せめてもの恩返しになると思ったのです。ずっと流されて生きてきて、次こそは自分を変えたいと思い、あえて人と接する印刷会社の営業職を選びました。当時33歳でした。

─ 入社後、ご自身の変化を感じたエピソードはありますか?

入社当時の社内は、社員が前社長に対して「社長、どうしたらいいですか?」と指示を仰ぐような雰囲気がありました。前社長自身もその状況を変え、社員に自主的に動いてほしいと考えていたのだと思います。私に毎回「君はどうしたらいいと思う?」「それはなぜ?」と聞き返してくるのです。最初は「早く答えを教えてくれよ」と思うこともありましたが、自分で考え、自分なりの結論を出せるように導いてくれているのだと気づきました。次第に、「こうしようと思うのですが、どう思いますか?」と自分の意見を提案できるようになりました。

また、前社長の営業姿勢にも大きな影響を受けました。お客様がチラシを作りたいと来店されても、じっくり話を聞いた上で「チラシよりもハガキの方がいいんじゃないか」と提案することも、時には「今はやめておいた方がいい」と仕事を断ることもありました。目先の数字ではなく、お客様にとって何が一番良いかを真剣に考える。それが本当の誠実さであり、営業の本来の仕事なのだと学びました。

それからは、私もその誠実さに徹しようと心に決め、お客様から深いお話をしていただけるような信頼関係が築けるようになっていきました。

理念を全員で紡ぎ、自発的に動く。対話が生んだ組織の力

─ 2020年に代表取締役に就任されてから、組織風土に変化はありましたか?

方針を大きく変えたわけではありませんが、私が社長になる約3年前、定年退職を控えた社員も含めた全社員で「残してほしいリーブルの良いところ」を話し合いました。そこでまとめたのが「リーブルDNA」です。「社員それぞれの個性・意思・発言を尊重する」「雑談もできるアットホームな雰囲気を大事にする」といった、自分たちが大切にしたい価値観を18か条で明文化しました。

社内では、以前から社員一人ひとりの意見を付箋に書きだし可視化して話し合う場を設けてきました。自分の意見で会社が少しずつ変わっていく実感を社員が持てるようになったことで、自発的な行動が促される風土が根付いてきたと思っています。私が細かく指示を出さなくても、社員の方から「クリエイティブ事業部を立ち上げたい」といったアイデアを出してくれたり、業務改善の提案をしてくれたりするようになりました。

また、印刷工程は非常に多岐にわたりますが、当社では「一人部署」を作らず、業務の属人化を解消する取り組みを進めています。誰かが休んでもカバーできる体制を整え、チャットツールを活用して各自の予定や進捗を共有し合っています。文字を1つ間違えれば刷り直しになる仕事だからこそ、伝言ゲームでのミスを防ぐために毎朝顔を合わせて打ち合わせを行い、丁寧なコミュニケーションを心がけています。

社員全員で大切にしている「リーブルDNA」

Big Advanceを活用し業界ネットワークを広げていく

─ Big Advanceを導入されていますが、どのように活用されていますか?

金融機関からの紹介がきっかけで導入しました。当社では、シール印刷会社様と連絡を取るなど、協力会社探しに活用しています。自社で持っていない設備や技術を持つ企業様と連携できるプラットフォームがあることは大変ありがたいです。

当社は一貫生産が可能ではありますが、部数が多いものや、PPフィルム加工、ハードカバー製本、箔押しなど、特殊な工程が発生する場合は外部のパートナー企業様に協力をお願いしています。印刷業界は互いに助け合う文化がありますので、今後もBig Advanceのビジネスマッチングを通じて、お互いの強みを活かせる新たな企業様との繋がりが広がればと期待しています。

著者と読者に寄り添う一冊を。自費出版で実現する社会貢献

─ これまで手がけられてきた中で、特に印象に残っている作品はありますか?

どれも思い入れがありますが、精神科薬の薬剤師である著者が、発達障害を持つ青年の破天荒な記録を綴った『ギザギザハートのアスペルガー』は特に印象深いです。青年が親に対して持つ憎しみや虐待の記憶など、とてもヘビーな内容だったのですが、これだけでは本として読者に届きにくいと感じました。そこで著者の方に「この頃の彼はこんな状況だった」という専門家としての解説を随所に加筆していただくよう提案しました。

タイトルも難航しました。最初は「苦しみの果てに」といった重い案ばかり考えていたのですが、ふと「理解してとは言わないけれど」と書き留めた時に、「これってチェッカーズの歌みたいだな」とひらめいたんです。「わかってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか」という歌詞が、まさに青年の気持ちを代弁していると感じ、「ギザギザハートのアスペルガー」というポップなタイトルが誕生しました。装丁も、高知出身の有名なフィギュア作家であるデハラユキノリさんにオリジナルフィギュアの制作を依頼し、目を引く表紙が完成しました。著者の方と編集者、デザイナーがキャッチボールをしながら、1+1が3にも4にもなっていく過程こそが、この仕事の面白さだと実感しています。

─ 最後に、これからの御社が目指す未来についてお聞かせください。

今後の課題としては、年3%の継続的な賃金アップや、若手社員の採用、老朽化した設備の更新など、挙げだしたらキリがないです。給与を増やすための利益計画も立てているところです。最近はWEB広告のAI最適化なども手応えを感じているので、より当社に興味を持ってくださるような方にサービスを届けて、受注につなげていきたいですね。

そして、自費出版という事業はとても社会貢献度の高い仕事だと考えています。例えば、累計7万部を突破した『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』という本は、不登校に悩む親御さんだけでなく「子育て」のバイブルとなっています。『おなかのボタン』という絵本は、胃ろうをつけているお子さんをモデルにしたお話です。こうして、生きづらさを抱えた方やマイノリティの方の声を、本という形にして世の中に発信することで、少しでも理解の輪を広げられることは、とても意義のあることだと思うんですね。本を通して「誰もが生きやすい世の中」になるよう発信していくことは私たちの誇りであり、使命だと感じています。これからも「幸せの種をまく」という社是を胸に、お客様に寄り添い、感動やぬくもりをここ高知から全国に届けていきたいです。

<会社情報>

株式会社リーブル
所在地 高知県高知市神田2126-1
設立 1964年3月
URL

https://www.livre.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの
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