2人創業から年商3億円に成長
リオテックが見据える次のステージ

静岡市駿河区に本社を構える株式会社リオテック。同社は工場で使われるFA(ファクトリーオートメーション)装置を設計から施工まで一貫して手がけています。創業者2人が前職からの信頼関係を活かして事業を拡大し、現在は13名の体制で年商3億円規模まで成長しました。Big Advanceのビジネスマッチングを活用し、継続取引先を開拓、売上10億円を目指す組織づくりに取り組んでいます。代表の中川裕己氏に、創業の経緯から今後の展望まで詳しくお聞きしました。
株式会社リオテック 代表取締役 中川 裕己 様
社員2人のスタートアップ企業が上場企業と取引開始
─創業に至った経緯を教えてください。
私と取締役の宮城島の2人で2018年に創業しました。2人とも同じ会社で14年ほど一緒に働いていて、私が設計部署、宮城島が組み立て部署にいました。部署は違いましたが、よく連携していたんです。
宮城島が先に辞めることになったので、「じゃあ一緒にやってみようか」ということになりました。最初は法人化するつもりはなく、お互い個人事業主で、私が設計、宮城島が組み立てというようにコラボができればいいなという軽い気持ちで始めたんです。
─個人事業主から法人化に至った理由は?
幸い、長年お付き合いのあった上場企業の担当者の方が上層部に掛け合ってくださり、常務さんの前で事業内容をプレゼンする機会をいただくことができました。通常、創業したばかりの2人だけの会社が上場企業と取引口座を開設するのは困難ですが、14年間築いてきた信頼関係のおかげで実現することができました。
業界では珍しい「一貫製造体制」で年商3億円達成
─事業の特徴と強みについて教えてください。
当社はFA装置の設計から施工まで一貫して行う会社です。工場で使われる検査機や組立機などのオートメーション化機器を製造しています。
この業界では、一部のセクションだけを手がける会社は多いんです。加工だけ、電気だけ、ソフトだけ、設計だけという具合です。当社のように装置全体をパッケージとして提供する会社は珍しいです。どうしても人とお金がかかりますから。
基本的にはお客様から「こういうバラバラの部品があって組み合わせたいのだけれど、これを何秒で組める機械を作れますか」とか「時間当たりに作れる個数はいくつですか」とかご相談いただくところから始まります。
現在の取引先を見ると、自動車関係が6~7割を占めますが、幅広い業界に対応できると自負しています。医療関係なども手がけており、精密な組立工程の自動化装置を提供しています。コロナ禍では新たな需要が生まれました。医療用ウェットティッシュの製造装置で、袋とティッシュがバラバラな状態から、それらを組み合わせて商品化する機械を開発しました。コロナで需要が急増した市場に対応できたことで、新しいお客様との取引も始まりました。
リスク分散のためにも今後の取引先は3業種ぐらいを柱にしていきたいですね。
─売上の推移はいかがでしたか?
二期目で年商5000万円程度でした。装置1台で2000万円程度するので、5000万円だとまだまだ回転が必要な感じでしたね。現在は3億円程度まで成長しています。
人員も段階的に増やしてきました。毎年2人ずつぐらいのペースで採用を続けて、現在は私と宮城島を含めて13名の体制です。
創業まもなく商社との取引実現 Big Advanceで1000万円案件獲得
─実は2年前(2023年)にBig Advanceのマッチングでの成功体験を取材させていただきましたが、改めて導入されたきっかけを教えてください。
金融機関の担当者の方から勧められたのがきっかけです。営業担当がいないことが課題だったので、営業強化のために導入しました。
当時マッチングした企業とは継続的な取引につながっています。一社は当社では対応できない木型を製作している企業で、現在も定期的に製作を依頼しています。もう一社は商社ですね。スタートアップで商社とマッチングすることは難しいですし、事業がもっと拡大してからつながれたらと思っていたので、立ち上げの段階でお取引できて驚きました。当時から売上が1000万円程の案件をいただきました。
現在は紹介の紹介というかたちでお取引いただく企業も多くなりましたね。

(左:取締役 宮城島氏 右:静清信用金庫 前川氏)
─今後、どのような企業との取引を希望されていますか?
