山あいの工場から全国へ
藤枝パックの出汁パック加工、小ロットで挑戦者を応援
静岡県藤枝市の山あいにある、出汁パック加工の工場、株式会社藤枝パック。お茶所ということもあり、ティーパックを製造しているかと思いきや、実は出汁パックの製造がメイン事業です。出汁だけでなく対応原料の幅を広げ、1年前(2025年)から小ロット対応のサービス「チャレンジ1000」を打ち出しました。「挑戦する人を応援したい」その姿勢が全国に届き、今では問い合わせが後を絶ちません。「三方よし」を信念に、熱い人間との縁を大切にしてきた代表の澤口氏に、これまでの歩みと、この先に描く展望を聞きました。
株式会社藤枝パック 代表取締役 澤口 英希 様
縁が縁を呼んで、出汁パック加工の仕事へ
─ まず、御社の事業概要と歴史について教えてください。
当社の前身は、父が始めた個人事業です。この辺りはお茶が盛んな地域で、叔父がお茶屋さんをやっていた縁でティーパック加工の機械を入れたんです。お茶の加工から始まり、その後、焼津のある大きな出汁メーカーさんが当社の機械を使ってくれることになり、出汁パック加工が事業の柱になっていきました。
出汁メーカーさんとどんな橋渡しがあったのかは、もう「わかる人がいない」くらい昔の話になってしまいました。でも、そのつながりは今も変わらず続いている。縁って、そういうものだなと思います。
売上の大半は出汁の加工です。ただ、対応できる原料は年々広がっています。最近は、スープ、ハーブティー、漢方素材など、さまざまな原料のティーパック加工・袋詰め・OEM製造まで一貫して対応しています。

─ 2代目として継がれるまでには、どんな経緯があったんですか?
会社に入ったのは19歳の頃でしたが、父と方向性が合わなくて、数ヶ月で出てしまったんです。父は「この仕事を継続させていけば良い」という考えの人。でも私は、叔父みたいになりたかった。
叔父は一代で大きな農園会社を作ったんです。交渉がうまく、営業力がある人でした。かっこいい車に乗って、どんどん上を目指していく。小さい頃から憧れていて「自分も仕事をがんばって、叔父のようになる」ということがずっと目標でしたね。叔父はもう亡くなりましたが、今でも追いかけている感覚はあります。
会社を出てからは就職し、「酸いも甘いも」という感じで20代前半はいろんな経験をしました(笑)。その後、母が倒れたことをきっかけに戻る決断をしたんですが、戻ってからも父との折り合いがなかなかつかなくて。そんなときに寄り添ってくれたのが、幼なじみの会計士です。
数字が苦手な自分に代わって、今も帳簿を見てくれています。悪い時は「これはやばいよ」と正直に言ってくれる。彼がいなかったら、ここまでやってこれなかった。仲間って、本当に大事だなと思います。
「チャレンジ1000」誕生 がんばる人の背中を押したい
─ 小ロット対応の「チャレンジ1000」というサービスを始めたと伺いました。
きっかけは小さなことです。喫茶店を始めた若い人から「少量でもティーパックを作ってほしい」と相談されたんです。採算的にはなかなか厳しい話ではあるんですが、若い人が挑戦しようとしているんだからいいじゃないかと。がんばっている人を後押ししたい気持ちがあって、「じゃあいいよ」って引き受けたんです。
実は、加工業者への依頼には最低ロット数が多くて、個人や小規模事業者にとっては高いハードルになりがちです。「チャレンジ1000」では現在、1個から対応可能です。今では、お茶や出汁だけでなく、ハーブティーやスープ、漢方素材まで、さまざまな依頼が全国から届くようになりました。
─「チャレンジ1000」というネーミングはどこから?
この話をあるとき知人に話したら、その人がぽつりと「チャレンジせんでもいいじゃん」と言ったんですよ。その言葉がピンときたんです。「『チャレンジせん』ってなんかいいな」って。そのまま「チャレンジ1000」にしてしまいました(笑)。
その後、ホームページを全面的に作り直しました。おかげさまで公開されてからは、全国からの問い合わせがどっと増えました。もちろん問い合わせがすべて受注につながるわけではないんですが、それでも1件1件丁寧に見積もりを返すようにしています。
商売の基本は「三方よし」だと思っています。売り手よし、買い手よし、世間よし。相手が利益を出せて、こちらも利益が出せて初めて長続きする。挑戦する人を応援したい気持ちは本物ですが、なあなあにしてしまったら双方が困る。そのバランスだけは、ぶれないようにしています。

Big Advanceとの出会い ビジネスマッチングは電話帳!?
─ Big Advanceとの出会いは、どんなきっかけだったんですか?
金融機関の担当者に「うちの仕事に合うお客さん、どこかで紹介してよ」って声をかけたことが始まりです。そうしたらビジネスマッチングのサービスを教えてもらって、じゃあやってみようかと。
実際に使ってみると、これまで出会えなかった企業さんとつながれる機会が生まれました。「電話帳みたいだな」と思いながら使ってます(笑)。
印象に残っているのは、沖縄の企業さんとの出会いです。ある素材の加工をご依頼いただいて、とにかくやってみようと、あらゆる機械を試しました。ただ、最終的にはその素材は機械との相性が難しくて、対応できないとお伝えするしかなかった。本当に申し訳なかったんですが、できることとできないことは正直に言わないと、お互いのためにならないんですよね。今回はうまくいきませんでしたが、試行錯誤することが大事なんです。出会いの一つひとつを大切にして、積み重ねることで次につながると思っています。
そういう意味でも、発信が足りないとずっと感じていました。テレビで紹介されるような派手なことはできないけど、当社の技術はもっといろいろな商品を生み出せると思います。Big Advanceを発信の場として、つながれる相手がいるなら使わない手はない。田舎にいながら、全国と仕事ができるということですから。
父の技術は息子へ 縁をつなぎ、次へ渡していく
─ これまでの人生で、転機となった出会いはありますか。
消防団ですね。25歳から入って、もう30年近くになります。最初は地元のつながりで入ったんですが、ここで得たものは本当に大きかった。
消防団では、イベントを仕切ったり、地域の倉庫を借りて飲み屋を作ったり。飲み屋を作るって、施工からですよ。大工仕事にコンクリ打ちに、食品衛生許可証を取ることまで。若い頃は無茶なこともいろいろやりましたね(笑)。
友達とは違うんです。仲間というか、戦友に近いというか。熱い人間が揃っているから、団結力が強い。そういう人たちと一緒に活動したことで、リーダーシップや人との付き合い方を学びました。
「工具が好きで現場が好きで、頭より先に体が動く」そういう自分の気質も、消防団での経験も、仕事での出来事も、全部が今につながっているんだと思いますね。
─ 最後に、今後の展望を教えてください。
工場は今、息子が現場を担ってくれています。父と自分はずっと折り合いが悪かったけど、父が息子に機械の扱いを直接教えてくれました。それは本当に良かったな、と素直に思います。自分が教えるより、ずっとうまくいったはずです(笑)。
今は、漢方に注目しています。全国にはまだまだ昔ながらの漢方屋さんがあって、パック加工のニーズは確実にある市場だと思っています。それこそ、Big Advanceで発信していけば、面白い出会いが生まれるんじゃないかなと期待しています。
でも、何をやるかは時代とお客さんのニーズ次第だと思っています。自分の商品を売るんじゃなくて、お客さんと一緒にものを作りたい。そのためにも、もっとつながりを広げていきたい。田舎の小さな工場ですが、全国の挑戦者に向けて、扉はいつでも開いています。

<会社情報>
| 株式会社藤枝パック | |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県藤枝市滝沢2028-1 |
| 設立 | 2007年 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


