「オンリーワン」を貫き、新ビジネスへ
ひな人形の製造販売・ひなせい3代目が挑む
カスタムペイントの世界
静岡県静岡市でひな人形・五月人形の製造販売を手がける株式会社ひなせい。専務取締役の宮原佑斗氏は、屏風や前飾りの御道具を手がける表具師・道具師として家業を支える一方、終業後はハーレーダビッドソンのヘルメットにカスタムペイントを施す職人でもあります。趣味として始めたペイントはインスタグラムでの発信をきっかけに依頼が広がり、Big Advanceで作成したウェブサイトからも問い合わせが舞い込むようになりました。日本の伝統工芸とアメリカンカルチャー、その異色の組み合わせから生まれる「オンリーワン」へのこだわりを伺いました。
株式会社ひなせい 専務取締役 宮原 佑斗 様
日本の伝統技、屏風と御道具づくりの道
─ まずは事業の概要を教えてください。
ひな人形と五月人形の製造、販売、卸が当社のメイン業務です。その中でも製造がメインなので、全国のひな人形・五月人形を取り扱う専門店様から受注をいただいて、1年かけて製造し、卸していくという流れが主な業務内容になります。製造に関しては表具師・道具師として、御道具づくりを担当しています。また、小売に関しては現代的なものから古典的なものまで幅広いラインナップで私自身も接客する販売員として店頭に立っております。
─ 表具師・道具師とは、具体的にはどのような仕事ですか?
ひな人形でいうと「表具師」は屏風を製作、「道具師」はおひなさまの前に置く御道、菱餅や、お花が入った三宝などの製作を担当します。当社は担当ごとに分業制になっていて、一人が全部作れるわけではないんです。飾り台専門の職人、お人形のボディと顔を作る人形師など、それぞれ別の職人がいます。
私は結婚して子どもができたことがきっかけで、家業に興味を持つようになりました。それまでは神奈川県で2年ほど会社員をしていましたが、父に頼んで入社し、今年で9年目になります。当時から分業の体制があったので、人手が足りていなかった部分を私が担う形で始めました。一通りの工程はやってきたので今でも全部できますが、現在は屏風と御道具がメインです。細かい作業が昔から好きなので、性格的にも向いているのかなと感じています。


繊細な技術が詰め込まれている節句人形
バイクとの出会いが開いた、カスタムペイントの世界
─ ヘルメットのカスタムペイントを始められたきっかけを教えてください。
もともとバイクが好きで、21歳くらいから乗っていました。きっかけは幼い頃からの憧れです。親が運転する車の助手席から、バイパスを走るハーレー乗りの方々を見て「いつか自分も」と思っていました。アメリカンカルチャーが好きで、自分の持っているヘルメットにファイヤーの柄を描いてみたのが最初です。それをバイク仲間に見せたら「これはビジネスになるよ」と言われて、2022年から本格的に始めました。本業を終えた夕方から夜、1日2〜3時間ほど作業する日々ですが、大変だと思ったことはなくて、知らない塗装のやり方を覚えるのが楽しくて、まったく苦になりませんでしたね。
塗装の世界には板金塗装や外壁塗装などいろいろな分野がありますが、柄を描き出すカスタムペイントをやっているところは本当に数少ないんです。日本全国を見ても数えるほどしかないと思います。デザインは紙に描くことはほとんどなく、頭の中で考えて、そのままヘルメット本体に下描きをしてしまうことが多いです。ひな人形の道具づくりで身についた細かい作業への感覚が、活きているのかもしれません。
─ ビジネスにつながっていった経緯は?
転機になったのは、インスタグラムで発信していたところに、あるヘルメット業者の方からDMで「うちのヘルメットを塗ってくれないか」と声をかけていただいたことです。2年ほど前、10個、5個という単位でヘルメットが送られてきて「好きなように塗ってみて」と言われて、そこで一気に腕を上げることができました。1つ塗ったら写真を撮って発信する、というのを繰り返すうちに、また別のところから依頼が来るようになっていったんです。
デザインの参考にしているのは、インスタグラムやピンタレストです。師匠はいませんが、世界中のデザインの情報に日常的に触れて刺激を受けながら、色味などを参考にしています。完成までは1週間から10日ほど。もっと早くできることもありますが、こだわると細かい調整に時間がかかります。汚れたように見せるエイジングペイントなど、古いバイクに乗る方に好まれるテイストが特に人気がありますね。

