2025年11月20日

協伸商事の働き方改革
妻の視点が変えた人材戦略

「残業は当たり前なの?」――2年前、協伸商事株式会社の経営に加わった内藤美由紀氏の率直な疑問が、福岡県大野城市で54年続く食肉卸売会社を変えました。現場から社長になった内藤英二氏にとって、長時間労働は30年間の「当たり前」。しかし様々な雇用形態を経験してきた美由紀氏の新しい視点が、会社の働き方を変えるきっかけとなりました。労働時間の大幅短縮、休日増加、Big Advanceでのホームページ開設。改革の結果、人材が定着し、20代の採用にも成功しています。「頑張った分を従業員に還元し、家族も含めて幸せに」という想いで、夫婦二人三脚の経営改革を進める内藤ご夫妻に話を伺いました。

協伸商事株式会社 代表取締役 内藤 英二 様 / 取締役 内藤 美由紀 様

54年続く食肉加工・販売会社 3代目は生え抜き社長

─まず、御社の事業概要について教えてください。

内藤代表 当社は食肉の加工と販売を行っている会社で、今年で創業54年目になります。

主な事業は2つあります。1つは枝肉という骨が付いた状態のお肉から骨を取って、部分肉に分けていく仕事です。もも肉やバラ肉など、いろんな部位に分けて、スーパーや量販店、精肉店に納品しています。もう1つは、その部分肉をスライス加工して、学校や病院、飲食店などに卸す事業です。

─内藤代表のキャリアについて教えてください。

内藤代表 私は高校卒業後、18歳から同じ職種の会社で2年間働き、その後20歳の時に協伸商事に入社しました。入社当初は工場内で脱骨など加工の仕事を3年ほど経験しました。その後は営業に移り、11年前(2014年)に社長になるまでルート営業などを担当していました。

─経営については、どのように学ばれたのですか?

内藤代表 完全に自己流ですね(笑)。社長になった時は、本当に何も分からない状態でした。引き継ぎというのはなかなか難しいもので、正解なんてないと思うんです。さまざまな経験をさせてもらって、今があるという感じです。

実は高校の時から、社長になりたいと思っていました。単純に、社長になったらお金持ちになれると思っていたんです(笑)。32年前にこの会社に巡り合って、もしかしたらチャンスがあるんじゃないかと思いながら、頑張ってきました。

食の安全認証取得 狙いは従業員の意識改革

─この32年間で、食肉業界はどのように変化しましたか?

内藤代表 大きな転機は、20年以上前のBSE、狂牛病の問題です。BSE以降、和牛、交雑牛、ホルスタインなどの種別を明確に区別しなければいけなくなりました。個体識別番号をつけることで、さまざま仕事も増えて、業界全体が複雑化しました。

─そうした中で、「食の安心・安全五つ星店(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理実施店)」に認定されていますね。

内藤代表 はい。ただ、お客様に対してというより、従業員に対しての意識づけという側面が大きいです。「安心で安全なものを提供しましょう」「綺麗なところで作りましょう」という意識を社内に浸透させたかったんです。

私は「凡事徹底」という言葉をよく使います。清掃や整理整頓、清潔さといった基本的なことを徹底する。自分が食べると思って商品を作る、自分が買うと思って作る。誰でもできることを誰よりも丁寧にできる人になろう。そういうことをみんなに伝えています。

オーナーとなり夫婦で挑んだ働き方改革

─美由紀さんが会社に入られた経緯を教えてください。

美由紀さん 私が入社したのは2年半前です。それまでは畑違いの業種で普通の会社員をしていました。

内藤代表 11年前に私が社長になり、3年前に今度はオーナーとして会社を買い取ることになったんです。それまでオーナー一族の方々が取締役などにいらっしゃったのですが、全員出ていかれることになりました。ただ、自分ひとりではできないし、経理のことも何も分からない。それで妻に入ってもらうことにしたんです。

美由紀さん 本当に急でした。会社を買い取る3ヶ月前くらいに言われて(笑)。会社の事業内容はもちろん、業績も、どんな方々が働いているのかもわからない状態でした。でも選択肢はない(笑)。もう、一緒に戦うしかないという感じでした。

人生で一番の転機だったと思います。ものすごく勉強しました。

─会社経営に入られて、どのようなことを感じましたか?

美由紀さん それまで私は会社員をしていて、会社に色々不満もありましたが、今考えたら全部ありがたいことだった。どれだけ会社に守られていたんだろうって、ひしひしと感じました。

逆の立場になって初めて分かったんです。会社を経営している人たちは本当にすごいと思います。経営者の方々を尊敬の眼差しで見られるようになりましたね。

一方で、正社員、パートタイム、短期雇用と、いろんな労働条件で働いてきたからこそ、ここで働く方々の気持ちがすごく分かるんです。会社に入って、「残業は当たり前なの?」「こんなに有給が取れないの?」と驚きました。

─これまでのご経験から、働き方改革を進められたのですね。

美由紀さん まず、労働時間を大幅に短縮しました。今は朝6時半から午後3時半までの勤務です。終業後は自分の時間ができるので、夕方から何をしようかと、みなさん楽しそうにしています。休日も増やしましたし、有給も取りやすい環境にしました。

内藤代表 私は長時間労働が当たり前だと思っていたんです。朝早くから夜遅くまで働いて、有給も結婚式で休むのに使うくらいでした。

美由紀さん 私の改革は、社長にとっては「そんなに優遇しちゃって…」と思うくらいだったと思います(笑)

内藤代表 正直、「もっとやれ、もっとやれ」と思ってしまう部分もあるんですけど(笑)。それじゃダメだと分かりました。30年間の私の「当たり前」は当たり前じゃなかったんだって気づかされました。「勤務時間内に終わらせたら早く帰っていい」という方針にしたら、ちゃんとその時間内に業務を終わらせるようになったんです。

結果として、人が辞めなくなりましたし、みんな生き生きと働いてくれています。

ホームページが信用の証に 若手採用に成功

─Big Advanceを導入されたきっかけは?

