「震災と失恋を乗り越えて!」
ほやドル萌江さん8年間の躍進劇

宮城県石巻市の海産物「ホヤ」を全国に広めるため「ほやドル」として活動を続ける尾形萌江さん。高校時代の東日本大震災と大学時代の失恋という二つの試練を乗り越え、8年前に個人で活動を開始しました。今や仙台銀行のキャラクターも務めるほど、宮城を代表する存在に。3回目となる主催イベント「ほやっほー祭」では1万人を動員し、クラウドファンディングで念願の打ち上げ花火も実現しました。地域活性化の新たなモデルケースとして注目を集めています。逆境をバネに夢を追い続けた軌跡と、次世代育成への想いを伺いました。
株式会社ほやいろ 代表取締役 尾形 萌江 様
震災復興とホヤ救済への想い 「ほやドル」誕生秘話
─宮城県のご当地アイドル「ほやドル」として活動されていますが、「ほやドル」とは?
みなさん、ホヤを食べたことありますか?珍味としてご存知の方は多いのですが、食べたことがある方は少ないんですよね。私は2017年頃から宮城県の海産物「ホヤ」を全国に広めるための活動をしています。シンガーソングライターとして『ほやのマーチ』をはじめとした楽曲を制作、歌唱したり、各地のイベントに出演したりしています。また、年に一度「ほやっほー祭」というイベントを主催していて、今年は1万人の方にお越しいただきました。
1年前には株式会社ほやいろを設立して、私自身のマネジメント業務やイベント企画・運営を行っています。現在は仙台銀行さんのキャラクターもさせていただいており、CMソングの作詞作曲やナレーションも担当しています。
─ホヤが大好きとのことですが、萌江さんにとって身近な食材だったのでしょうか?
はい、私は宮城県石巻市の牡鹿半島で生まれ育ちました。ホヤの養殖が盛んな地域で、夏になるとボウルいっぱいの蒸しホヤがドーンと食卓に出てきたり、ホヤの炊き込みご飯があったり。大好きだったので幼稚園の頃からおやつとして食べていました。
だから大人になって「ホヤ?何それ?」と言われた時の衝撃が大きくて。逆にこんなに知られていないんだという驚きから、これは私に託された使命だなと思ったんです。
─「ほやドル」として活動を始めたきっかけを教えてください。
私が高校1年生の時に東日本大震災があり、地元は津波で甚大な被害を受けました。家族やおじいちゃんが見つからないという状況で、漁場は全て流され、多くの命も生活の糧も失いました。
漁師さんたちは数年かけて漁場を復活させました。ホヤを育てるには3年もかかるので、震災から長い時間をかけてようやく出荷できるようになったんです。ところが、それまで生産量の7、8割を輸出していた韓国への輸出ができなくなってしまいました。
韓国でホヤは、キムチに入れたりコチュジャンで食べたりする一般的な食材で日本よりずっと消費量が多いんです。せっかく復活したホヤが国内では出荷先がなく、廃棄される状況にあることを目の当たりにしました。こんな美味しいものを捨てるなんてもったいない、何かできることはないかと考えて作ったのが『ほやのマーチ』という曲でした。おじいちゃんが大好きだったホヤを育ててくれる人がいる、それなら私がホヤを広めよう! それが「ほやドル」としての活動の始まりでした。
噂が噂を呼ぶ『ほやのマーチ』!路上ライブからラジオ、テレビ出演へ
─最初はどのような活動から始めたのですか?
大学卒業と同時に作った『ほやのマーチ』という曲をライブハウスや路上で歌っていました。ネットにもあげず、本当に地元で活動していたら、「ホヤの歌を歌ってる子がいる」と噂が広がって、色々なイベントに呼ばれるようになったんです。
それを見ていたラジオパーソナリティの方が「宮城で変な歌を歌っている子がいる」と、ラジオで曲を流してくださったのが最初の転機でした。そこから少しずつラジオやテレビに出させていただくようになりました。
何かきっかけがあって注目を集めたわけではなく、本当にちょっとずつの積み重ねで皆さんに知られるようになりました。8年間、地道に続けてきたからこそ、今があると思います。
手作りイベント「ほやっほー祭」3回目で入場者数1万人に
─「ほやっほー祭」が今年で3回目を迎え、1万人の集客を達成されました。
「ほやっほー祭」は石巻に人をたくさん呼んで地域貢献したいという想いで始めた、ホヤが主役のイベントです。ご来場いただいた方々、地域の皆さん、出演者、みんなハッピー「ほやわせ」になる空間を作りたいと思っています。
入場無料にこだわっていて、1回目は1000人、2回目は5000人、今年は1万人と少しずつ成長してきました。今年は、ホヤ釣り体験をはじめ、「ほやラーメン」や「ほや雑煮」などの飲食店30店舗以上が出展してくださいました。お笑いコンビのカミナリさんにも出演いただき、大変盛り上がりました。
私は3つある会場を出演しながら回って、運営管理も行っています。バンドメンバーや地域の高校生、大学生も運営を手伝ってくれて、まさに地域のみんなで作り上げているイベントです。
─今年はBig Advanceのクラウドファンディング(※)で打ち上げ花火も実現されたそうですね。
入場無料なので、どうしても赤字になります。それでも石巻の人に気軽に楽しんでいただきたいし、このイベントをきっかけに石巻に泊まって美味しいものを食べていただきたいという想いがあります。資金調達にあたって金融機関の担当の方に相談したところ、Big Advanceにクラウドファンディングのサービスがあると教えてくださって、挑戦することにしました。
「ほやっほー祭」でクラウドファンディングをするのは初めてだったので、明確な目標として、「花火を上げたい」というずっと抱いていた夢を実現することにしました。
※一部金融機関ではCAMPFIRE社と連携してクラウドファンディング機能を提供しています
─花火は300発打ち上げたそうですが、クラウドファンディングを利用されていかがでしたか。
個人で花火を上げることはとても大変なことなので、クラウドファンディングで皆さんが実際にお金を出して参加してくださったことに感激しています。
入場無料への信念や石巻を応援したい気持ちなど、私たちの想いに共感してくださる方が大勢いることを実感できました。それが目に見える形で分かって、本当に励まされました。
支援してくださった一人ひとりの想いが込もっているからこそ、花火が上がった時は、会場にいる皆さんと一緒に泣きました。「花火で泣いたのは初めて」という声をたくさんいただきました。
─来年以降の展望は?
