2025年09月01日

畜産王国・鹿児島の食材を全国へ
レストラン「三蔵」から始まった挑戦の軌跡

創業から15年、鹿児島県出水市で地元食材を使った料理を提供してきた株式会社西尾。コロナ禍を機にレストラン事業から通販事業にシフトし、畜産が盛んな出水市の逸品を全国に届けています。Big Advanceを活用した販路拡大の取り組みと、地元への想いについて代表の西尾氏にお聞きしました。

株式会社西尾 代表取締役 西尾 昭三 様

59歳でレストラン「三蔵」開業 コロナ禍で通販事業に転換

─現在の事業に至った経緯を教えてください。

現在は食品の通販事業を中心に展開していますが、もともと「三蔵」というレストランをやっていました。その前は鹿児島東急ホテルで30年、支配人をしていました。

母が地元に帰りたいと言ったのをきっかけに、空き家だったこの場所を改装して、県の補助金制度を利用したり、中学からの大親友が無償でロゴを作ってくれたりと、周りに助けられながら59歳でレストランを始めるに至りました。レストランは忙しい時もありますが、比較的時間の融通が効くので、母の介護をしながら運営していました。

15年前にレストランを始めた頃は、「肥薩(ひさつ)おれんじ鉄道」の食堂車でフルコースを提供していました。おれんじ鉄道は熊本と鹿児島を走っている観光列車で、食堂車には40席ほどあり、毎日5000円の料理を40人分提供していました。

また、月に20件ほど結婚式をやっていたこともあります。全体で2000坪あるうち芝生が1000坪あるので、そこで結婚式をしたあとにレストランの室内で食事をするという流れです。一番売上が多かった時は年間8000万円ほどでしたが、人件費が予想以上にかかるなど、初めての事業に苦戦しましたね。

─通販事業に転換されたきっかけを教えてください。

レストランをやっていく中で、何かあった時のために通販事業はしておいた方が良いと思っていたのでそちらも徐々に始めていたのですが、コロナが来た時に「この際だから通販を主力にしよう」と決断しました。現在は通販のみの事業に特化し、私が社長として、他に専務、調理担当者が1人と忙しい時のお手伝いの方2〜3人で運営しています。

出水市の「いずみどり」を活かした商品展開

─商品の特徴について教えてください。

当社の特徴は、地元出水市の食材を使った商品づくりです。鶏肉、豚肉、黒毛和牛など、地元の畜産物を中心に、レトルトの機械や瞬間冷凍の設備を活用して商品化しています。

出水市は鹿児島県の中でも養鶏が盛んな地域で、特にマルイ農協さんは、昔は東洋一の売上を誇っていました。そこで厳選して作られている「いずみどり」を使った「いずみどりの熟成柿酢仕立て」は、こだわって作った商品の一つです。平成24年度鹿児島県新加工食品コンクールにて特別賞で県知事から賞状をもらい地元の山形屋デパートにおいてもらうようになりました。

「いずみどりの熟成柿酢仕立て」は180グラムで販売していますが、漬け込んで作るので実際は300グラムほどないと商品の品質に届きません。夏場は鶏も餌を食べなかったりして小さいので、この商品にするには規格が足りなかったりします。そうすると使えなくなってしまうので、それをなんとかしようと思い「トーストチキン」や「ボイルドチキン」などの商品も開発して販売しています。

いずみどりの熟成柿酢仕立て

トーストチキン

─現在はどこで売られていますか?

通販サイトのほか、全国のデパートに商品を納入しており、大手商社の卸売りや高級スーパーとも取引があります。特に「いずみどりの熟成柿酢仕立て」は人気で、売れすぎて品切れになることもあります。また、出水市のふるさと納税にも出しています。

当社の「筑前煮」は高島屋やQVCなどでも取り扱いがあり、通販サイトを扱っている企業様には先日3000個納品しました。年配の女性の方からの反響が特に良く、「20個送ってください」といった直接の電話注文もいただいています。

ビジネスマッチングで販路拡大 累計200万円の売上に

─Big Advanceを利用されたきっかけを教えてください。

商品をいろんなところで売りたいと思っていたのですが、なかなか販路が見つからず、Big Advanceのビジネスマッチングを利用することにしました。

Big Advanceの良いところは、全国の企業との商談機会が得られることです。実際に何社かとマッチングして、商談を進めることができました。また、金融機関の担当者の方に手厚くサポートしていただけたのもありがたかったです。ホームページも作っていただきました。

─積極的に商談申し込みをされていますよね。具体的にはどのような成果がありましたか?