美由紀さん 人材確保のためにずっとホームページを作りたかったんです。求人を見た時、まずはホームページを見ますよね。ホームページがないという時点で、もう選ばれないんじゃないかと思っていました。

そういったタイミングで、これまでお付き合いのなかった金融機関の方がたまたま営業に来られて、Big Advanceをご紹介くださったんです。営業の方がとても積極的で、「一緒にやりましょう」とサポートしてくれたこともあって、トントン拍子で話が進みました。

実際、Big Advanceのホームページは「これだったら私もできる」と思える仕様になっていて、本当にすぐにできあがりました。

─実際に、ホームページの効果はありましたか?

美由紀さん ありました。面接の時に「ホームページを見ましたか?」と聞くと、必ず「見ました」と言われます。20代の方を1人採用したんですが、ホームページのおかげだと思っています。

内藤代表 今の若い世代は、まずはネットで調べるじゃないですか。ホームページがなかったらどういう会社か分からないですよね。応募する方のご家族もネット検索すると思うんです。「ホームページも何もないけど、大丈夫なの?」ってなりますよね。

─人材確保の課題は他にもありますか?

内藤代表 常にありますね。今、従業員は50代以上の方が多いんです。若い人たちにベテランの技術を伝えていきたいと思っています。

お肉の仕事は特殊で、入ってすぐできるものではないんです。一頭一頭、肉の付き方や骨の大きさが違う。それを包丁できれいにさばくんです。教えるのが本当に難しい仕事です。

美由紀さん だからこそ、人材教育のマニュアル化が今の課題です。動画に残して、新しい人が入ってきた時に「これを見てください」と言えるようなシステムを作りたいと思っています。

社員旅行復活 仕事以外のコミュニケーションも大切に

─従業員の方々とのコミュニケーションはどのように取っていますか?

内藤代表 久しぶりに社員旅行に行きました。コロナ禍以降できていなかったんですよね。近場の温泉に、1泊で行ってきました。

美由紀さん 土日を会社のためにつぶすのは、みなさん嫌だと思うんです。だから金曜日の夕方出発にして、土曜日の昼に帰ってくる日程にして、日曜日はしっかり休めるようにしました。この提案をしたらみなさん喜んでくれましたね。

内藤代表 泊まりだと夜が長いんですよね。普段できないような話もできました。仕事だけではなくて、みんなでどこかに行く、みんなで何かをやるっていうのは大切なことだと思っています。

従業員の幸せが会社を成長させる。前を向いて歩む社員一丸の全員経営

─今後の展望について教えてください。

内藤代表 具体的な数字目標は持っていません。ただ、従業員のみんなが同じ方向を向いて、同じ目標を持てたらいいんじゃないかと思っています。「何時に終わろう」と決めたら、それに向かって頑張ってくれる。「これだけ売り上げたら給料がこれだけ上がる」と言ったら、それに向かって頑張ってくれる。そうやって目標を達成したら還元する仕組みを作っていきたいですね。

それで、従業員もそのご家族も幸せになってもらいたいです。給料をいっぱいもらって、休みも増えて。「協伸にいてよかった」と言ってもらえたらいいなと思っています。

そして、やっぱり一番は、自分が幸せにならないといけないと思っています。

─最後に、お二人にとっての印象的な「出会い」を教えてください。

内藤代表 32年前、前会長に協伸商事に誘ってもらえたことですね。当時、別の会社に勤めていて、配達に来ていたところ、「うちに来ないか」と言ってくださったんです。住む場所も生活に必要なものも全て用意してもらって、協伸商事での人生が始まりました。

会長には多くのことを教えてもらって、感謝していることがたくさんあります。

美由紀さん やっぱりこの会社、ここで働くみなさんとの出会いですね。全く違う業種から来て、すごく勉強になりました。

─ちなみにお二人はどこで出会われたんですか?

内藤代表 地元で、20歳ぐらいの時です。同級生なんですよ。

美由紀さん 一緒に働くようになって、大変だけど、毎日が楽しいです。楽しくしなくちゃいけないって思っている部分もあります。それに、社長はいつも前向きで、絶対後ろ向きなこと言わないんです。明るい未来しか言わない。それってすごいことだと思っています。本当に尊敬できるところです。

内藤代表 でも夜は眠れないんですけどね(笑)

<会社情報>

協伸商事株式会社
所在地福岡県大野城市御笠川4-12-9
設立1971年2月
URL

https://www.big-advance.site/c/152/1957

※情報と肩書は取材当時のもの
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