大分・トキハの商談活用術
100周年を見据える百貨店バイヤーが求めるものとは

創立90周年を迎え、100周年に向けた再構築を進める株式会社トキハ。大分県内で3店舗を展開する地域密着型百貨店として、体験型消費の強化と新しい商品・サービスの発掘に力を入れています。ストーリー性のある商品、独自性を持つサプライヤーとの出会いを、バイヤーとしての視点で見極めます。Big Advanceでは200件以上の商談依頼に対応、タイ企業との商談会参加など、時代の変化に対応した地域百貨店のあり方について、MD戦略部で店舗開発を担当する小村将太郎氏に詳しくお聞きしました。
株式会社トキハ MD戦略部 開発グループ スーパーバイザー 小村 将太郎 様
創立90周年、大分で3店舗を展開する地域密着型百貨店
─まず、御社の事業概要について教えてください。
当社は百貨店業として、大分県内で3店舗を運営しています。大分市中心部の駅前にある本店、郊外の稙田地区にあるショッピングセンター「わさだタウン」、そして観光地の別府市にある別府店です。
トキハは昭和10年の創立、今年(2025年)で創立90周年を迎えました。次の100周年に向けて店舗の再構築を行っている最中です。私たちはその最前線で、店舗開発を担当しています。
─小村様は入社何年目になりますか?
26年目ですね。新卒で入社して、子供雑貨、外商部、婦人雑貨、生活雑貨を経験してきました。その後、MD戦略部で全店の商品政策やシーズンプランの作成に携わり、現在はテナント誘致を含めた店舗開発を行っています。
変化する顧客ニーズに応える百貨店の挑戦

─時代の変化を感じることはありますか?
お客様の趣味嗜好も大きく動いていますし、販売チャネルも多様化しています。Big Advanceのような企業マッチングを通じて、私たちが今まで百貨店目線では見つけられなかった商品や、知らなかったお取引先との出会いを広げていこうとしています。お客様が欲しがっている時代に即応したものが本当はあるのに、見逃している。そういったものを探していければと思っています。
─トキハ様にあった方針で買い付けをしているとお聞きしましたが。
今、10年後のトキハがどうあるべきかを考えて再構築をしています。調べてみたら、ものすごい数の方々が店舗の前を歩いているんですが、5メートル先にある入り口に入ってきていないんです。
百貨店はハードルが高いと思われているかもしれませんが、ちょっと寄り道してほしい。ハードルを下げて一歩踏み込めるような店づくりをしていきたい。そこに向けて、こんな商品が足りない、こういうのがあるといいねというのを考えながら、フロアにマッチした商品を探しています。全体的なコンセプトの中で、お客様に届けたいという目線で見ています。
体験型消費で新たな顧客層を開拓
─体験型、コト消費の取り組みについて教えてください。
昨年の12月に子ども向けの室内プレイランドを導入しました。夏休み期間は来場者が600人を超える日もあり、手応えを感じています。
室内プレイランドでは保護者の入れ替えをOKにしているので、お父さんが見ている間にお母さんが買い物をして、バトンタッチしたあとはお父さんが買い物できる。保護者一人分の料金しかかからないというシステムにしています。近くにおもちゃ売り場もあるので、帰り際に子どもが「あのおもちゃが欲しい」と言える流れもあります(笑)。単にお子さまに楽しんでもらうだけでなく、親御さんにも買い物を楽しんでもらうための集客装置として導入しています。