宇宙をイメージしたというヘルメットを手にして
Big Advanceからの問い合わせで気づいた新たな可能性
─ Big Advanceのホームページはどのような経緯で作られたのですか?
もともとはBig Advanceで「ひなせいの五月人形」のページを作ろうと思っていたのですが、父や金融機関の方から「ひなせいのホームページはもうあるから、ヘルメットの方で作ってみたら」と勧められて、ヘルメットカスタムペイントのサイトとして作ることにしたんです。そうしたら、思いがけず問い合わせがあって、本当に驚きました。
スノーボードに塗装できるか、というお見積もりの相談が2、3件、それから野球チームのヘルメットをチームカラーで塗ってほしいという依頼もありました。背番号を入れて、チームごとに色を変えるなんて発想はまったく思いつかなかったので、ホームページからこういう問い合わせが来るとは思っていませんでした。
インスタグラムを見ている層は若い方が多いのですが、ホームページは40〜50代の方が多い印象で、会社概要も表示されるので、より安心して相談してもらえるのかもしれません。
本業とのバランスを大切に、無理なくできるところまで
─ 本業とカスタムペイントのバランスについては?
デザインから撮影、ホームページまで、ヘルメットに関することはすべて自分一人で行っていますが、カスタムペイントで独立することは考えていません。ひなせいは祖父が興した会社で、私は3代目。祖父と父が築いてきたものを大事にしていきたいと思っています。だからこそ、本業が忙しくなると、夜の作業ができない日もやはり出てきます。無理なくやれるところまでやっていきたい、というのが今の気持ちですね。
他のペインターに仕事を任せることは考えていません。ファイヤーの形ひとつとっても、こだわりがありますし、人によって出来上がりが全然違うんですよね。バイクへの興味がないと、この感覚はなかなか理解してもらえないと思います。
人生の転機は、バイクとの出会い
─ 宮原さんにとって一番の転機になった出会いを教えてください。
やはりバイクとの出会いが大きな転機ですね。最初は両親に大反対されたんです。心配から「自分たちが死んでからにしてくれ」と言われるほどで。それでも好きなことをやりたくて、勝手に免許を取りに行って、勝手にバイクを買いました。
好きなことを突き詰めていくと、後からお金がついてくることもあるのかなと、最近になって思うようになりました。もちろん一本道で簡単にいくわけではありませんが、バイクという存在に出会って、塗装の仕事に巡り合い、それが家業ともつながっていき……。好きなものが自然と良い方向へつながっていくことに自分でも驚いています。当時はまさかこうなるとは思っていませんでしたから。

ひとつひとつ想いを込めて作ったヘルメット
海外への発信と、一点物への挑戦
─ 最後に、今後の展望を教えてください。
ひな人形・五月人形については、オンライン販売がまだ弱いので、量産品ではなく一点物のような高単価の商品づくりを強化していきたいと考えています。
ヘルメットのカスタムペイントについては、日本国内だけでなく海外の方にも手に取ってもらえるように発信を強めていきたいです。今はBASEで販売していますが、海外発送にも対応して、単価も上げていきたいと思っています。国内では十万円以上の商品はなかなか売れにくいですが、海外であれば熱心なファンの方がいるという話も聞きますので。そのためにも、まだ知らない塗装技術を、時間をかけて見つけて、独自の技術を発信していきたいですね。
日本の伝統工芸を海外に持っていくのは簡単なことではありませんが、ヘルメットであれば、もっと海外に伝えていけるのではないかと思っています。ひな人形は国内でできる限り頑張りながら、ヘルメットでは海外に向けて挑戦していく。その両輪で、誰にもできない「和と洋のミックス」を発信していきたいと思います。


日本文化とアメリカンカルチャーが融合する、宮原氏ならではのオンリーワンのデザインだ
<会社情報>
| 株式会社ひなせい | |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県静岡市葵区新伝馬1-8-9 |
| 設立 | 1972年 |
| URL | |


