2025年12月11日

青い花のお茶で売上高2000万円
仲善が挑む沖縄の新たな農産業づくり

ゼロから売上高2000万円へ——青い花「バタフライピー」のお茶は、沖縄の新しい産業になる可能性を示しています。沖縄県南城市で57年にわたり健康素材を扱ってきた農業生産法人株式会社仲善は、ウコン、グアバ、クミスクチンという沖縄の三大薬草を基盤に、近年では沖縄県産紅茶やバタフライピーなど新しい素材に挑戦。地域の農業振興と雇用創出にも取り組んでいます。20年程前、本土では珍しかった沖縄食材が全国に広がっていくさまを目の当たりにしてきた同社の宮城氏に、事業の変遷と今後の展望について伺いました。

農業生産法人株式会社仲善 常務取締役 営業統括部長 宮城 直樹 様

創業者を救ったクミスクチン茶から57年

─まず、御社の事業概要と歴史について教えてください。

仲善は1968年の創業で、今年で57年になります。沖縄県南城市で健康素材を扱っており、特にウコン、グアバ、クミスクチン(別名ネコノヒゲ)という沖縄の三大薬草を中心に事業を展開してきました。

創業者である仲本勝男が腎臓を患い、腎臓に良いとされるクミスクチンのお茶を飲んで体調が良くなったという経験から、この素材を広めたいと考えて会社を興したんです。クミスクチンは利尿作用があるとされる植物です。クミスクチン茶の販売から仲善の56年の歴史は始まり、うっちん(沖縄の方言でウコンのこと)茶、グアバ茶を販売しました。

─三大薬草の中でも、特にウコンは全国的に知られるようになりましたね。

ウコンはショウガの仲間の植物で、生薬や染料として平安時代から使われていて、1600年代、琉球王国ではウコンを専売制にしていました。その専売を管理していた土地が南城市なんです。当時はサトウキビと同じくらいの価格で取引されていたという記録が残っています。

明治時代に西洋医学が入ってきたことで、伝承医学的に伝えられてきた健康素材が一時期、隅に追いやられました。ウコンもその一つです。

それが再び注目されるようになったのは、50年ほど前からです。その頃は那覇の国際通りでウコンを売っていても、地元の人は「庭にあるからいいよ」と言って誰も買わなかったんです。それが今では、全国津々浦々、コンビニやドラッグストアなどでウコンの商品が並ぶようになりました。市場規模も数百億円規模になっていると思います。

私たちの商品ではないものも多いですが、ウコンという素材を世の中に広めることに貢献できたという点で、少し誇りを持っています。

20年前、ゴーヤーが「苦い」とクレームに

─沖縄の食材が全国に広まっていく過程を目の当たりにされたんですね。

そうなんです。20年くらい前、沖縄の食材が全国に広がり始めた頃の話なんですが、私は新宿伊勢丹や福岡の三越、大丸といった百貨店で営業をしていました。ある時、ゴーヤーを買ったお客様からクレームがあったんですよ。「苦い」って(笑)。

ゴーヤーはそもそも苦いものなんですが、販売担当者もどう答えていいか分からず、3秒くらい固まったそうです。それくらい、沖縄の食材が知られていなかった時代があったんです。

─それがたった20年前というのは意外ですね。

2001年にNHKの朝ドラ「ちゅらさん」が放送されて、BEGINなどの沖縄出身アーティストも活躍していました。そういったエンタメの流れに乗って、もずくや海ぶどう、そしてウコンなどの沖縄の素材がどんどん全国に広がっていったんです。

青い花のお茶・バタフライピー ゼロから売上高2000万円へ

─近年は新しい素材にも挑戦されていますね。

2017年頃から、健康素材だけでなく嗜好品の分野にも進出しました。沖縄県産の紅茶を発売したのが最初です。その後、バタフライピー(チョウマメ)という青い花のお茶も手がけるようになりました。無添加、無着色の綺麗な青色のお茶です。

バタフライピーは、南城市が「ハーブの町」を宣言したことがきっかけです。南城市では、ゴーヤー、オクラ、いんげんといった作物の生産が主要なんです。そこにハーブを加えようという試みがあったんです。

当社はバタフライピーのお茶事業に参入しました。私もバタフライピーの花を収穫していますよ。収穫期は5月から12月で、朝7時から12時まで一人で2キロを摘むんです。真っ黒に日焼けしました。

タイでは「エディブルフラワー(食用花)」として生で食べられていて、青いご飯を炊いたりもします。青い色素はアントシアニンという成分で、目の疲れなどに良いと言われているんです。レモンを加えると青色から紫色に変化します。色も楽しんでいただきたいです。

宮城氏がバタフライピーティーを入れてくれました

─事業としてはどのくらい成長したんですか?

