2025年08月25日

「ご縁は成長の礎」谷口シール印刷が語る
100社面談を実現するマッチング活用法

1976年創業、来年50周年を迎える大阪府豊中市の谷口シール印刷株式会社。現場経験豊富な3代目社長の谷口真司氏が、リーマンショック時の東京進出や8年半の単身赴任を経て、ビジネスマッチングでの全国展開を加速させています。これまでに100社以上の面談を実現、オンライン商談を活用し遠方企業との取引も拡大。クリエイターとのコラボレーションでユニークな「文字マップ」47都道府県を制作、大阪府ものづくり優良企業賞なども受賞しています。オンライン商談とデジタル営業で遠方企業との取引も拡大中です。変化を恐れず挑戦し続ける谷口社長に、次世代を見据えたものづくりと組織強化について詳しく伺いました。

谷口シール印刷株式会社 代表取締役社長 谷口 真司 様

様々な賞を受賞 大阪のシール印刷会社49年の歩み

─御社の創業からの歴史と、社長就任の経緯について教えてください。

当社は大阪で1976年に父が創業し、1980年に有限会社として法人化しました。今年で創業49年、来年50周年を迎えます。2代目は姉の婿で、2001年から約20年間社長を務めました。私は3年前の2022年に社長に就任しましたが、その前は東京に8年半ほど単身赴任していました。

最初は機械が2、3台しかない小さな会社でした。大学4年生の時からアルバイトで印刷機を回し、そのまま入社してオペレーターを約10年務めました。その後は営業と現場、経理と現場といった具合に、異なる業務を半分ずつ経験しながら会社の全体像を把握していきました。

─御社の強みを教えてください。

当社は、糊殺し(のりごろし・シールやラベルの一部の粘着力をなくす)加工によるPOPラベルや立体ラベル製造における高い技術力が強みです。全日本シール印刷協同組合連合会主催のシール・ラベルコンテストの規定課題で一位になったほか、世界ラベルコンテスト部門別で入賞するなど過去複数回のラベルコンテストでも入賞しています。また、令和6年度の「大阪ものづくり優良企業賞」も受賞させていただきました。

リーマンショック時の東京進出、売上0から1億円超え

─単身赴任を経験されたという東京営業所開設について教えてください。

東京営業所を開設したのは、実はリーマンショックの時という最悪のタイミングでした。もともと関西の取引先が東京に本社や営業所を持っていたり、銀行の紹介で東京の顧客もいたので、本格的な営業拠点が必要でした。

最初は新人を3か月研修して送り込み、私が週1回、1泊2日で通っていました。年間1,300万円ほどかかる経費に対して初月の売上は0、翌月が約7万円という厳しいスタートでしたが、現在は年間1億3,000万円程度まで成長しています。

3年目頃に軌道に乗り始めたのですが、まだフォローが必要だということで前社長と相談して私が東京に単身赴任することになりました。

─東京営業所と大阪本社では、営業スタイルが異なるそうですね。

はい、まったく違います。大阪は配達中心のルート営業で、近所のお客様との関係性を大切にした営業スタイルです。一方、東京は基本的に新規開拓がメインで、出荷も宅配便を使います。

東京の営業担当は新規開拓に慣れているので、いろいろな手法を駆使してアプローチしてくれます。ただし、既存顧客のフォローは苦手です。逆に大阪のルート営業担当は、新規開拓が苦手という課題があります。

コロナ禍で業績が厳しい時期には、その違いが顕著に現れました。新規開拓ができる東京の営業力の重要性を改めて実感しました。

現在は月1回、東京と大阪でZoomを使った営業会議を開催しています。東京は既存顧客のフォロー、大阪は新規開拓という課題があるので、お互いの得意分野を活かした情報交換を行っています。得意先だけでなく、仕入れ先の情報なども共有し、両拠点の営業力向上に努めています。

100社面談を実現したビジネスマッチングのコツ

─Big Advanceを導入されたきっかけと活用方法について教えてください。

金融機関の担当者から「Big Advance」というビジネスマッチングができるサービスを紹介されました。月額3,000円で、3か月無料キャンペーン中だったので「効果がなかったらやめよう」という気持ちで試してみることにしました。

東日本を東京営業所、西日本を大阪本社の営業に任せて開始、東京のスタッフは慣れたものでスムーズにスタート、逆に大阪のスタッフは苦手意識があるのか全く関係のない業種にアプローチしていたり、継続性の見込めない単発案件へ申し込みをしていたり、期待した成果が出ていませんでした。

この状況を受け、大阪本社は私が直接オペレーションを担当することにしました。最初は試行錯誤を重ねましたが徐々にコツが掴めてきて、面談や成約につながるようになりました。シール関連のニーズは幅広い業界にありますが、農業や林業、建設業では案件が少ないことが分かったので、製造業を中心に毎日コツコツとアプローチしています。

また、営業地域も段階的に広げていきました。最初は関西2府4県からスタートし、次に中国地方、さらに西日本全体に範囲を広げています。意外にも案件があったのが福井県で、鳥取や島根にも一定の市場規模があることが分かりました。

これまでに100社程度と面談を行い、つながった会社からの紹介で新たな発注をいただくケースもあります。

やはりご縁は成長の礎だと思います。また、営業担当には新規獲得の楽しさを味わってほしいと思っており、そのためにも積極的に取り組んでいます。

─遠方企業との商談はどのように進めていますか?

