「できるだけ長く自宅で」
廣建がつくる高齢者社会のための住環境

左官工事からスタートし、住宅リフォームへと事業領域を拡大してきた三重県桑名市の株式会社廣建。職人としての技術力と責任感を大切にしながらも、時代の変化に合わせて柔軟に技術を磨き、事業を展開してきました。特に現在は高齢化社会に対応したバリアフリーリフォームに注力しており、Big Advanceをきっかけに異業種の企業とマッチング、新たなビジネスチャンスを掴んでいます。今回は代表の廣辻氏に、事業の歴史や今後の展望についてお話を伺いました。
株式会社廣建 代表取締役 廣辻 洋一 様
左官の技を基盤に多角化するリフォーム事業
-御社の歴史について教えてください。
当社は1975年に父が名古屋市港区で廣辻業務店として開業したのが始まりです。創業当初は左官工事業として、壁や床を土壁やモルタルで仕上げる仕事が中心でした。
私は高校卒業後の18歳から父の仕事を手伝い始め、現場で技術を学んできました。子どもの頃から「お前は跡継ぎだ」と言われ続け、仕事を早く覚えさせたい父は高校進学には反対していましたが、中学校の先生に「高校だけは出ておきなさい」と勧められ、高校卒業後に働き始め、今年で29年目になります。
私が仕事を始める少し前から住宅事情は大きく変わっていき、和室が減少し、仕上も繊維壁や聚楽(じゅらく)から壁紙に、お風呂も在来工法からユニットバスに、外壁もモルタル塗りからトタン(亜鉛めっき鋼板)やサイディング(建物の外壁に使用される板状の仕上げ材)が主流となり、左官の仕事は屋内外ともに減少していきました。
-時代の変化にどのように対応されてきたのですか?
父は新しいことにどんどん挑戦する人でした。「今度はこれだ」と言って様々な技術を取り入れ、私もそれについていきました。お風呂の塗装を始めたり、塗装できないところはシートフィルムを貼ったり、フィルムを貼れない場所にはパネルを貼ったりと、常に変化を続けてきました。
今では住宅の中も外も全て対応できるようになり、不動産会社からの依頼で中古住宅の再生工事を一手に引き受けています。幅広い対応力が当社の強みです。
繁忙期を乗り切る協力体制を構築
-Big Advanceを導入されたきっかけを教えてください。
当初はホームページを作るために導入しました。それまでは業者相手の仕事が多かったのですが、一般のお客様からの依頼を増やしていきたいという思いがありました。ホームページについては桑名三重信用金庫の担当の方にサポートしていただき、一緒に作り上げました。トップページの写真も、事務所の外観を綺麗に撮影したものを使っています。まだ作ったばかりですが、今後の集客につながることを期待しています。
-ビジネスマッチングはどのように活用されていますか?
Big Advanceには2年近く前から加入していますが、実際にマッチングの成果が出たのは最近です。カーテンの取付や製造をされている岐阜県の企業との取引が第一号となりました。
その企業はカーテンの取り付けや製造以外に、クロス張り替えなどのリフォーム事業も展開していました。そこで「一緒にお仕事をしてみましょう」ということで商談、無事成約に至りました。工事も完了し、とても綺麗に仕上がりました。担当の方は非常に対応が良く、何度も足を運んでくださり、とても良い関係が築けています。
他にも福井県の建築資材を取り扱っている企業と面談し、メールでやりとりをして内容を詰めている案件もあります。今はまだ商談中ですが、今後機会があれば進めていきたいと考えています。
-今後、Big Advanceでどのような協力会社を探されていますか?
業種によって繁忙期があり、例えばクロス屋さんだと2月、3月が特に忙しくて捕まらない時期があります。そういう時に声をかけられる業者さんが多ければ、受注した仕事をスムーズにこなせるので助かります。現在は特に板金屋さんと大工さんを探しています。もっと多くの職種とつながりができれば、より多くの案件に対応できるようになると思います。

(左: 株式会社廣建・廣辻氏、右: 桑名三重信用金庫・小椋氏)
バリアフリーリフォームへの思い 高齢者に優しい住環境づくり
-今後力を入れていきたい分野について教えてください。
現在、当社は不動産会社からの依頼で中古住宅の再生工事を手がけています。この事業を15年ほど続けてきましたが、今後はバリアフリーリフォームにさらに力を入れていきたいと考えています。身体的な障害をお持ちの方や高齢者の方が、車椅子でも快適に生活できるような環境づくりを目指しています。そのためのショールームも現在計画中です。
-高齢者向けの住環境づくりに関心を持たれたきっかけは何ですか?
きっかけはいくつかあります。近所の方から手すりの設置依頼があったり、親族が高齢になって住環境の改善が必要になったりと、身近なところで必要性を感じていました。特に大きかったのは、妻の父親が脳梗塞で半身不随になり、車椅子生活となった時の経験です。家を大きく改装する必要があり、バリアフリー化の重要性を実感しました。
また、補助金の面でも介護保険を活用した住宅改修の制度があります。この申請手続きが複雑で、「工事はできるけど申請が大変だから」と敬遠する業者も多いのですが、当社ではそうした手続きも含めてサポートしています。
高齢化社会において、できるだけ長く自宅で暮らせる環境づくりが重要です。家の環境が整っていれば施設に入る必要がなくなる場合もあります。そうした支援を通じて、地域の高齢者の生活を支えていきたいと考えています。
「見えないところでも手を抜かない」職人としての誇りを大切に
-仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
基本的には父から教わったことですが、「見えないところでも手を抜かない」「当たり前のことを当たり前にやる」ということを大切にしています。父は職人気質の人で、そういった姿勢を私にも教えてくれました。
ただ、父の時代と比べて変わったことも多いです。以前は父と二人での現場仕事が中心でしたが、今は受注件数が増え、様々な分野の工事を請け負うようになったため、すべてを自分たちだけでこなすことは難しくなりました。積極的に外部の方の力を借りるようになったのは、父が代表だった時と大きく違う点です。
現場で自分が直接仕事をする時間は減りましたが、品質へのこだわりは変わっていません。ひとつひとつの仕事を丁寧に、責任を持って行うという姿勢を貫いています。
事業を広げる新たな挑戦 高齢者の移動手段の提案も視野に
-今後の展望について教えてください。
バリアフリーリフォームの拡大とショールームの開設が当面の目標ですが、さらにその先の展開も考えています。特に興味を持っているのが、特定小型EV四輪のような高齢者にも優しい移動手段です。免許返納後の高齢者の移動手段として、シニアカーよりおしゃれでスタイリッシュな乗り物があれば、これまでシニアカーを「高齢者の乗り物」として受け入れられなかった方々にも受け入れられるのではないかと思っています。
住環境のバリアフリー化と移動手段の確保は、高齢者の生活を支える上で両輪となる要素です。将来的には、当社の強みである長年の経験と技術の蓄積、そして時代のニーズに合わせた柔軟な対応力を活かした「家の中の環境を整え、外出時の移動手段も提案できる」という総合的なサポートを提供できればと考えています。
<会社情報>
株式会社廣建 | |
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所在地 | 三重県桑名市長島町福吉691番地65 |
設立 | 2001年5月 |
URL | |
※情報と肩書は取材当時のもの |