2026年03月02日

国内外の市場へ出荷される“美濃焼”
作り手の想いを知る春雄苑が最後の砦に

岐阜県多治見市。日本有数の陶磁器産地として知られるこの地には、今もなお数多くの窯元と関連企業が集積しています。株式会社春雄苑もそのひとつです。創業当時は自社工場に窯をもつ生産者として、現在は完成した陶磁器製品の検品・梱包・出荷という、いわば最終工程を担う企業として、陶磁器一筋に歩み続けてきました。結婚を機に妻の実家である同社の経営に携わるようになった池ノ谷さん。オリジナル商品の復活や卸売事業の強化、Big Advanceでのホームページ開設など、「作り手の想いを、責任を持ってエンドユーザーに届けたい」と挑戦を続ける若き継承者に話を伺いました。

株式会社春雄苑 統括部長 池ノ谷 紘季様

美濃焼の現場で受け継がれる、誠実な仕事と人のつながり

─まず、御社の事業概要について教えてください。

創業は1960年。創業から平成中期までは窯で陶磁器商品の絵付け加工を施し、お茶碗などの自社製品を出荷をする、いわゆる“作り手”としての事業も展開しておりました。時代の変化や業界のニーズに応えていく中で、徐々に陶磁器の検品・梱包・出荷業務へ転換。元々が生産者だっただけに、商品に対する品質や想いは、誰よりも深く理解していました。

この商品は、時間をかけて、神経を研ぎ澄まして作ったものだ、という意識が自然と身についているので、器の扱い方がまったく違います。生産工程を知っているからこそ、わずかな欠けや歪みの意味が分かる。その感覚が、現在の仕事の土台になっています。

ホテルスタッフから家業へ、異色の経歴が生きる

─池ノ谷さんのキャリアについて教えてください。

前職はホテルスタッフです。人と接する仕事が好きだったので、ずっとサービスの現場にいました。器の業界とは無縁の世界ですね。結婚を機に妻の実家の家業に興味を持つようになり、本格的にこの業界で働き始めたのは6~7年前のこと。私自身、多治見市の出身ではありますが、器に関しては右も左も分からない状態で、知識も経験もゼロからのスタートでした。

─経営については、どのように学ばれたのですか?

まずは商社で修行をして、陶器の勉強をさせてもらいました。最初は美濃焼のお皿を見ても、ただのお皿としか思えなくて…(笑)。しかし、地元の方々の繋がりや器づくりの背景を知るにつれ、仕事の見え方が変わっていきました。同じ器でも、誰がどんな思いで作ったかを知ると扱い方が変わります。この業界は人と人とのつながりが本当に深い世界です。そういう意味では、ホテル時代に培った“相手目線”が、現在の取引先への対応に大いに役立っていると思います。

─この仕事に就いて苦労されたことは?

環境の変化が一番大変でしたね。会社に入って間もなくコロナ禍が発生。飲食店の休業やイベント中止、海外物流の停滞などの影響で、器の需要は一気に落ち込みました。飲食店が稼働しなければ、食器も動かない。メーカーさんの生産が減れば、当社の仕事も減ります。それでも、意識していたのは「従業員を大切にすること」。すぐに結果が出る打ち手はないものの、仲間と一緒に乗り越えるしかないと思っていました。一社一社との関係を大切に、状況が戻るのを粘り強く待ち続けた時期ですね。多分これからも予想できないことが起こると思うのですが、その都度自分たちの強みを見つけて乗り越えていきます。

親から子へ、友人へ。自然と受け継がれてきた信頼関係

─スタッフは女性が多いそうですね

現場で働くスタッフは7名。その多くが、地元で暮らす女性たちです。手先が器用なのはもちろんですが、器を見る目は、やっぱり女性の方が圧倒的に鋭いと感じます。日常のシーンを考えても、女性が手に取って「やっぱり良いな」って思うものが、家庭に並ぶことが多いので、自然と感性が磨かれるのでしょうね。実際に食卓で使うことを想像しながらチェックする、色味の違い、わずかな歪み、触ったときの違和感。そうした細かな点に気づく感性が、品質を支えています。

ありがたいことに、女性スタッフは、先代の奥さんの友人、その子ども世代、さらに私の同級生など、地域のつながりのある方ばかり。信頼関係が自然と受け継がれてきた職場です。人の入れ替わりが激しい時代にあって、“顔が見える関係性”が続いています。世代は変わっても、地元の女性、昔から顔馴染みの信頼できる仲間たちに支えられていることが当社の強み。女性が活躍できる職場だと思っています。

“最後に触る会社”としての使命と喜び

─御社の企業姿勢とこの仕事のやりがいを教えてください。

当社の仕事はメーカーや商社から預かった陶磁器商品を、最終ユーザーのもとへ安全に届けることです。商品が通過するだけで、自社名はどこにも残らないんですよ。 言ってしまえばただの中間地点ですが、エンドユーザーの手に届く最終地点という意味では、すごく責任の問われる仕事なんです。

