2026年05月25日

和菓子木型をインテリアに
ハンチャンコーポレートが挑む新しい価値創造

約20年勤めたメーカーを早期退職し、2022年に起業した半林義之氏。和菓子づくりに使われる「木型」のレプリカ販売という一風変わった事業を手がけています。手彫り職人の技が宿った木型を3Dデータで記録し、精巧なレプリカとして再生。海外富裕層へのインテリア販売を目指しますが、加工業者は難航、ECサイトは費用をかけるも作り直し、販路はいまだ模索中。それでも「縁は発信し続けた先にある」と前を向く半林氏に、起業の経緯から現在の取り組みまでを伺いました。

合同会社ハンチャンコーポレート 代表 半林 義之 様

お正月の仏壇で気づいた、菓子木型の危機

─まず、事業の概要と起業のきっかけを教えてください。

当社は和菓子の落雁などに使われる木型のレプリカを制作・販売している会社です。

きっかけは2023年のお正月、仏壇にあるぼたもちに手を伸ばしたとき、ふと「和菓子にも木型を使うんだろうか」と気になって、ネットで調べてみたんです。すると、和菓子をはじめ鋳造用の木型など、かつては多くの職人が手彫りで作っていた木型が、今では一部の自動車部品にしか使われていないほど衰退しているということが分かりました。

菓子木型の中古品を見つけ、実際に手にしてみると木彫りの素晴らしさに感動しました。それが二束三文で売られている。非常にもったいないと感じました。その時の木型は「鯛」「あやめ」「梅」「亀」「菊」の5種類でした。

和菓子店がなくなることも珍しくない時代です。代々受け継がれてきた木型も、お店が閉じれば行き場を失ってしまう。手彫りの技術を持つ職人も年々減っています。後継者問題は木型の世界にも深く影を落としています。

手彫りで作られた菓子木型。一つひとつに職人の技が宿る。

─木型の3Dデータ化サービスから始まったと伺いました。

はい。実際に岡山の木型職人のところへ足を運んで、業界の現状を直接教えてもらいました。職人から聞いたことで、この技術や美しさをどうにか残せないかという想いが強くなりました。

そこで、和菓子屋さん向けに木型の3Dデータを取り、保存するサービスとして始めたのですが、なかなか響かなかった。和菓子屋さん自身が貴重な木型の保存にあまり関心を持っていないこと、新興の製菓メーカーには3Dデータの取り組みが理解されにくかったこと、この2点が大きな反省点でした。

これを機に方向性を変え、木型をインテリアとして販売する事業へ切り替えました。ターゲットは国内にとどまらず、海外の富裕層向けのECサイトも構築しています。

3Dデータで職人技を「記録」。失敗だらけの試行錯誤

─どのような方法でレプリカを作るのですか?

まず木型を3Dデータとして計測・記録します。そのデータをもとに、機械加工でレプリカを制作するという流れです。

ただ、機械加工が思いのほか難しく、多くの加工業者に断られました。加工機械メーカーに直接問い合わせたこともあります。データを見てもらったところ、職人の手彫りによる微細な表現を機械で再現することは、ほぼ不可能。加工できる業者は思い浮かばない。という回答でした。

それでも諦めずにデータ形式や彫刻機械加工について調べ続けて、ようやく試作にこぎつけました。北海道から広島まで16社ほど当たりましたが、実際に試作まで進めてくれたのは3社ほど。今の加工先はそのうちの1社です。半年かかりました。

面白かったのは、機械加工の職人さんたちの反応です。「実際にやれるかどうか分からないけれど、面白いからちょっとやらせてくれる?」という感じで、職人魂に火がついた方々が現れた。それほど精密で美しいということでしょう。腕試ししたくなる、職人を惹きつける木型なんです。

─ECサイトも苦労されたそうですね。

失敗だらけです(笑)。ECサイトは2回作り直したので、今は3つめのバージョンです。最初は大手通販サイトを参考にして作ったのですが、費用が高いわりに商品のPRが全然できない。例えるなら、軽トラックで十分なのに4トントラックを使っているようなイメージです。

そこで海外向けのECプラットフォームに乗り換えましたが、インバウンドマーケティングの会社から「イメージ訴求ができていない、日本の歴史と和菓子の価値が伝わっていない」と指摘を受けて、また見直しをかけました。

失敗を重ねるたびに、「どうすれば伝わるか」を考え直してきた。そのプロセス自体が今の事業の骨格になっていると思っています。

お墨付きはもらった。あとは「どう売るか」だけ

─販路開拓で苦労されていることはありますか?

価格帯を考えると、国内では百貨店など高級志向の販路が合っているかなと思っています。金属加工の職人さんたちが面白がってくれるほどの精密さがあり、新聞社にも取り上げていただきました。インバウンドマーケティングの専門家からは「海外富裕層向けに刺さる商品だ」とお墨付きをいただいています。着眼点や商品の面白さは、多くの方に認めていただいているんです。ただ、「では実際にどうやって売るか」というところが正直、一番の課題です。

実際に見ていただくと、「良い商品だ」と思ってもらえるのですが、インテリアとしての飾り方や見せ方を伝えることが難しくて。そこで、額縁に入れた状態で販売するというスタイルにたどり着きました。絵画や写真と同じ感覚で、壁にかけて木型の美しさを楽しんでもらえる。それでもスタイリング全体の提案となるとまだ模索中で、販路開拓とあわせて取り組んでいる課題です。

─海外への発信や、今後の展開について教えてください。

海外向けに英語のイメージ動画を制作、配信しました。インテリアとしての飾り方を海外の俳優が紹介する動画で、男性版・女性版の2種類があります。SNS(インスタグラム)での発信も続けており、昨年(2025年)はオーストラリアのシドニービジネスショーにも出展しました。

3年前はなかなかご理解いただけなかった木型のレプリカ化ですが、四日市商工会議所のつながりから四日市の和菓子店と共同で木型のレプリカを制作し、そのレプリカを使って落雁を作る様子をYouTubeで配信しました。現在、京都の城陽市、静岡の浜松市の和菓子店からも、木型の提供を受けてレプリカの制作が進行しています。こうした縁が少しずつ広がっていることは、大きな力になっています。

今後はSNSを含めたプロモーションの回数を増やすこと、そして直接目にしてもらえるリアル店舗への貸し出し数を増やすことが目標です。第一歩として、京都山科区の工芸品ショップで展示販売をしています。

額装した菓子木型のレプリカ(鯛/梅)

和菓子とお茶。Big Advanceがつないだ”必然”の縁

─Big Advanceはどのようにご活用いただいていますか?

ビジネスマッチングでは、具体的な成果という段階ではないのですが、良い反応はいただいています。和菓子ということで、お茶との接点が多いですね。例えば日本茶を販売しているある企業とはコラボレーション企画を模索しています。また、日本茶を輸出している別の企業とは、今後、何か連携できればというお話をしています。輸出業のお話を聞けたことが大変勉強になりました。

私の事業は、商品を見て、触れていただいてはじめて良さが伝わるものです。これまで接点のなかった方々からの問い合わせや、思いがけないつながりが生まれることがBig Advanceの大きな魅力だと感じています。今後の営業提案なども含めて、新しい可能性を探りながら活用していきたいと考えています。

縁は、発信し続けた先にある

─これまでの歩みを振り返って、印象に残っている出会いはありますか?

振り返ってみると、この事業は「人との出会い」で動いてきたと感じています。岡山の木型職人との出会いが業界の実態を教えてくれた。四日市商工会議所のつながりから和菓子屋さんとの縁が生まれ、木型を提供していただけるようになった。

ハンチャンコーポレートを設立するまでの私のキャリアは、電子部品メーカーや小型輸送機器メーカーでの法人営業です。20年以上にわたって培ってきた「ニーズを聞き出す力」「人との関係を築く力」が、今の事業のあらゆる場面で活きています。

社是の『時代と時代をつなぐ』も、アナログの職人技術をデジタルで記録し、世界へ届けるという想いそのものです。Big Advanceも、そういった出会いのひとつになればと思っています。縁というのは、発信し続けることでしか生まれない。これからもその歩みを止めないつもりです。

<会社情報>

合同会社ハンチャンコーポレート
所在地 千葉県千葉市美浜区中瀬1-3幕張テクノガーデンCB棟3FMBP
設立 2022年10月
URL

https://hancorps.com/

※情報と肩書は取材当時のもの
  • SNSシェアこの記事をシェアする

こちらの記事も見る

アクセスランキング

  • 王林さんLP
  • メルマガ会員募集