発注先も受注先も開拓
浄心工業の「仲間を増やす」マッチング活用術

愛知県名古屋市で板金加工業を営む浄心工業株式会社。2代目社長の瀬口氏は、独自の生産管理システムとフレックス制度で納期厳守と働きやすさを両立させています。12年前の工場建設、コロナ禍での自社製品開発と、慎重な性格ながらも「やるべき時」には決断してきた瀬口社長。Big Advanceの商談会を活用し、12件の商談依頼から7社面談、3社と成約しています。その時は商談に至らなかった企業も諦めずに時期を改めるなど、ご縁が重なることを楽しみながら切り開く経営哲学を伺いました。
浄心工業株式会社 代表取締役社長 瀬口 洋一 様
設計から塗装まで一貫対応 「心」を大切にする板金加工
─御社の事業内容と強みについて教えてください。
当社は愛知県名古屋市で板金加工を営んでいる会社で、私が2代目になります。板金から塗装、組み付けまで一貫して行っています。量産品ではなく一品物が多いので、お客様ごとにカスタマイズした製品を作っています。
当社の規模で塗装も含めて一貫してやっている板金屋は少ないんです。先代の頃は塗装業者に出していたんですが、その塗装屋さんが辞められるタイミングで、北名古屋市に塗装工場を設立しました。12年前(2013年)には現在の本社工場を新設し、事業を拡大してきました。塗装まで自社でできることが、お客様に興味を持っていただけるきっかけになっていますね。
社名に「心」という字があるように、お客様が何を作りたいか、どういう思いで仕事をされているかをしっかり理解した上で仕事をすることを大切にしています。最先端の機械があるわけでも、日本一の職人がいるわけでもありませんが、心を持ってお客様の立場に立った製品づくりを心掛けています。


─生産管理システムを導入されているそうですね。
はい、12年前に工場を建てた時に導入しました。工場が広くなって人数が増えたことで、現場の声が届きにくくなり気づいたら納期遅れが発生するようになったからです。この規模の会社で生産管理システムを導入しているところは少ないと思います。全工程を時間で管理しているので、各工程、時間通りに進められます。納期遅れはほとんどありません。
従業員全員の一日にやるべき仕事が一目で分かります。逆にこれがなくなったら何から手をつけたらいいか分からないですね。このシステムをもっと良くして、精度や能率を上げれば、社内の効率化だけでなく従業員の働き方改善にもより役立つと思っています。
─働き方にも生産管理システムが役立っているんですね?
製造業では珍しいんですが、フレックスを導入しています。1時間、2時間早く来て早く帰る人もいれば、残業をたくさんやりたい人もいる。それぞれのライフスタイルに合わせて働き方を選べるようにしています。生産管理システムで見える化ができているので、人によって働く時間を変えられるんです。それができるのもシステムの強みですね。

2013年に新設した本社工場
ビジネスマッチングで繁閑差の課題に挑む
─Big Advanceを活用いただいていますが、きっかけを教えてください。
金融機関からの紹介で、最初はお付き合い程度で始めたんです。ちゃんと利用したのは今年(2025年)8月にあったオンライン商談会がきっかけでした。
検索が便利で、ニーズを入れるとマッチングする企業が出てくるので「これはつながるところがありそうだ」と思って。実際に使い始めたら、すごく効率が良かったんです。
他社が主催している商談会にもよく参加していますが、リアルだとたくさんの方が一度に会場にいるので、必要ない業者との名刺交換も多く、無駄な時間が結構あったんですね。Big Advanceだとネット上で完結していて、ピンポイントに絞って探せるし、直接アポイントも取れるし、効率の面は最高ですね。
─どのような課題があって商談会に参加されてたのでしょうか?
当社は量産品ではなく、一品物を製造していますので、単発の仕事が多いんですね。そうなると、繁忙期と閑散期の差が激しいんです。忙しい時は当社だけでは対応できずに同業の仲間に仕事を依頼することになります。一方で閑散期になると手が空いてしまうんですね。
ですから、仕事量自体を増やすために新規のお客様を増やしたいのはもちろんなんですが、同時に、仕入れ先も探しているんです。当社と同じクオリティで納期をしっかり守ってお仕事されている企業を見つけたいと思っています。
12件の商談依頼で3社と成約 諦めない姿勢が生む新たなご縁
─商談会から3カ月(取材時)ですが、どのような成果がありましたか?
商談会で12件の商談依頼をして、実際にお会いできたのは7件。現在すでに取引させていただいているのは3件です。
一番の成果は、溶接を依頼している企業との取引ですね。板金加工には溶接工程があるんですが、手作業なので最も混みやすいんです。当社は職人が4人いますが、どうしても溶接が一番忙しくなる。ここを助けてほしかったんです。
この企業にはすでに2回発注させていただきました。実はこの企業、以前から存在は知っていました。直接電話するよりもこういったツールを使った方が心理的なハードルが低くて、アプローチしやすかったですね。
受注でも良い成果がありました。以前一度商談を試みたのですが、実現しなかった企業なんですが、先方から連絡をいただいたんです。「こんなことできるかな」と相談をいただいて、見積もりを出したらすぐに取引が始まりました。まだ大きな金額にはなっていませんが、継続取引先になりそうなので、ありがたいですね。
─過去に商談に至らなかったところと成約に結びついたのはすごいですね。もう1件成約されているんですよね?
はい、もともと取引があった企業に勤めていた方が独立して始められた会社に商談依頼をしたんです。先方も「瀬口さんだ!」と驚いてくれて、早速お仕事をいただいています。10年以上前のご縁がBig Advanceを通じて再びつながった形ですね。
また、先ほどとは別の話で、近所にある溶接専門企業にも商談依頼をさせていただいたんですが、その時はお見送りになってしまったんですね。諦めきれずにいたら、後日、お話できる機会があって。担当者の方が辞められて対応ができない時期だったからお見送りにしたとのことで、今度、外注先と一緒に当社を訪問していただけることになったんです。まだ仕事にはなっていないですが、近所ですし、何かの時には助けていただけるということで、今後取引につながっていくと思います。こうやって仲間が増えることが大事だと思っています。

──Big Advanceをどのように使いこなしていますか?
困った時はまず検索するようにしています。先日も、いつも発注している先が病気で受けられないという連絡があって。早速Big Advanceで検索しました。まずBig Advanceで探して、それから他を探すようにしています。
あと、検索のキーワードを変えてみると、意外な発見があるんですよ。「実は板金の仕事が必要なんじゃない?」みたいなニーズが見つかったりしますね。
それにね、商談の「お見送り」は言葉のまま受け取らなくていいと思っています(笑)。近くを通った時にちょっと訪ねてみようかな、くらいの気持ちでいます。お断りの理由があっても、それで納得してしまうと可能性を潰してしまうこともありますから。ご縁は1回で繋がるものではないですし、1回で終わるものでもない。ご縁が重なることで、「縁の価値」が上がると思っています。
コロナ禍の消毒液スタンド開発が事業の転機に
─これまでの印象的な出会いを教えてください。
最近のことですと、コロナ禍での出来事ですね。当社はコロナで仕事がとても少なくなって、来週の仕事がないという状況になったんです。そんな時、同業者の仲間が「瀬口さんは設計ができるから、消毒液スタンドを作ったらどう?」と提案してくれました。
設計が好きだったので、パッパッと図面を書いて足踏み式の試作品を作ったんです。近所の歯医者さんやカレー屋さんに「モニターとして使ってみて」と置かせてもらって改善しながら売り出したら、これが思いもかけず大ヒット。初めての自社製品開発でしたが、この地域だけで1,100台販売できました。
初めて展示会にも出展しました。製造業として恥ずかしいものは作れないので、丈夫でしっかりしたものを作ったら、皆さん踏んでみて「これだ」と。試作品1台から始めて「10台売れるかな」と思っていたのが、展示会の途中で会社に「100台作って」と電話するほどの手応えでした。
消毒液スタンドで知り合った方から様々な相談をいただくようになって、その中で一緒に開発した商品で事業再構築補助金が採択されました。同業者の仲間のアドバイスがきっかけで、新しい世界が広がりました。コロナという悪い時期でしたけど、動いたことは間違っていなかったんだなと思います。

初の自社開発となった消毒液スタンド
次世代へ引き継ぐ「心」と「仕組み」
─今後の展望について教えてください。
もちろん売上を上げて大きくはしたいとは思いますが、やっぱり同じような思いで仕事をされている方と、内容の濃いお付き合いをするなかで、良い仕事をしていきたいなと思っています。
誰でも彼でも会って、何でもかんでも仕事をするのではなく、良い思いを持って、心を込めて仕事をさせていただきたいです。従業員にも喜んでもらえて、「良い会社だね」って言われるようにしたいですね。将来も長く必要とされる会社として残していきたいなと思います。
ただ大きいだけじゃなくて、心を中心に、コツコツやっていきたいですね。

左:瀬口氏 右:あいち銀行 下田氏
<会社情報>
| 浄心工業株式会社 | |
|---|---|
| 所在地 | 名古屋市西区丸野2-97-6 |
| 設立 | 1958年3月 |
| URL | |
| ※情報と肩書は取材当時のもの | |