製造業であれば、まずはお話を聞いてみたいですね。金属加工会社などとの連携も考えています。ただ、できれば静岡市内、静岡県内での取引が理想です。
当社は機械を製造して納品・立ち上げまで行うので、アフターフォローを考えると地理的な近さは重要な要素です。
─ホームページなどは活用されていますか?
今後、求人で使えたらと考えています。写真をたくさん掲載できますし、会社の様子などをビジュアルで伝えられれば、安心して応募いただけるのではないかと考えています。
マンパワー依存からの脱却 10億円企業を目指した組織改革
─今後の展望について教えてください。
まずは売上10億円を目指しています。業界では売上1~3億円の会社はたくさんありますが、3億を超えるには壁があると言われていて、10億を超えると業界内でも名前が知られるようになります。
当社の場合、私と宮城島を両翼にしてマンパワーに依存している部分が大きく、これだと3億円程度が限界だと思うんです。10億円を達成するには、もっと組織化・システム化を進めていく必要があります。
─具体的にはどのような取り組みを?
各セクションで人材採用が必要です。特に営業担当の採用が急務ですね。営業は技術営業的な側面があり、単純に「これを売ってこい」というわけにはいかないのが難しいところです。機械の知識がないと、お客様に聞かれた時に答えられませんから。
今は私と宮城島の二人で営業をしていますが、このままでは10億には届きません。私たちの右腕になるような人材の育成が重要だと考えています。
一人ひとりとの出会いを大切に 創業パートナーと社員への信頼
─これまでの人生で印象に残っている出会いはありますか?
そうですね、今まで出会った人、一人ひとり全員です。昔より物事を深く考えるようになって、誰しも良いところも悪いところもある。そういう一人ひとりとの出会いが全部大事だと思っています。
宮城島とは馬が合いますね(笑)。税理士さんからは「友達同士で経営すると絶対もめるから一緒にやらない方がいい」と言われましたが、宮城島とダメだったら誰とやってもダメだと思ったので、一緒にやることにしました。結果的にうまくいってよかったです(笑)。
その税理士さんも「起業するのは簡単だけど、継続するには相当な覚悟が必要」と言って、資本金を250万円から400万円まで上げることを勧めてくれました。あの時の覚悟が今の基盤になっています。
そして社員たちとの出会いも大きいですね。未経験で入ってくれた人ばかりですが、みんな真面目で素直で、スキルをつけて戦力になってくれています。後輩の面倒を見ている姿を見ると、本当にありがたいなと思います。
創業7期目で挑戦フェーズへ 新分野開拓への意欲
─将来的には新たな事業も検討されていますか?
今のビジネスモデルは継続して拡大していきますが、もう1つ別の柱があるといいなと考えています。
3Dプリンターなどの新しい技術分野に注目しています。日本は3Dプリンターの分野では遅れているんです。中国やアメリカでは普通に使われているのに、日本では「3Dプリンターで作ったものがダメだった場合、誰が責任を取るのか」という保守的な考えが強いんです。
そこに新しいビジネスチャンスがあると思っています。まだ明確にこれだというものはありませんが、模索を続けています。
─最後にメッセージをお願いします。
この業界でセットメーカーとして装置全体を手がける会社は減ってきています。上の世代がやめていく中で、私たちが続けていけば自然とパイを取れる可能性もあります。
ただ、それだけに頼らず、新しいことにも挑戦していきたい。Big Advanceのようなツールも活用しながら、10億円、そしてその先を見据えて組織づくりを進めていきます。
創業から7期目を迎え、ようやく基盤ができてきました。これからが本当の勝負だと思っています。
<会社情報>
株式会社リオテック | |
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所在地 | 静岡県静岡市駿河区東新田4-7-2(本社) 静岡県静岡市駿河区東新田4-4-16(第2工場) |
設立 | 2018年11月 |
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※情報と肩書は取材当時のもの |