コロナ禍でZoomを活用するようになり、これが遠方企業との商談に大変役立っています。鳥取、島根、福井など、これまで直接訪問が難しかった地域の企業とも面談できるようになりました。

近距離なら片道20キロ程度までは直接お伺いしますが、それ以上の距離はオンライン面談を提案しています。最初は企業側にも抵抗があるかもしれませんが、「Zoom、もしくはメールやお電話でも対応します」と選択肢を提示することで、多くの企業に受け入れていただいています。

面談後は、その地域の文字マップ(後述)を同封してサンプルを送付しています。すぐに返答がなくても、定期的にフォローアップを行い、将来的な取引につなげています。

Big Advanceでつながったお客様とは、私がアポイントを取って、その後の商談は営業担当に引き継ぐという体制を取っています。私は営業専門ではないので、つながるまでの役割を担い、具体的な商談は経験豊富な営業担当に任せています。

クリエイターとの出会いで「文字マップ」47都道府県制作

─展示会出展やクリエイターとのコラボレーションについて教えてください。

リーマンショックで売上が落ちた際、大阪は新規営業が苦手だったため、どうにかしたいと思い展示会への出展を思いつきました。展示会に出すには商品が必要ですが、当社のような印刷会社は受注生産型で、作っているものが相手の商品になってしまうので勝手に出品できません。また展示装飾のアイディアも必要でした。

周りに相談したところ、社労士さんの紹介で産学官民連携の交流会「関西ネットワークシステム」に参加してみることにしました。そこで「MOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)」の常設展示を知り、月2万円で200社程度が出展している展示スペースに参加できることを知りました。最初は展示許可がもらえた商品を展示しました。

展示用の商品作りで困っていた時に、大阪市の「MEBIC(クリエイティブネットワークセンター大阪)」というクリエイターと企業を結びつける組織を紹介されました。そこで出会ったクリエイターと「ペーパーサミット」という「紙(印刷)」の専門展示会に出展することになりました。

その中で生まれたのが「文字マップ」です。都道府県の形にカットされたシールに、市区町村の名前を実際の形で描いた商品で、展示会では「どちらのご出身ですか?」と聞いて、その都道府県のシールをお渡しするという企画が大好評でした。

取材担当の出身が北海道なので北海道の文字マップシールをいただきました

最初は2府4県からスタートし、現在は47都道府県すべてを制作しています。北海道や静岡県など、複雑な形状の都道府県も細かく再現しており、「じわじわくる」商品として人気を集めています。

一つの出会いから次へ広がる人脈の力

─これまでのキャリアの中で、転機となった出会いはありますか?

一番大きな転機になった出会いは、社労士さんとの出会いですね。私が一人で抱えていた経理業務が複雑になってきたことに加え、社長に就任することが決まった時に社労士さんを紹介いただきました。その方に出会えたことで、その後のMOBIOやMEBICの担当者とつながることができましたし、さきほどお話しした文字マップのクリエイターとも出会えました。

東京の単身赴任先では、大学時代の後輩との再会がきっかけで経営者の方などが集まる会に参加するようになりました。そこには様々な業界の方がいて、そこから仕事に発展したケースもあり、人脈の広がりの面白さを実感しました。

こうした出会いの積み重ねが、現在の事業展開の基盤になっています。一つの出会いから次の出会いへと広がっていく連鎖の力を感じています。

次の50年へ、事業承継と組織強化

─今後の事業展望について教えてください。

まずは売上向上が最優先です。今期の目標はクリアできそうで、毎年少しずつでも成長を続けていきたいと考えています。

販路開拓については、企画会社や印刷会社を通じた受注だけでなく、直接取引ができる先を増やしていきたいと思っています。直接取引だとこちらから提案もできますし、面白さがありますよね。

─人材育成や組織強化についてはいかがでしょうか?

社長就任後、まず毎朝の30秒朝礼と年3回の個人面談を導入しました。人事評価システムも2年間かけて構築しましたが、評価の難しさを実感しています。現在の課題は広報と総務の強化です。

また、社員の給与も上げていきたいです。リーマンショック以降、なかなか給与を上げられませんでしたが、少しずつ売上が安定してきたので、社員の待遇改善を積極的に進めています。

今回の賞与では枠だけ決めて、配分は各部署の責任者に任せるという責任権限の委譲も行っています。私は70歳で引退すると決めているので、将来的には叩き上げの社員に社長職を任せるべく、次の世代を育てていくこともやっています。

積極的な新規開拓で事業を成長させ、社員一人ひとりが活躍できる組織づくりをしていく。来年の50周年を節目に、次の50年に向けた基盤作りをしっかりと進めていきたいと思います。

(左:谷口社長、右:池田泉州銀行・的場氏)

<会社情報>

谷口シール印刷株式会社
所在地 大阪府豊中市服部西町5-17-20
設立 1976年5月
URL

https://www.ts-p.co.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの
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