二刀流のプラスチック加工
丸三化学工業が掲げる「働く楽しさ」
岡山県倉敷市に拠点を構え、地域の伝統産業を支えるプラスチック加工メーカーの丸三化学工業。畳縁(たたみべり)の製造に不可欠な糸「モノフィラメント」と、物流現場で広く用いられる梱包用の「PPバンド」という、用途も市場も異なる二つの製品を製造しています。2018年に代表取締役へ就任した岡隆平氏は、仕事と私生活を地続きで捉える「ワークイズライフ」を重視し、社内の経営理念を一新。「働く楽しさ」の本質や、目の前の仕事の充実に向けた決断の重要性を従業員へと発信しています。変わらぬ伝統を守りながらも、新たな販路開拓に挑む同社の歩みと展望をお聞きしました。
丸三化学工業株式会社/代表取締役 岡 隆平 様
畳縁の糸と結束バンド、珍しい「二刀流」で歩む老舗
─ まず、御社の成り立ちと事業内容について詳しく教えてください。
当社は1950年に創業し、現在72期目を迎えるプラスチック加工メーカーです。PPバンドの製造と、倉敷の特産品でもある畳縁に使うモノフィラメントの製造の二つを柱としています。PPバンドとは、段ボールなど複数の荷物をひとまとめにするプラスチック製の結束バンドで、モノフィラメントは、単一の太い1本の繊維(単繊維)でできた強度の高い糸のことです。どちらもプラスチックを溶かして伸ばす「押出延伸」という技術を用いています。元々は糸の製造から始まり、その後PPバンドが加わりました。現在、この二つの事業が売上のちょうど半々を占めていますが、同一の会社でこの二事業を半分ずつ行っている企業はかなり珍しいと思います。PPバンドの方はお客様も移り変わっていきますが、糸の方は初代の祖父の頃からずっとお取引してくださっているお客様が多いです。
─ 長年プラスチック事業を続けておられますが大変だった時期もあるのではないでしょうか。
製造業を営む上で最も影響を受けるのは、為替の大幅な変動や国際情勢の悪化といった外部環境の要因です。過去の極端な円高期には、海外からの安価な輸入品が強くなってしまうので大変でしたね。直近では原油価格高騰にともなう出荷制限や、業界内での原料の奪い合いにも危機感を持っています。当社のような会社は、やはり原料が無いことには何もできないので、安定的な確保は非常に重要です。お金をいくら払っても物理的に原料が手に入らなければ工場を稼働できません。こればかりは他で補う手段がないため、常に情勢は気にしています。近年はプラスチックの汎用品の需要が下がってきていることもあり、使っていた樹脂がメーカー廃盤になってしまうこともあります。そういった場合は当社の今までのレシピを切り替えて対応していますが、やはり外的要因に左右されることが多い業態ですね。
「たのしく生きる」理念が示す、ワークイズライフの精神
─ 2018年に代表取締役に就任され、新しく始められたことや変えられた部分はありますか。
代表就任時に、会社の経営理念を一から作り直しました。新しい理念には「私たちは、たのしく生きる勇気を持って、考え、決断し、行動します」という従業員向けの行動姿勢を盛り込んでいます。私は大学卒業後、東京のオフィス家具メーカーで4年間営業職として勤務しました。そこでは前向きに働く方が多かったのですが、2009年に地元の倉敷に戻ると、働くこと自体に対して少し後ろ向きな空気が存在することに気づきました。人生において働く時間は大きな割合を占めますよね。それなのに、働いている時間がつまらない、楽しくないというのは、人生にとって良くないなと思うんです。ですので、私は仕事とプライベートを切り離す「ワークライフバランス」より、仕事も人生の一部として地続きで捉える「ワークイズライフ」の精神を大切にしています。楽しく生きるためには目の前の仕事の充実も不可欠だと考えています。まずはしっかり仕事をやり抜くと決める勇気を持つこと。その勇気があって初めて本当の意味で楽しい生活を手に入れられるのだという想いを、理念に込めています。
─ では地元に戻られたころは苦労されることも多かったのでしょうか。
戻ってきた当初は周囲と仕事へのスタンスが異なることに戸惑いました。先代社長の父も健在で、社長と従業員の間に挟まれ、慣れるまでは精神的につらい時期でした。どうしても社長と従業員は利益相反する部分もありますから。そこは、日々の仕事の中でのコミュニケーションで変えていくしかありませんでした。先代はオフィスに席を置いていましたが、私は普段の席を工場の中に設置しています。書類仕事を行う時だけオフィスにこもりますが、それ以外の時間はなるべく現場に滞在し、話しかけやすい環境を意図して作っています。
働く楽しさを背中で教えてくれた、熱く真っすぐな上司との出会い
─ 岡様のこれまでの人生の中で、印象に残る出会いのエピソードを教えてください。
