福井発グルテンフリースイーツが5カ国展開
サールが捉えた世界の健康志向

福井県でレストラン兼グルテンフリースイーツ製造会社「natural kitchen SAL(ナチュラルキッチンサール)」を営む廣瀬一人氏。子どもの小麦アレルギーと、山奥で手間暇かけて有機米を作る生産者への恩返しの想いから、米粉スイーツの製造を始めました。当初は試食すらしてもらえなかったグルテンフリー市場で、福井の厳選食材で勝負。現在は台湾、シンガポール、アメリカなど5カ国に輸出しています。きび砂糖で甘さを抑えても「まだ甘い」と言われるほど健康志向の高い海外市場で評価を得ています。Big Advanceで大手販売先との取引も実現し、次はホテルやフィットネス、ペット市場へ。「地産外消」を掲げ、福井の恵みを全国、そして世界に届ける挑戦を続ける廣瀬社長にお話を伺いました。
ナチュラルキッチンサール 代表 廣瀬 一人 様
子どものアレルギーと生産者への想いから生まれた
グルテンフリースイーツ
─まず、御社の事業概要と創業からの歩みについて教えてください。
当社は13年前、福井で飲食店からスタートしました。地元・福井の海や山で取れる素晴らしい食材を使ってお料理やお惣菜、お弁当をレストランで提供しています。塩にもこだわりがあって、店名の「SAL(サール)」はラテン語で塩という意味です。
5年前から、米粉を使ったグルテンフリースイーツの製造販売をスタートしました。これにはいくつかのきっかけが重なっています。
まずは、レストランでも使っている有機米との出会いです。車一台通れるか通れないかくらい山奥の、携帯の電波も届かないような場所で、農薬をまかず、草むしりも手作業。本当に手間暇かけて作られている貴重なお米なんです。私たち飲食店や製造者は、生産者がいないと何もできない。だから生産者の方に、お米以外でも力になれないかと考えて、米粉に着目しました。
二つ目は、当時のコロナ禍でレストランが本当に静かになってしまい、新しい事業を始める必要があったこと。そして三つ目が、私の子どもが小麦アレルギーになったことです。いくつかのストーリーが重なって、このグルテンフリースイーツの製造販売がスタートしました。

米粉を使ったグルテンフリースイーツ
─商品の特徴について教えてください。
チーズケーキやガトーショコラ、マフィンなどがあり、ケーキは正方形の一口サイズにカットしてあるのが特徴です。福井県は共働き率が全国一位なので、家事や育児をしながら食べられるというコンセプトでスタートしたんです。
原材料は、保存料・着色料はもちろん余計なものは加えていません。白砂糖ではなくきび砂糖を、牛乳やバターではなく豆腐や豆乳を、小麦粉ではなく米粉を使って健康的なスイーツを製造しています。信頼できる生産者さんのもとで作られた、良質な素材をたっぷりと使っています。
─5年前にグルテンフリースイーツを始められた当初は、どのような状況でしたか?
正直、大変でしたね。5年前は試食もしてくれないという状態だったんです。グルテンフリーって、あまり美味しくないと思われている方が多かったんですよね。
でも今は、健康食に対する意識も皆さん高くなって、グルテンフリーも結構浸透してきましたね。いろんなお店から美味しいグルテンフリー商品が出ています。
そうした変化もあって、2年前に店舗の真裏にグルテンフリースイーツ専用のセントラルキッチンを建てました。安心安全な食材を使うだけでなく、エアーシャワーや金属探知機を導入し、ハード面でも衛生管理を徹底した製造施設です。製造数が増えたことで、全国・世界への販路拡大が可能になりました。

グルテンフリースイーツ専用のセントラルキッチン
厳選された福井の食材 無農薬へのこだわり
─生産者の方を選ぶ基準について教えてください。
本当にご縁が一番なんですが、やはりこだわりを持って選んでいます。
有機米に着目したのは、発芽酵素玄米を提供しているからです。精米するなら、農薬がかかっていてもいいと思うんですよ。でも、玄米のまま食べるのであれば、やはり無農薬のお米を使いたい。当店のコンセプトが、お客様の体に負担のないものを出したいということだったので、無農薬のお米を探していたんです。
そこで出会ったのが「田んぼの天使」という有機米です。今では田植えと稲刈りのお手伝いにも行っています。
─他の食材についてはいかがですか?
卵は純国産鶏種の卵で、すぐ近くの養鶏場のものを使っています。ちょうどその養鶏場は2代目に変わったところで、近くの農家さんに紹介してほしいとお願いに行ったら、その場にたまたま2代目の方がいらっしゃって「僕です」って。今では当店で使っている米油の廃油をその鶏の餌に回して、その鶏が産んだ卵を使うという循環ができています。地元でこうやって循環するシステムができていくのは、とても良いことですよね。