ゼロから始まったバタフライピーの商品が、今では売上高ベースで年間2000万円くらいまで成長しました。特に営業をしているわけではないですが、ここまで成長したのでこれからが楽しみです。

ウコンは何十年かかけて今の市場になりました。バタフライピーも第二のウコン的な存在になってほしいという思いを込めて活動しています。

沖縄の気候で紅茶づくり 新たな産業の芽

─沖縄の地理的な特性を活かして、新たに取り組もうと考えていることなどはありますか?

沖縄県産の紅茶にも力を入れています。実は、紅茶の産地として有名なスリランカと沖縄は、地理的に似た条件を持っているんです。

茶葉を半発酵させるとウーロン茶になり、全発酵させると紅茶になります。沖縄県の北部、やんばる地域ではお茶の栽培が行われていて、この地理的優位性を活かせば、紅茶も一つの産業として発展できるんじゃないかと考えています。

ライチも可能性があると思っています。気候が似ている台湾ではライチ産業が大きく発展していますが、沖縄にはライチ農家がほとんどいないんです。害虫防除が難しくて農家さんが離れてしまったんですが、それさえ解決できれば、沖縄の気候はライチ栽培に適しているはずなんです。

私も4本くらい苗木を買ってきて育てようとしたんですが、知識がなくて管理できなくて(笑)。でも、こういった課題を克服できれば、また新しい産業が生まれると思っています。

自社栽培と加工で地域を元気に 目指すは20名雇用創出

─Big Advanceはどのように活用されていますか?

金融機関の担当者から勧められて導入しました。使いこなせているかというと、まだまだ活用の余地があると思っています。

ホームページはBig Advanceの機能を使って自分で作りました。立ち上げてすぐにお問い合わせがあって、4件くらい面談や商談をさせていただきました。福利厚生サービスも良いサービスだと思っていて、もっと積極的に活用したいところなんですが、なかなか手が回っていません。今後もっと活用していけるようにしたいですね。

─今後の課題と展望について教えてください。

やはり人手不足が一番の課題です。それと、賃金が上がっていく中で、売上をどう伸ばしていくかというバランスですね。

もう一つの課題は、3年前から始めた自社栽培の品質向上です。例えば水の確保などインフラ整備の課題はありますが、自社で栽培したものを加工できるというのは大きな強みになると思います。薬草のスムージーや、果物のジュースなど、可能性が広がります。

また、販路を広げて、できれば20名以上の雇用を南城市のために創出したいと考えています。沖縄は工業が少ないので、観光と農業が主要産業です。だからこそ、紅茶やバタフライピー、ライチといった新しい農産物を産業として確立できれば、お土産産業としても発展するし、雇用も増やせる。

沖縄の素材が世の中に広がっていくのを見てきた経験から言えば、今は誰も知らないものでも、何十年かかけて大きな市場になる可能性があります。バタフライピーも沖縄産紅茶も、そういった未来を見据えて取り組んでいます。

バタフライピーを使ったお茶、シロップ、クラフトコーラ

新しい時代の情報発信 沖縄の素材を全国へ

─ここまで事業のお話を伺ってきましたが、宮城さんご自身が影響を受けたものや、視野が広がったきっかけのようなものはありますか?

YouTubeですね。私は歴史が好きなんですが、YouTubeという新しいメディアが登場したことで、いろんな視点の情報に触れられるようになりました。

以前は、新聞やテレビといった限られた情報源からしか情報を得られませんでしたが、今はいろんな専門家や有識者が発信する情報を自分で選んで見ることができます。一つの出来事について、いろんな角度からの意見を聞いて、自分で判断できるようになったというのは大きな変化だと思います。

もちろん、若い世代の人たちには、自分が好きな情報だけを見るのではなく、逆の意見も見て判断してほしいとは思いますけどね。

─実際にご自身でもYouTubeでの発信を始められたそうですね。

はい。最近、YouTubeで短い動画を作り始めたんですよ。AIを使って画像を作ったり、無料のツールを駆使して編集したりして。最初は一つの動画を作るのに10日くらいかかりましたが、今は1時間くらいでできるようになりました。

これも新しい情報発信の形として、会社の商品PRにも活かせるんじゃないかと考えています。SNSやショート動画を使った集客は、今後の大きな課題でもあり、可能性でもありますね。

─最後に、これからの仲善について一言お願いします。

ウコンが50年かけて全国に広がったように、バタフライピーや沖縄県産紅茶も、これから何十年かけて大きな産業に育てていきたいと思っています。そして、そこで生まれる雇用が、南城市の、沖縄の未来を支える力になれば嬉しいですね。

沖縄の豊かな自然と地理的優位性を活かした農業で、次の世代に誇れる産業を創る。それが私たちの使命だと考えています。

<会社情報>

農業生産法人株式会社仲善
所在地沖縄県南城市知念字知念1190
設立1996年11月(創業:1968年)
URL

https://www.nakazen.co.jp/

https://www.big-advance.site/c/203/1303

※情報と肩書は取材当時のもの
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