2025年03月10日

農業の常識を覆す発想力で大手スーパーと商談成約
ビレッジ開発が営む未来の農業の形

愛知県刈谷市にある「次世代型農場でんでん村」では、次世代型農業ハウス「プロファームT-キューブ」を建設し、ミニトマトの栽培を行なっています。このハウス農場を営むのは、不動産業者であるビレッジ開発です。なぜ不動産業者が農業を始めたのか?大手スーパーとの取引を実現した戦略とは?取締役農業部部長の下村氏と、取締役部長の松浦氏にお話を伺いました。

株式会社ビレッジ開発 取締役農業部部長 下村 太一郎 様 取締役部長 松浦 隆 様

不動産業者が取り組む農業とまちづくりへの想い

ービレッジ開発様の主な事業は不動産業かと思いますが、農業を始めたきっかけはなんですか?トマト栽培に至った理由も教えてください。

下村取締役(以下、下村氏と記載):当社は不動産業者なんですが、デンソーの子会社様が物件に入居されていて、懇意にさせていただいていたところ、農業のお話を伺いました。デンソー本社(刈谷市)が農業事業に力を入れていくということで、同じ刈谷市でできたらいいよねと。私たちも思い切ってやってみようということで始めました。今使っているデンソー製農業ハウス「プロファームT-キューブ」の強制換気のシステムを、デンソーさんと一緒に作ったトヨタネさんという会社が、トマト栽培を教える研修コースを開催してくれたんですね。デンソーさんは別の場所でも環境制御装置を使ったトマト農園さんと大規模に取り組まれていることもあり、トマトなら今後デンソーさんとも会話がしやすくなるだろうと思い、トマトを作ることにしました。

松浦取締役(以下、松浦氏と記載):地域の不動産事業者として、町も農地もバランスがとれた開発ができたらいいなと考えています。レクリエーション施設があって、スポーツができて、無農薬野菜が食べられて、農作業などの仕事もある生涯現役で楽しめる村ができるといいな、という当社の創業者の構想もあります。駅前再開発だけではない「まちづくり」への想いですね。

また、トマトは収量と単価のバランスで言うと、それなりに売り上げが立つ品種だと聞きました。1年の中で比較的長期間栽培ができますし、他と差別化するために「機能性表示食品」でいこうということになりました。

「夏作」のトマト栽培に勝機を見出す

ー現在、大手スーパーとお取引がありますよね。Big Advanceに入られたきっかけからお聞きしても良いですか?

下村氏:当社のトマトはGABAとリコピンの量の基準をしっかりクリアした「機能性表示食品」なんですが、初めはこの地域で「機能性表示食品」としてやっても販路が進まなかったんですね。トマトが健康にいいのはみんな知っているので、機能性をうたってもなかなか注文が入らなかったんです。そんな中、碧海信用金庫様からのメルマガで、Big Advanceの商談会イベントの案内が来ました。当時は本当に販路が見つからず苦しかったので、なんでもやろうと思ってBig Advanceを始めました。7月の商談会に参加して、そこで大手スーパーとマッチングできました。7月はトマトが出にくくなる時期なんですね。夏はトマトがよく売れるのに、近年は温暖化の影響で寒冷地でも収穫が少なくなってきています。当社のトマトは作型を変えて夏作にしていたので、タイミングよく商談会に出すことができ、大手スーパーのバイヤーの方の目に留まったようです。

その後、9月末に大手スーパー主催の浜松で行われた商談会にも出展して、仲卸業者様をその場で紹介いただくこともできました。実は他の会社様で、同じように機能性表示食品のトマトを作っているところがあるのですが、なぜ当社を選んだのかとお聞きしたら、愛知県産でこれだけ品質の良いトマトはないのでぜひ夏作を続けて欲しい、と言われました。夏作というのはそれだけ価値があるということですね。

松浦氏:本当に夏場はトマトの収穫が少なくて、単価も上がるんです。そんな時期に、地元産が供給できるということを非常に喜んでいただいています。農業関係者の方々からは、夏にやるのは本当に大変だよと言われてきました。でもこのハウスの特性を活かして、夏場に商品を出すことに勝機を見出せないかと考えて夏作のトマトに挑戦しました。 農業を知っている人だったらやらないことへの挑戦です。

下村氏:Big Advanceの商談会では、物販をやっている大手の会社様とも成約しました。カタログ販売でお中元とお歳暮を出そうと思っているんですが、こちらはパッケージと段ボールの表示を変えるためにデザインを詰めているところです。準備が整い次第、販売をする予定です。

トマトの残渣が紙になる?農業新規参入だからこそ思いついたアイディア

ーBig Advanceは、クラウドファンディングのCAMPFIREとも提携しているのですが、そこでプロジェクトを出そうとされていると伺いました。どんなプロジェクトなんですか?

下村氏:トマトの苗は1年で全部切り倒します。それ以上伸ばすこともできますが、1年経つと樹高が10メートル以上になってしまうので、伸ばしても作業がしづらいんですね。切り倒した際のゴミ(残渣)は約2トンになります。トマト農家では当たり前のことなんですが私にとっては、この残渣を自分でダンプに乗って捨てるという作業が苦痛で、なんとかしたいなという思いがありました。これは農業新規参入の人間ならではの感覚かもしれません。

大王製紙さんがもみ殻などの残渣を紙の原料として再利用して、資源を有効活用するシステム 「Rems(リムス)」というのをやっています。トマトの残渣も再利用して紙にすることができるんですね。ちょっと筋が入ったような、和紙のようなユニークな紙になります。この紙を作ることができたら、段ボール箱の貼り紙として使ったり、名刺やメッセージカードなどを作ろうと思っています。
紙を作るのにはそれなりの費用がかかるのですが、トマト残渣を使う案は大王製紙さんにも興味を持っていただけて、農場見学にも来ていただきました。他のトマト農家がこれをやらないのは、トマトを売る以外のところに費用や手間をかけられないということもあります。なので、当社は挑戦してみようと思いました。

紙はまだ試作段階なのですが、この取り組みをCAMPFIREで応援していただけたらと思い、今回プロジェクトをやってみることにしました。

ー残渣を再利用して新たな製品にする、というのは環境にも良く素晴らしい取り組みですね。他にも割れたトマトを使って商品開発をされていたり、アイディアが豊富で面白いなと思いました。今後の展望はありますか?

下村氏:現在はありがたいことに販売先がいくつかあるのですが、収量が少なく供給が追いついていません。少量でも良いと言っていただけているので納品できていますが、来作では収量を増やせるように栽培技術の確立をしたいです。夏にハウスを冷やす工夫も必要だと思っていて、デンソーさんと協力しながら来作に取り組むつもりです。

トマト栽培について詳しく紹介した記事はこちら>>
自動で環境を制御できるハウスで育つトマトってどんなトマト?

<会社情報>
株式会社ビレッジ開発
所在地 〒446-0059 安城市三河安城本町 2丁目7-13 2F
設立  1974年2月
URL  https://village-kaihatu.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの

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