毎年続けたいと思っていますが、個人でやっているのでキャパシティの限界も感じています。それでも「絶対来年も行きます」という声をたくさんいただいているので、なんとか続けていきたいと思います。
ホームページPV数急上昇 問い合わせも大幅増加
─ホームページ作成機能も利用されていますよね。急激に伸びているホームページがある、と社内で注目されていたことがきっかけで今回の取材につながりました。
嬉しいです、ありがとうございます!
金融機関の方にBig Advanceのシステムをご紹介いただいたときに、ホームページなど他のサービスについてもご説明いただいて入会を決めました。
個人のホームページはあったのですが、年間費用が高いうえ編集が煩雑なので見直しを検討していました。Big Advanceのホームページは入力するだけの直感的な操作で、きれいに仕上がるうえ更新もスムーズなので、こちらをメインとして会社ホームページにしました。
検索される機会がとても増えてPV数も上がっています。お問い合わせフォームからも多くのご連絡をいただくようになり、イベントの出演依頼なども、ホームページ経由で来ることが増えています。
「お前には無理」から8年!好きな気持ちが勝った理由
─「ほやドル」として活動を続ける原動力について教えてください。
自分で好きで始めたことだから、8年も続けているのだと思います。
実は、活動を始める直前に結婚まで考えていた彼に振られたんです。大げさですけど、私にとっては絶望でした。
2年間付き合って、歌手になりたいという夢を相談した唯一の人でした。「お前には無理だよ」と言われても、彼と結婚するんだからと夢は諦めていたんです。その彼がいなくなったことで蓋をしていた想いがあふれ出したというか、「この人ができないって言ってたことを私はやってやる!」という反骨心も原動力の一つです。
ホヤを広めたい想いと失恋からの怒り、それが地続きで私を支えています。今はその彼にも感謝してますよ(笑)。
活動当初は「2年後にはいなくなっている」などと言われることもありましたが、好きで始めたから気になりませんでした。同じ時期に活動していた人たちがどんどんいなくなっていく中で、やりたくないことをやらされている人は続かないということを実感しました。やっぱり本当に好きという気持ちが一番大事だと思います。
憧れのコブクロと念願の対面!さんまさんから学んだ大切なこと
─これまでのキャリアで転機となった出会いはありますか?
中学1年生の時に聴いたコブクロが私の原点です。また失恋話ですが、初めて付き合った彼氏の浮気を目撃したんです。この時も絶望を味わいましたがコブクロの音楽に救われて、「私もコブクロみたいに音楽で誰かを救いたい」という気持ちから歌手になろうと決めたんです。
そして数年前、お世話になっていたラジオ局にコブクロのお二人が出演された時に、楽屋でお会いすることができました。ホヤの格好で行ったので、お二人とも「何この子?」みたいな感じでしたが(笑)。持参していた乾燥ホヤを「うまい!」と言って食べてくださり、夢が叶った瞬間でした。
─明石家さんまさんとの共演でも学びがあったそうですね。
2022年にさんまさんが企画した映画『漁港の肉子ちゃん』の上映会で、トークショーのMCを私が担当しました。緊張して映画のタイトルを言い間違えてしまったんですが、すかさず「そんなじゃ始められんやろー!」とさんまさんが突っ込んでくださって会場が大受け。緊張させない空気を作ってくださり、自分が楽しむだけじゃなく、相手も楽しませてこそ素敵な場が生まれるということを学びました。
第2・第3の「ほやドル」創出へ 次世代育成宣言
─今後チャレンジしたいことはありますか?
第2、第3の「ほやドル」を作ることです。イベントに同じような髪型の女の子たちや子どもたちが会いに来てくれることが増えて、そういう存在になれたことが嬉しいです。その子たちがいつか「こうなりたい」と思った時に、場を提供できたらいいなと思っています。ホヤに限らず(笑)。
─最後に、ファンの皆さんについてお聞かせください。
最初の頃は歌を聞きに来てくださる方が多かったんですが、最近は挑戦する姿を見て「勇気をもらえる」と言ってくださる方が増えました。「ほやっほー祭」もクラウドファンディングも、私が何かを挑戦する時には一緒に挑戦してくれたり応援してくれたりする人がたくさんいます。本当に人に恵まれていると思うので、これからもみなさんに「ほやわせ」を届けるべく活動していきます。

(左:尾形代表、右:仙台銀行 小林氏)
<会社情報>
株式会社ほやいろ | |
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所在地 | 宮城県石巻市中里4-7-34-1 |
設立 | 2023年12月(活動開始2017年) |
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※情報と肩書は取材当時のもの |