家族連れで賑わう室内プレイランド
また、今期は大手旅行会社をはじめ、空き家などの相談ができる不動産の総合サロン、終活・相続サロン、ピラティススタジオなど、物売りだけじゃなく、コト・サービスの強化を進めています。
Big Advanceで200件超の商談依頼、新たな企業との出会い
─Big Advanceを導入されたきっかけを教えてください。
金融機関の担当の方からご紹介いただきました。主にマッチング機能を使っています。普段は見つけられないような、思いもよらなかったことを発見したいというのがありますね。
─これまでにどのくらいの企業とマッチングされましたか?
2年半ぐらいで、200件以上の商談依頼をいただいています。本当にありがたいです。
直近も何社かありますね。大分のNextfieldさんは、飲食店をやっていた方が突然インテリアデザインを始めたというユニークな会社で、軽くてデザイン性のある木製インテリアプロダクト「ZENiQ」を開発しています。先方に行って商品を見せてもらって、この商品は本店で取り扱おう、とか、この商品はインバウンドに刺さりそうだから別府店でやろう、など具体的な話をしています。
あとは福岡のにんにく卵黄を扱われている会社さんは、「美と健康フェア」というイベントに出店してもらいます。神奈川の海老名にある洋菓子店さんにもわさだタウンのグルメイベントに参加してもらいます。
京都の抹茶スイーツ専門店さんとも商談が進んでいます。商談会の翌日に直接お会いして具体的な話をお伺いすることができ、来年の物産展出店に向けて話をしています。
バイヤーが明かす、選ばれる企業の条件
─目に留まる企業を選ぶ基準はありますか?
商品やサービスに対する想い、開発者や生産者の背景にストーリー性があるものは、お客様に提案しやすく、お客様にも響くので、そういったところは話を聞くようにしていますね。
─プレゼン能力も重要ですか?
そうですね。パワーポイントなどで資料を作って、わかりやすくお話ししてくれる方もいらっしゃいます。曖昧な感じの提案になってしまうと、なかなか難しい場合もあります。プレゼンがうまくできないと、商品の良さも伝わりません。
単に「この商品を置いてください」ではなく、「なぜこの商品を作ったのか」「どんな想いが込められているのか」を語れるかどうかが大きいですね。
タイ企業商談会の気づきと、商品の独自性を活かす視点
─先日、タイ企業との商談会にも参加されていましたがいかがでしたか?
やっぱりインパクトがあったし、思いもよらない商品が結構ありました。
一方で、ハードルもありました。会場にいた通訳さんは商談会が終わったあとのやりとりではいなくなるので、コミュニケーションが大変ですね。メールも全部英語とタイ語で、翻訳して読んだりしました。
あとは、日本の食品衛生法上の表記に対応できないなど、国内流通させるノウハウを持ってないという方が多かったですね。それを取りまとめる商社さんも含めて会場に来ていただければ、マッチングがより現実的になると思います。
どんなに良い商品でも、流通させるための体制が整っていないと、取り扱いが難しい。これは海外企業に限らず、国内のサプライヤーさんにも言えることですが、商品開発だけでなく、流通、在庫管理、法的な対応といった実務面の準備も重要です。

─タイの激辛パウダーの試食で皆さん悶絶していたとか(笑)
私も試してみましたが本当に辛くて(笑)。実は「日本向けに改良したいんですけど」と相談されたんですが、「そのままの良さをインパクトとして売った方がいい」という話をしました。
日本向けにマイルドにしてしまったら、他の商品に埋もれる可能性があります。むしろ「タイの激辛」という特徴を前面に出して、話題性を作った方が良い。商品の独自性、オリジナリティこそが、お客様の興味を引く最大の武器になりますから。サプライヤーの方には、自分たちの商品の「強み」を消さないでほしいですね。
─商談会で、こういったものがあると良いなと思う点はありますか?
商談にならないと商品も見られないし、話も聞けないので、展示ブースがあるといいですね。事前にある程度商品の内容を知っていても、実際にそこで見て「いいな」というものがあると違いますよね。
人とのつながりを大切にする仕事観
─仕事をする上で大事にしていることはありますか?
人とのコミュニケーションは特に大事にしています。人となりや想いは感じたいと思っているし、それがお客様に通じるのかなと。オンライン面談もやりますが、直接会って話す方が好きです。
─もともと人と話すのが好きだったんですか?
そうですね。独身時代は飲み歩いたり、一人旅が好きで、車で新潟まで行ってみたりしました。また、バックパッカーで青春18きっぷを使って鈍行列車で日本一周を4回しましたね。旅の中で知らない人と意気投合して、その人の背景や人生を聞くのが面白いと思いました。
100周年に向けた展望
─今後の展望について教えてください。
今年90周年を迎えましたが100周年まで、10年後に向けて、どういった店舗であるべきなのかを構築する最前線にいます。そこにフィットしたものを探すのは当然ですが、コトやサービスも含めて、デベロッパー的な役割でリーシング(テナント誘致・賃貸借契約)などにも取り組んでいます。
お客様には商品だけじゃなく、サービスやライフスタイルも提案できるような百貨店になりたいというのが、私たちの命題です。そこに向けてのお声があれば、話を聞きますし、アプローチしていきます。
地元のお客様とのつながりは非常に強いと思います。90周年ののれんと、お客様からの信頼とともにやらせていただいているという部分は、これからも崩さずにいかなきゃいけないと思っています。
<会社情報>
| 株式会社トキハ | |
|---|---|
| 所在地 | 大分県大分市府内町2-1-4 |
| 設立 | 1935年(昭和10年)10月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |









