2026年04月16日

野菜の価値を最大化して届ける
「杉中園芸」が描く農業の勝ち筋
〜ユニークな取り組みをしている経営者たち〜

愛知県・矢作川沿い、水はけの良い砂地で野菜を育てる「杉中園芸」。代表の杉浦雄太氏は、代々続く農家の家に生まれました。高校生の頃、父の手伝いを通してお客さんの喜ぶ姿を間近に見たことが、農業の道を志す原点に。現在は独立し、里芋「天晴れ」をはじめ、野菜ソムリエサミットで金賞を受賞する野菜を複数手掛けています。

おいしい野菜をつくるための試行錯誤に妥協のない杉浦氏。持ち前の行動力でアップデートを積み重ねる野菜作りと、商品をしっかり売り利益を確保するビジネス視点の両方について話を伺いました。

杉中園芸 代表 杉浦 雄太 様

取材企業からの紹介で繋がった、ユニークな取り組みをしている経営者たちvol.1
以前取材した杉浦発条の杉浦様が、「この人たちの挑戦を知ってほしい」と紹介してくれた経営者たち。互いに刺激し合い、それぞれの分野で独自の価値を創造する姿をシリーズでお届けします。

杉浦発条・杉浦様より

水道管の改良に使うカスタムバネの製作を通じてご縁ができた杉中園芸さん。なんと言っても挑戦を恐れない方でフットワークも軽いんです。作物にも施設にも試行錯誤されていて、今回のバネも「改良した水道管に合う良いバネが欲しい」とのことで、各農家さんと連携をとって束ねられていました。

関わるすべての人へ「喜び」を
家業から独立し、夫婦二人三脚で挑む

─まず、杉浦様が農業の道を歩み始めたきっかけと、現在の活動に込めた想いについてお聞かせください。

僕の家は、祖父の代から続く農家です。父やその兄弟もみんな農業をやっていて、物心ついた時から土が身近にある環境で育ちました。幼いころは農家になろうとは思っていなかったのですが、高校生の頃、休日に父の仕事を手伝っていた時にお客さんが喜んでいて、それがなんだか「いいな」と思って始めました。

今も、僕たちが作った野菜で「喜び」を伝えたいという思いで取り組んでいます。喜びを供給して分かち合える、関わってくださるすべての方に喜んでいただきたいです。僕たちやお客さんだけではなく、例えばパートの方に対してもです。やはり農業は暑いし寒い。できるだけパートの方が働きやすいようにと考えています。

─現在は、お父様とは別に「杉中園芸」として独立して運営されているのですね。

当初は父や弟と一緒に働いていましたが、現在は独立し、完全に組織を分けて「杉中園芸」を運営しています。独立したきっかけの一つは、父との経営方針の違いでした。父は昔ながらの職人で、インターネットでの販売や発信に力を入れていきたいとは考えていませんでした。でも、僕はホームページを作ったりSNSで発信したりと、新しいことにも挑戦したかった。独立後は妻がSNSで日々の様子を発信してくれたりと、二人三脚で杉中園芸のこだわりや最新情報を届けています。

「この野菜がないと困る」状況を作る。価値を高めるための取り組み

─複数の商品で「野菜ソムリエサミット」金賞を受賞されていますね。

はい。里芋の「天晴れ」が2023・2024年の2年連続で金賞をいただきました。なめらかなねっとり感とほんのりとした甘みが特長の、自信作の一つです。当時調べた限りでは、金賞を獲得したことのある里芋はまだ無くて。それで挑戦してみました。ほかにも2024年にはトウモロコシの「味来」、2025年には人参の「エルザ」が金賞を受賞しています。「エルザ」は濃い味とフルーツのような甘さがあるので、人参が苦手という方にもぜひ食べてみていただきたいですね。

野菜ソムリエサミット」は自分たちの野菜に対して、野菜のプロから客観的な評価をいただける機会。色々な評価コメントもいただけるので、毎年出品することで一層の品質向上にも繋げています。

公式サイトより

─これまでの出会いで印象的だったことや、取り入れていることはありますか? 

経営者の勉強会で聞いた、鋳造業界の方の話はとても勉強になりました。以前その方は、取引先から商品をかなり買い叩かれてしまって。でも取引先にとっても自社の商品は無いと困るもののはずなので、「この価格でないとやりません」と強気で取引をされた、という経験談でした。独自の価値を確立されているからこそできることだと思います。

僕も、おいしい野菜を作れるよう力を注ぎ、いろいろな賞にも挑戦して付加価値をつけ、良い取引ができるようにしています。販売先に商品を送るときに、あえて大量に送ることがあるんです。「こんなに捌けません」と言われることもありますが、味の良さですぐリピーターのお客さんがついてくれて。そうすると先方から出荷量増加の要望をいただきます。「この野菜がないと困る」という状況を作ることで、価格を落とさず取引できています。

よりおいしく、よりB品を出さないように。プロの管理と探求心

─栽培におけるこだわりや、この地域ならではの特徴はありますか。

うちの農地は矢作川沿いの砂地で、水はけの良い土地です。そのため柔らかな土壌を保てて、野菜の根が伸びやすいんです。また、養分を含んだ川の水が土壌全体に行き渡るようになっています。

設備も整備されているので、蛇口をひねれば潤沢に水が使えます。元々あったこの設備を近年改良し、バネ製造会社の「杉浦発条」さんに良いバネを作っていただきました。北海道など、大地が広すぎる地域ではこういった整備を敷くのが難しく水不足に悩む年もありますが、その点で、ここは非常に恵まれています。

杉浦発条・杉浦さんの印象は?

僕から見た杉浦発条の杉浦さんは周囲を巻き込む力がとても強く、周りの人に頼り頼られを実践している方。それでいて、謙虚な姿勢なので誰からも信頼されていています。

もちろん環境だけではなく、天候に左右されないようにしっかり管理しB品を出さないことを大切にしています。農業の世界では「B品が出るのは当たり前」みたいな感覚もあるのかもしれませんが、やはり出さないことが一番です。B品が出ても、加工用で買い取ってくれるところはありますが、減らす方が利益は出ます。何より、B品を出さないことは自分が「上手くなった証拠」だと思っています。

また、よりおいしい野菜を作るために、製薬会社の方と一緒に「ぼかし肥料」(米ぬかや魚粉などの有機物を微生物の力で発酵させた自然由来の肥料)の試験をしたり、微量要素(作物体内での構成比率は少ないが生育には欠かせない重要な元素)のバランスを研究したりと、常にアップデートを繰り返しています。

勝ち筋と自由のある農業。機械化でさらなる規模拡大へ

─この地域は、若手の農家さんが非常に多いそうですね。

そうですね。僕のような40歳以下の若手が多く、このあたりは農地が空かないほどです。世間では「農業は後継者不足」とも言われますが、ここでは違って結構継いでいる人が多い。あまり大きい声では言えないですが、儲かっているからみんな継ぐんだと思います(笑)。それは多分、これまでここで築かれてきた農業が、しっかり利益の出るモデルとして確立されているから。「勝ち筋」をみんな分かっているんです。そしてサラリーマンとは違い、自分で自由にコントロールできる範囲が広い。そこが大きいのではないかと思います。

お互いの畑に行っては、「これがいいらしいよ」と情報交換したり教えあったりもしていて、良い環境だと思っています。

─最後に、今後の展望について教えてください。

今後は、さらに規模を拡大していきたいと考えています。近隣で新たな土地を借り、玉ねぎ栽培の強化に乗り出します。補助金申請も通ったので機械化できるようになりました。新たな土地では玉ねぎが今の三倍くらい作れるんです。そんなにやれるかどうかわかりませんが、挑戦してみたいと思います。

<会社情報>

杉中園芸
所在地 愛知県西尾市西小梛町2-22
設立 2023年1月1日
URL

https://suginaka-engei.com/

※情報と肩書は取材当時のもの
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