真っ先に思い浮かぶのは、最初に就職した、オフィス家具メーカーの支店長だった方です。4年間しかご一緒できませんでしたが、その方の仕事に対するスピリットにとても影響を受けています。バリバリの営業マンで、人心掌握に長けた人で。「この人が言うんだったらやるしかねえかな」と思わせられる魅力のある方だったんです。私は、仕事人生が上手くいくか、仕事をポジティブに捉えられるかって、最初に出会う上司の影響が大きいと思うんですよね。私の場合は、その支店長をはじめ、課長も係長もみんな仕事熱心な人で、なんというか、真っすぐな人が多かったんです。なので「仕事に行きたくない」と思ったことがなくて。本当に運がよかったと思いますし、感謝しています。今でも、集まりがあると呼んでくださるので、万難を排して行くようにしています。
Big Advanceでは高確率で商談を実現できる
─ Big Advanceはどのようなきっかけで導入されたのでしょうか。
日頃から大変お世話になっている地元の金融機関の方からのご紹介でした。お付き合いでと思って導入したので、当初は仕組みがよくわかっておらず、ほとんど触っていませんでした。ただしばらく経った頃、金融機関の担当者の方から促されて、改めてログインしたところ、全国の参加企業数が大幅に増えていることに気づきました。
実際にマッチング依頼するようになり「これはめっちゃいい」と思いました。普段、自分たちで電話営業をかける時と比較して、商談まで進められる確率がとても高いんです。やはり、金融機関さんが間に入って取り次いでくださるので信頼性が担保されるしスムーズなんですよね。今ではとても効率の良い営業獲得ツールとして活用しています。
─ 実際にマッチングが成約した事例もあるようですね。
取引自体は始まっていないんですが、プラスチックの加工メーカー様と商談させていただきました。Big Advanceは「売りたい」というニーズを掲げる企業が多いため、当社からはあえて買いたいという発信をしてみました。当社はメーカーのほかに、資材の販売会社である「丸三包材有限会社」も経営しているため、仕入れと販売の双方に需要があります。このアプローチを試したところ、商談のきっかけになったので良かったです。

岡 隆平氏(左)と玉島信用金庫 山神氏(右)
「最後の一社になるまで」。やるべき仕事を続けるための模索
─ それでは最後に、今の課題やこれからの展望についてお聞かせください。
今、人材不足が深刻な状況で、製造業は本当に厳しい時代になってきました。最近の求人市場では給与よりも休日数を重視する方も多く、しっかりと休める環境を整えないと若い人は集まってくれません。
しかし、我々のようなプラスチック成形の仕事は、24時間365日稼働が基本です。一度機械を止めると再稼働時に大きな製造ロスが発生してしまい、採算が悪くなってしまうためです。そうなると、それでも働いてもらえるような会社にするか、夜勤体制で回さなくてもいい仕事をして人材を確保するか、なんですよね。
ただ、畳縁に使うモノフィラメントの事業は、当社が国内で大きなシェアを持っています。「この製造をやめるわけにはいかない、最後の一社になるまでやる」という気持ちでやっていて手放したくないんです。モノフィラメントの製造を続けていくために、新商品に取り組むのか、あるいは製造以外で収益の柱を作るのか、考えていかなければなりません。やるべき仕事を続けていくために、できる別の仕事を見つけていきたいです。
─ 御社は今20名いらっしゃるそうですが、人材確保への課題はありますか?
ありがたいことに、若い方にも働いていただけていて。20代と50代の方が多いんですよ。ただ、中間層がいないので後進の育成にはちょっと課題があります。一番長く勤めてくれている工場長に頑張ってもらうしかないかもしれません(笑)。当社は工場長がしっかり支えてくれていて、もし私が倒れたとしても多分会社はしばらく回るんですよ。私はAIを活用して営業したりワードプレスでホームページを作ったり。当社を発信することに時間を割くことができています。うまく役割分担ができていてとても恵まれているなと思っています。
─ 最後、少し話はそれてしまうのですが、婚活事業もされているのですね。
そうなんです(笑)。これは会社の事業ではなく、妻と一緒に個人事業主として運営している結婚相談業「俺婚」で、趣味の活動です。地元の倉敷に帰ってきて、改めて地域の歴史や文化を学ぶ中で、地域を発展させるためには人口減少が無視できない課題として気になるようになりました。そこで、 結婚を希望しているのになかなか踏み出せない方や、うまくいかないと悩んでいる方の一歩を後押ししたいと、始めました。現在は「おかやま結婚推進協会」の理事も務めています。行政とも連携していますし、YouTubeチャンネルを活用して認知も上げて、今年(2026年)すでにご成婚に繋げることができました。今後も結婚を希望される方のサポートを続けていきたいです。Big Advanceの福利厚生「FUKURI」にも出していいですか?(笑)。
<会社情報>
| 丸三化学工業株式会社 | |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県倉敷市中島1172-3 |
| 設立 | 1950年1月 |
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| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