福井の食材をふんだんに使った「季節の一汁八菜膳」。ごはんは有機米「田んぼの天使」を使った発芽玄米。

こだわりのお塩でいただくサラダ
台湾・シンガポールで高評価 5カ国への輸出を実現
─海外展開について、詳しく教えてください。
現在、アメリカ、台湾、シンガポール、フランス、カンボジアの5カ国に輸出しています。年内には香港へのお話も進めています。
海外は日本よりも添加物の基準が厳しいのですが、当店はあまり添加物を使っていないので、海外進出の強みになっています。
─海外展開のきっかけを教えてください。
実は最初はロシアへの輸出が決まっていたんです。当時、日本食・健康食ブームで、当社の米粉スイーツや豆腐入りブラウニーの現地製造も計画してたのですが、戦争が始まって白紙になってしまって。
そこで国内にシフトしたのですが、コロナ禍以降はオンラインで商談できるようになり、アメリカなどと取引が始まりました。東南アジアも成長していて、日本より高い価格でも売れることがわかり、可能性を感じています。
─売れ行きがいいのはどの国ですか?
台湾ですね。アメリカもグルテンフリー市場は大きいのですが、コロナ禍が落ち着いた後は実際に渡航する必要が出てきました。台湾や香港なら3日程度で行けますが、アメリカは難しいですね。ただ、バイヤーさんからは好評をいただいているので、可能性は感じています。
今年、台湾に行ってきました。台湾や香港は健康志向が高く、子どもに甘いものをあまり食べさせない文化なんです。当店の商品はきび砂糖で甘さ控えめなんですが、台湾では「まだ甘い」と言われました。
改めて、日本の安心安全の基準は世界と差が出てきているのかなと思いました。だからこそ、当店のグルテンフリースイーツが評価されているんだと感じています。
Big Advanceで広がった全国ネットワーク
─Big Advanceを始めたきっかけを教えてください。
ちょうどロシアの件で国内にシフトしていた時期で、Big Advanceの商談会が私たちにとって初めての商談会でした。今でこそいろんな商談会に参加していますけど、始めたばかりの頃だったので良い経験にもなりました。
一番魅力的だったのは、出展料がかからないということです。当店のようなチャレンジしていく企業にとって参加しやすいですし、本当にありがたいと思っています。
Big Advanceの商談会のあと、おかげさまで、何社かと継続してお取引させていただいています。Big Advanceでつながった先が全体の売上の1割くらいですね。
─最近の商談会はいかがでしたか?
参加は2回目でしたが、タイムスケジュールも無理なく組んでいただいて、すごくやりやすかったです。最初は時間が短いかなと思ったんですが、慣れればテンポよくお話できますね。リアルで会ってお話ししておくと、その後のオンライン商談にもつながりやすいので、商談会では短い時間でもお会いできることが大事だと思っています。
商談会で出会った中京の企業さんとは、現在商談を詰めているところです。また、Big Advanceでお取引のある岐阜の販売チェーンの方が愛知の店舗との商談の場を作ってくださったり、岐阜の抹茶の生産者を紹介してくださったり、良いご縁が続いています。
やっぱり金融機関がいてくださることで、その後につながりやすいというのは、Big Advanceの良さだと思います。

生協やナチュラルローソンとも取引 そして新たな販路開拓
─現在の販路について教えてください。
スイーツだけの売上でいうと、福井よりも関東・関西方面が伸びてきています。生活協同組合関連が多いですね。あと、ナチュラルローソンも何回か取り扱っていただいています。
ライフのプライベートブランド「ビオラル」など、健康志向の方向けの商品を扱うところとのお取引も増えてきています。
─今後、どういった販路を開拓していきたいですか?
今まではスーパーが中心でしたが、これからはホテルや民泊など、インバウンド向けの需要があると思っています。実際に民泊をされている方から注文をいただくこともあるんですよ。海外からのお客様はグルテンフリーを求めていますので。
あとは、フィットネス系ですね。体を鍛えている方は食に対してストイックなので、そういったところも攻めていきたいです。それから、ペット市場も可能性を感じています。こういった、従来の販路ではなかなか接点を持てないところと、Big Advanceの商談で出会えるのはありがたいですね。
真面目なものづくりで目指す「日本一のグルテンフリースイーツ」
─今後の展望について教えてください。
すばらしい食材を使わせていただいているので、いろいろ商品開発をして、ブランディングを再構築して発信していきたいですね。
なにより、真面目にちゃんと商品を作るということを大事にしています。手作りで妥協せず、食材もしっかり選ぶ。当店が扱いたい食材だけを使って、手作りでやっていくということを続けていきたいです。
その先に「日本一のグルテンフリースイーツ」があるのかなと思っています。グルテンフリーといえばサールと言われるようになりたいです。そして世界の人々にも、日本を代表する「福井のグルテンフリースイーツ」として手に取ってもらえたら嬉しいですね。地産地消だけでなく、「地産外消」まで目指したいですね(笑)。
─最後に、これまでの人生で印象に残った出会いを教えてください。
やっぱり生産者の方ですね。改めて福井で生まれて育って良かったなと思います。生産者がいないと何もできないので、生産者とのご縁をこれからも大切にして、伝えていきたいと思っています。
<会社情報>
| ナチュラルキッチンサール | |
|---|---|
| 所在地 | 福井県福井市真木町104-12 |
| 設立 | 2012年 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |












