2025年06月26日

地元産の果物を新たな商品に
佐寿一 中央スーパー 80年の道のり

創業約80年の歴史を持つ長野県駒ヶ根市の有限会社佐寿一 中央スーパー。魚屋からスタートし、個人経営のスーパーを経て、現在は学校給食や保育園、旅館、ホテルなど事業者向けの食材卸に特化した事業展開をしています。三代目となる氣賀澤社長に、事業転換の背景やフードロス対策への取り組み、また経営者としての考え方などについてお話を伺いました。

有限会社佐寿一 中央スーパー  取締役社長 氣賀澤 明 様

三代に渡る事業変革 魚屋からスーパー、そして食材卸へ

-御社の概要と創業の背景について教えてください。

当社は私の祖父が魚屋として約80年前に創業し、私で三代目になります。二代目だった私の父親が個人経営のスーパーを始め、多い時には近くにもう一店舗構えて二店舗営業していた時期もありました。

時代は流れ、様々な店の出店が進む中で競合も増えてきて、スーパー単独では厳しい状況となりました。そこで活路を見出したのが、現在も継続している事業者様向けの食材配達・卸への転換です。今ではほぼ100%、学校給食や保育園、旅館やホテル、施設などに食材を卸す事業に軸足を移しています。

-氣賀澤様が経営を引き継がれたのはいつ頃でしょうか?

高校卒業後、東京にある商業系の専門学校で販売士や簿記の勉強をして、卒業後は食品の販売員として働いていたのですが「事業を継いでほしい」という祖父の言葉が頭の片隅にありました。その会社で5年ほど働いたあと、事業を継ぐために地元に戻ってきました。その時はまだ父親が健在で社長をやっていましたが、2009年に他界し、必然的に私が経営の舵を取る運びとなりました。ですので、15〜16年前から経営を引き継いでいます。

当時はスーパーでの店舗販売に加え、卸も行うという段階でした。しかし、年々店売りが厳しくなっていく中で、店舗の経費ばかりが増えていく状況がありました。税理士やその他関係機関に相談し、店売りは完全にやめて100%卸にシフトすることを決めたのは私です。それを実行したのは約7年前になります。

地域に根ざした卸売り戦略と食品ロス削減

-販売先はどのように見つけられましたか?

先代の頃からの付き合いで現在もお取り引きが続いているお得意様は多いのですが、100%卸にシフトするとなるとそれだけでは厳しい面もあり、新規のお客様を獲得する必要がありました。私の方からここが良いのではないかというところをリストアップして、足を運び営業に出かけるということを10年ほど前からコツコツと行っています。

現在の取引先は、8割近くが駒ヶ根市内で、残りは隣の宮田村や伊那市など近隣の市町村のお客様です。

-フードロス削減の取り組みについても教えてください。

フードロスに対する問題意識を持ったきっかけは、仕入れ先に足を運んだ際、地元で取れたフルーツがどこにも行き先がないまま置かれている光景を目にしたことです。リンゴなどが日々そのような状態なのを見て、このままだとどうなってしまうのだろうという疑問が強くなりました。

そこで思い立ったのが、行き先のない果物を私たちの手で加工し、何らかの形で提供できないかという発想です。それがフードロス削減への取り組みのきっかけでした。まだ主だった活動ができているわけではありませんが、地元産の行き先のないフルーツを利用したアップサイクル商品の開発を目指しています。

想定外の商談から生まれた冷凍いちご大福

-冷凍の「いちご大福」の開発はBig Advanceがきっかけだったそうですね。

はい。Big Advanceを通じて、フルーツの加工品等を販売している企業様と出会い、いちご大福が生まれました。最初は当社の果物を販売する予定で商談を申し込んだのですが、話しているうちに、実はその企業様が販売だけでなく加工のノウハウも持っている会社だということが分かりました。

私も地元産の果物を商品化したいという思いがあったので、逆にこちらが依頼する形で冷凍いちご大福が誕生しました。現在は主にB to B向けの商品となっていて、サービスエリアや道の駅などに納品しています。

また、Big Advanceで知り合った食品の卸をされている東京の企業様とも取引があります。その企業様はいちご大福に興味を示してくださり、何度かサンプル送付をしてから購入いただきました。現在も時々連絡を取り合いながら、お互いの商品を紹介し合ったりして関係が続いています。
 

-Big Advanceを活用した他の商談についても教えてください。

鉄道外車や観光関連の会社、アミューズメントパークを運営している会社とも面談しました。こちらの3社に関してまだお取引実績はないですが、特に鉄道会社さんとの商談では、お土産物屋の卸問屋に商品を紹介してはどうかというご提案をいただきました。冷凍大福という特性上取り扱いが難しいという理由で進展しませんでしたが、現在は主にサービスエリアや道の駅などの、冷凍設備が整った施設に置かせていただいています。また、最近では観光施設にも置かせてもらえないか商談中です。

本との出会いが人生の転機に

-氣賀澤様の人生における転機となった出会いについて教えてください。

一番大きいのは本との出会いです。私は読書が好きで、名経営者の方々の著書を何冊も読んできました。そこで「このままではいけない」「今の自分に甘えてはダメだ」という気持ちを自分に言い聞かせています。

特に参考にしているのは、稲盛和夫さんや松下幸之助さんの書籍です。経営者として時折大きな決断をしなければならない場面があります。左に行くのか、右に行くのか、いずれにしても決めなければならないのは自分自身です。そして一度決断したら、その道をしっかり歩まなければならないということを、こうした書籍から学びました。

持続可能な経営基盤の構築へ向けて

-今後の展望についてお聞かせください。

今は物価高やエネルギーコストの上昇など、国内全体を通して事業を行う上で利益が出にくい環境にあります。このような厳しい状況の中で、いかに永続的に生き残り、事業を展開していけるか、そしてお世話になっているお客様の信頼に応えられる体制を作れるかが大きな課題です。新規のお客様を確保することも重要ですが、他社との協業を強化していくことも必要だと考えています。自社単独での展開ではなく、他社との協業の中で持続可能な経営基盤を構築していきたいです。

<会社情報>

有限会社佐寿一 中央スーパー
所在地 長野県駒ヶ根市上穂栄町2-15
設立 1949年9月
URL

https://www.chu-su.com/

※情報と肩書は取材当時のもの
※一部画像は佐寿一様提供
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