複数の企業とマッチングして取引に至ったので、全体では200万円程の売上になっています。継続的な取引につながっている企業もありますし、山形の企業や関西の企業からも引き合いがありました。小さな金額でも定期的に関係が続けられるとありがたいです。

一方で、面談をしたあとに冷凍と常温で何種類かサンプルを送ったものの、結局「今回は見送り」という結果だったところもあります。送料もかかりますし、なぜダメだったのか理由を教えてもらえるとありがたいんですが、なかなかそういったフィードバックをいただくのは難しいですね。

企業によっても熱の入り方はさまざまで、山形の企業はとても積極的でサンプル送付の際には先方が送料負担を申し出てくれました。そういった企業とは「取引が始まる」と直感するので、こちらも気合いを入れて対応します。また、鹿児島の商品は東北だと売れやすい傾向がありますね。

─テレビで商品が紹介されたそうですね。

去年(2024年)の6月頃に、東京の番組に当社の商品が出ました。タレントさんたちが早稲田大学周辺を歩いて、商店にある商品を紹介する番組です。テレビの効果で当社の商品が売れるようになり、今は毎週火曜と金曜に注文をいただいて送っています。一度お客様がついてくだされば、リピートしていただけるのが当社の商品の特徴です。そういったリピーターを、Big Advanceを通した取引でももっと獲得していきたいですね。

豚なんこつのやわらか煮

成功体験と失敗から学んだ教訓

─これまで様々な挑戦をされていますが、楽しかったこととうまくいかなかったことを教えてください。

楽しかったのは、レストランを始めて1〜2年目のゴールデンウィークにバイキングを実施したことです。一人1500円で、70歳以上の方は1000円という価格設定にしたら、宣伝を出したとたんに来るわ来るわで(笑)。予定していた期間分の材料が一日でなくなってしまったんです。

どうしようかと思いましたが、ホテルで働いていた経験があったので材料屋さんにすぐ連絡をしてなんとか3日間やり切りました。なかなか大変でしたが楽しかったですね。それがきっかけでレストランも人気を得ることができました。

一方で、うまくいかなかったのはグランドゴルフでした。近くにゴルフ場があって、そこが1億ぐらいの売上を出していたので、ここでもグランドゴルフをやれば同じような効果があるだろうと思って設備投資をしたんです。大会も多数開催しましたが、なかなか難しく期待したような成果は得られませんでした。

結局、行列ができる店は美味しいものを安く提供すればできるんですが、人を雇って安いものを大量に出すと絶対に儲からないということを学びました。人件費を抑えて、自分でやらないと利益にはならないですね。

地域雇用創出と事業承継、キャンプ場にも挑戦

─今後の展望について教えてください。

販路を広げて、できれば20名以上の雇用を出水市のために創出したいと考えています。地元の食材を使った商品の販売を通じて、地域の発展に貢献したいという想いがあります。

子供が「お父さんの会社を手伝おうか」と言ってくれています。まだ赤字の状況が続いていますが、販路が広がってもう少し軌道に乗れば、事業継承も考えています。

─現在は芝生のスペースを別の用途で活用されていますよね。

そうなんです。現在は芝生をキャンプ場として貸し出しています。担当金融機関の以前の支店長がしょっちゅう来てくれていて、そのために芝生の手入れをしていますね(笑)。常連の方もいて、SNSで宣伝してくれたりしています。トイレも水道も完備しているので、もう少し広まって人が来ると良いなと思っています。

地元の雇用創出と次世代への継承、この2つが私の大きな目標です。Big Advanceのようなサービスを活用して、さらに多くの企業との取引を拡大していきたいと思います。

<会社情報>

株式会社西尾
所在地 鹿児島県出水市荘912
設立 2009年
URL

https://www.big-advance.site/c/196/1297

http://izumi-mikura.jp/index.html

※情報と肩書は取材当時のもの
※一部画像は西尾様提供
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