和牛の原点「但馬牛」の誇りを守り100周年へ
老舗精肉店「平山牛舗」の革新
兵庫県養父市で1930年に創業し、間もなく100周年を迎える「平山牛舗」。日本が世界に誇るブランド和牛のルーツであり、世界農業遺産にも認定された但馬牛(たじまぎゅう)の聖地で、地域に根ざした商売を続けています。
今回の主役は、大阪の監査法人で公認会計士として活躍した後、家業を継ぐため故郷に戻った平山和貴氏。「商売は掛け算」と語る平山氏は、会計士時代に培った経営的視点と、産地ならではの鮮度を武器に、伝統ある精肉店のアップデートを試みています。「但馬牛」へのこだわりから100周年に向けた展望、「Big Advance」の活用術まで、若き後継者の想いを伺いました。
有限会社平山牛舗 取締役/但馬牛アンバサダー/公認会計士/税理士 平山 和貴 様
創業から90余年、地域に愛される「町のお肉屋さん」
─まず、御社の事業概要と、扱われている「但馬牛」の特徴について教えてください。
当社は但馬地方の養父市にある、町のお肉屋です。但馬牛をメインに、店頭での小売りに加えて、飲食店やホテルへの卸売りを行っています。私が帰ってきてからはWEB販売にも力を入れています。創業は古く1930年ですが、当時は精肉の販売だけではなく食堂も営んでいました。その後、商売の幅を広げ卸売りに力を入れるようになりました。牛肉、豚肉、鶏肉をすべて扱っていますが、自社で加工しているハンバーグやコロッケなどのお惣菜も大きな柱です。
取り扱っているブランド牛「但馬牛」は、実は日本三大和牛である神戸ビーフ、松阪牛、近江牛のすべての「素牛(もとうし)」なんですよ。
─「素牛」ということは、但馬牛がなければ今の有名な和牛ブランドも存在しないということですね。
その通りです。非常に血統が良く品質が高いので、全国から買い付けに来られます。現在の黒毛和牛の99パーセントに但馬牛の遺伝子が引き継がれていると言われるほど、和牛のルーツとなっている牛なんです。
2023年には、「人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム」が世界農業遺産に認定されました。牛が田畑を耕し、その堆肥で田畑を肥やし、収穫物(ワラや野草)を牛が食べる。さらに、その恵みを人間がいただくことで、人・牛・大地が命を繋いでいく独自の循環が評価されたんです。また、農林水産省のGI(地理的表示保護制度)でも、日本で2番目に認定されたのが但馬牛。国が日本の食の遺産として守っていこうとしている存在です。
あえて神戸牛ではなく「但馬牛」にこだわる理由
─よく耳にする「A5ランク」などの格付けには、どのような意味があるのでしょうか。
実は、アルファベットの「ABC」は美味しさの基準ではなく、歩留まり(ぶどまり)といって、一頭の牛からどれだけ肉が取れるかという基準なんです。後ろの「5」などの数字が、サシ(霜降り)の入り具合を示しています。
但馬牛の中でも、サシの入り具合や飼育環境などの厳しい基準(6番以上)をクリアした牛だけが「神戸牛」と認定されます。つまり、本質的には同じ血統の牛なのですが、より高い基準を満たしたエリートが神戸牛という名称を名乗れるんです。
─なるほど。では、やはり数字が高いほど美味しいということですか?
市場価値としては数字が高いほど高値で取引されますが、必ずしも「サシが多い=美味しい」とは限りません。最高ランクの12番は、サシの入りは非常に美しいですが、ヘルシー志向の方も多いので好みは分かれるところです。
当社は「神戸肉流通推進協議会」に加盟していて神戸牛も販売できますし、扱う但馬牛のほとんどが神戸牛に相当する肉質となっています。ですが、そういったものもあえて「但馬牛」として販売しています。全国的には神戸牛と出した方が高く売れますし、一歩県を出ると「但馬(たじま)」という字すら読んでもらえず、「たんば牛」と言われることも多いのが実情です。しかし但馬の地で長年但馬牛を扱ってきた歴史があり、神戸牛の元祖でもある「但馬牛」という名前にこだわっていきたいと思っています。
強みは希少部位まで入手できる「一頭買い」と圧倒的な鮮度
─御社ならではの強みは、どのような点にあるのでしょうか?
大きな特徴は「一頭買い」です。多くの店で言う「一頭買い」は、食肉処理場で枝肉(不要な部分を取り除いたかたまり肉)の状態にしたものをせりで仕入れることを指しますが、当社は文字通り「一頭丸ごと」。畜産農家さんから直接生きた牛を仕入れるため、枝肉もホルモンもまとめて買い付けます。特にホルモンの処理まで自社で行っている店は、兵庫県内でも、全国的に見ても珍しいのではないでしょうか。
─だからこそ、鮮度も違うのですね。
そうですね。例えばその日の午前中に食肉処理場で解体された直後のレバーを、その日の昼過ぎには仕入れることができます。牛を一頭買いしているので希少部位も手に入り、さらにホルモンは格段に新鮮なものが手に入る、というのが大きな強みですね。
あとはお惣菜についても、他社に任せるのではなく、すべて自分たちで作っています。そこは自信がありますね。技術に長けたベテラン職人に加えて、最近は高校を出たばかりの若い世代も入ってくれました。人手不足と言われる時代に、人員が充実していてありがたい状態です。