器は食事に直結するものなので、安全性はもちろんのこと、商品としての外観や手触りなど繊細な部分にまで見落とすことがないようしっかりとブレーキをかけることが私たちの使命。検品・梱包は、一見すると単純作業に見えますが、当社を通過した商品は、すべて“責任を持って送り出した”と言える状態でなければいけないため、実際には集中力と経験、そして強い責任感が求められます。

自分たちの名前は残らなくても、海外のショッピングモールやレストランで、自分たちが関わった器が使われている光景を目にしたときの達成感はなんともいえないですね。誰にも気づかれないかもしれない。でも、確実に世界のどこかの食卓につながっている。それはとても幸せなことだと感じます。

“繋がり”を生んだ、名刺代わりのホームページ

─Big Advanceを導入されたきっかけは?

これまでは正式なホームページというものがなく…。ホームページの作成はコストがかかるというイメージが強かったことも理由のひとつですが、何より「どう発信すればいいのか分からない」というのが実情でした。そんなとき、金融機関からBig Advanceのお話をいただいて。信頼ができますし、地域の繋がりやビジネスマッチングといった横の繋がりを得られるメリットもあり、「これだ!」と思いました。

独自の魅力をより多くの人に発信するホームページは、企業の入り口のようなもの。名刺をお渡しした相手が「どんな企業かな?」と興味を持ってくださったときのためにも、窓口はしっかり持っていたいと思ったことが導入のきっかけです。作る過程も特に難しいと感じることはなく、割と簡単にできました。

─実際に、ホームページの効果はありましたか?

ありました。Big Advanceを見て、直接お電話いただいて、当社を知っていただくきっかけになっています。すぐに商談につながらなくても、存在を知ってもらえる。それだけで価値があると実感しています。

卸売りの方にも注力したいと思っているので、そういった情報も発信していきたいですね。大きなトラックやリフトの重機を所有しているので、商品の引き取りから梱包までを自社で行い、安全な状態にしてお客様のところに届ける業務を一括で行えるのは当社の強み。その延長として卸売りまで担うことができれば、さらに企業として成長が見込めると思います。 

左:池ノ谷 紘季氏 右:東濃信用金庫 大塚氏

出会いを大切にする理由

─人生の中で最も印象的だった“出会い”は?

最も印象的というなら、妻との出会いかな。実は妻とは幼稚園が一緒なんですよ。でも、その後の小・中・高・大はすべて違う道へ進んでいました。それが地元で行われる成人式のタイミングに幼稚園のタイムカプセルを掘り起こそうという便りが届いて。その時の記憶は全くなかったのでタイムカプセルのイベントには参加しなかったのですが、その後の飲み会に顔を出した際に妻と再会。4、5歳の幼少時代を共に過ごした人と、何十年もの年月を経てもう一度出会ったわけで。しかも妻と結婚して、今は家業にも携わっているんですから。「出会いって人生を変えちゃうんだな」と、心底思った出来事ですね。

このエピソードにはもう一つ余談があります。実は妻のおばあちゃんと僕のおじいちゃんは同じクラスだったらしいんですよ。顔合わせの時に、「あれ、◯◯さん?」「あれ、◯◯くん?」みたいな(笑)。そんなことある!?って本当に驚きました。 それもすごく印象的な出会いでしたね。

─仕事の“出会い”で大切にしていることは?

ファーストコンタクトが大切ですね。基本的なことですが、「しっかり挨拶をする」「お礼を言う」「しっかり謝る」、この3つを常に心掛けています。正直、初めましての人と商談をするのは、かなりハードルが高いこと。 でも、その初めましてを大切にすることで、小さな商売がどんどん大きくなっていくのです。 私がこの仕事に就いてから、初めての取引先の方もかなり多く、 そのファーストコンタクト=最初の出会いを大事にし続けてきたからこそ、今があるのだと感じています。

歴史を未来につなぐために、新たな挑戦へ

─今後の展望を教えてください。

そうですね、長い歴史があり、陶磁器という繊細な商品の梱包をできることが当社の強みなので、これまでの業務はもちろん大切にしたいと思っています。そのうえで「私のような若い世代が未来を作っていかないと」という気持ちもあるので、今後は、昔作っていた自社商品を転写技術で紙に興し、その紙を貼ることでオリジナルデザインを商品化してみたいですね。

60年以上前に作っていたものを、今の時代に合うカタチに復活させて世に出すことで、新たな強みになってくるので。時代は巡るというように、着物の伝統模様とか、いつの時代に見てもやっぱり素敵だなって思う感覚と同じです。過去を知っているからこそできる挑戦があると思います。

環境の変化による困難は、これからもやってくるでしょうが、そうした環境の変化がある時こそ、仲間で協力して課題を解決していけたらいいなと思います。固定概念に縛られず、柔軟に。いろんな人の意見を聞きながら、少しずつ前に進んでいきたいですね。

<会社情報>

株式会社春雄苑
所在地 岐阜県多治見市市之倉町12-233
設立 1991年5月
URL

https://www.big-advance.site/c/137/2420

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