ユニークな商品名はお母さまが名付け親
商売は「強みの掛け算」。監査法人の経験を家業の経営に活かす
─平山さんは以前、大阪の監査法人で公認会計士として働かれていたそうですね。なぜこの道を選び、戻ってこられたのですか?
家業をやる場合、肉のスペシャリストになるのは当然として、自分に何か別の「強み」がないといけないと思っていたんです。商売は強みの掛け算ですから、もう一つの軸が欲しくて。
会計はどのビジネスでも通じる共通言語です。監査法人では上場企業の業務効率やしっかりとした組織体制、いわば「ベストプラクティス」を間近で見ることができました。その汎用性の高いスキルが、今の経営に非常に役立っています。
─監査法人時代は、いかがでしたか?
働き方改革の過渡期でしたが、なかなか激務でしたね(笑)。ですが、そこで出会った上司は本当に器が大きく、尊敬できる方でした。色々なタイプのメンバーがいる中で、チームの和を大切にしていて、指示の出し方や教え方も余裕があって。組織をまとめる立場になった今、人に指示したり動いてもらうことが増え、改めてすごいなと思いました。
カタログ掲載や福利厚生。実務に即したBig Advance活用
─Big Advanceを導入されたきっかけや、活用状況を教えてください。
金融機関の担当の方が熱心に勧めてくださったのがきっかけです。ちょうど無料期間のキャンペーンがあったので、一度やってみようと思い登録しました。そうしたら、Big Advanceの「ビジネスチャット」を通して、金融機関の方から「販路拡大のカタログに載せませんか?」といった情報提供をいただけるようになりました。掲載してもらったら、カタログ経由での注文が入るようになり、これはもう続けていこう、と思いました。こういった情報を定期的にいただけるだけでBig Advanceの月額費用を遥かに上回る効果を実感できているので、とてもありがたいです。
─金融機関からの情報配信を受け取れるのは良いですよね。マッチング機能やクーポン(FUKURI)についてはどうですか?
マッチングに関しては、包装資材の提案など「いいな」と思う商談が届くことがありますが、タイミングが合わなかったりで、現時点では商談成立には至っていないです。電話でかかってくる営業は当社のニーズに合わないものが多いのですが、Big Advance経由のものは気になるものも多く、今後は一度お話をしてみたいと思います。自分たちから情報を出す側としても使っていきたいですね。
FUKURIには当社からクーポンも出させていただいています。購入金額から5%オフという内容です。今後は内容の変更をするかもしれませんが、ぜひ使っていただきたいですね。また、全従業員分のアカウントも作って、福利厚生の一環としてクーポンが使えるようにしています。個人的にはコメダ珈琲さんの「たっぷりサイズ」にサイズアップできるクーポンを気に入って使っています。

FUKURIに掲載中のクーポン画面
─ほかにBig Advanceで気になっている機能はありますか?
当社は元々ホームページを自社で持っていますが、完全にBtoC向けです。今後はBig Advanceを利用してBtoB(法人向け)の卸売り専用ページを作るのも良いかなと思っています。当社は店舗販売だけと思われがちですが、卸売りもしっかり行っていることを知ってもらい取引を獲得したいです。今はどうしても繁忙期の8月や12月に売上が偏ってしまっているので、BtoBにも力を入れて需要を平準化させていきたいです。
最高の状態で100周年へ。より「親しまれる老舗」を目指して
─最後に、今後の展望をお聞かせください。
当社は今年で創業96年目。あと4年で100周年を迎えます。養父市も人口減少が進んでいますが、だからこそ長期視点を持ち「店頭での小売り」「ECサイト」「ふるさと納税」という三つの柱をしっかり回して、売上を増やしつつ安定した経営を続けていきたいと考えています。
特にお惣菜部門には力を入れたいですね。ブランド牛はどうしても高価ですが、コロッケ一つからでも気軽に買いに来てもらえるようなお店づくりをしていきたいです。町のみなさんの生活の一部に、食卓に、ほんの少しでも当社のコロッケやお肉が彩りを添えることができればうれしい限りです。
─高級店ではなく、「町のお肉屋さん」としてですね。
そうです。がっしりした店構えのせいか同級生からも「入りにくい」なんて言われることもあるのですが(笑)、実際はそんなことはありません。SNS(インスタグラム)での発信も含めて親しみやすさを伝え、地域の方々にとって身近な存在であり続けたいです。
幸い、今は人員もいい状態ですし、土台はできています。これからの数年に注力し、100周年を最高の状態で迎えたいと思っています。

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<会社情報>
| 有限会社平山牛舗 | |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県養父市養父市場381 |
| 設立 | 1930年(創業) |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |


