2025年11月10日

大分「しいたけ出汁」を全国、そしてアジアへ!
上田椎茸専門店が描く未来

大分県別府市で大分産乾しいたけの美味しさにこだわったものづくりの専門店として創業77年を迎える上田椎茸専門店は、約50年のロングセラー佃煮と15年前から展開する出汁パックを主力商品としています。3代目社長の上田和宏氏は、約20年前からインターネット販売を学び、時代の変化に合わせて販路を開拓してきました。Big Advanceを活用して全国の大型ショッピングモールへの納品を実現し、現在はアジア市場への進出も視野に入れています。「これからは海外展開を常に見据えておかないと」と語る上田氏に、ネット活用と販路開拓、そして世界を見据えた今後の展望について詳しく伺いました。

有限会社上田椎茸専門店 代表取締役 上田 和宏 様

創業77年、3代で守り続ける椎茸専門店の味づくり

─まず、御社の創業からの歴史について教えてください。

当社は大分県別府で大分産椎茸の乾物専門店として戦後3、4年後に祖父が創業しました。今年で77年目になります。最初は乾物中心の商売でしたが、母が社長になってから、佃煮などの加工品に力を入れ始めました。

私は東京の大学を卒業後、地元のスーパーに3年ほど勤めてから家業に入りました。母が亡くなって私が社長になったのが20年ほど前ですね。私が社長になってから開発した出汁パックは15年ほど作っており、今では佃煮と並ぶ主力商品になっています。

─商品の特徴について教えてください。

大分県産の椎茸をふんだんに使った「椎茸こんぶ角煮」という佃煮はおよそ50年のロングセラーです。当社の商品はありがたいことに一度買っていただくとリピーターになっていただけることが多いんです。

佃煮の味は、実は少しずつ変えています。50年前と全く同じ味のものは、しょっぱいと感じられるはずです。近年は、健康志向で塩分を気にかけている方も多いので、少しずつ今に合った味に調整しています。お客さんからは「変わらない味でいいですね」って言われるんですけど、本当は塩分などを減らしているんですよ(笑)。ちょっとした工夫が長く愛される理由かもしれません。

50年ロングセラーの「椎茸こんぶ角煮」と看板商品の「ぜいたく和風だし

20年前から始めたネット販売 世代交代で変わる販売戦略

─上田さんの代になって、事業環境はどう変わりましたか?

母の時代は、この自社直営店舗で売るか、卸し先の販売店舗で売っていただくかという時代でした。ネット販売がなかったんです。お取り寄せという市場も今ほど大きくありませんでした。

でも今は違います。ネット販売などお取り寄せ市場を駆使しないと生きていけない時代になっています。

20年ほど前、まだ40代だった頃にインターネット販売の勉強会に通い始めて以来、ずっと学び続けています。Google検索で上位になる方法とか、ネット販売のための商品撮影の方法とか、時代に合わせて勉強してきました。最近はAIが出てきて、だんだんついていけなくなっていますけどね(笑)。

─現在の販売チャネルについて教えてください。

店舗販売と通信販売があります。店舗は大分空港、別府駅、ホテルなどの観光土産が中心です。大分の百貨店では食品セレクトショップで売られていますね。

通信販売では、ホームページからの注文もありますが、意外と電話での直接注文が多いんですよ。お年寄りのお客さんが多いので、「これ美味しかったから5個ください」とか「30個ください」とか、電話やファクスで注文をいただきます。電話ファクスも含めた通販の方が、店舗より伸びていますね。

Amazonや楽天といったECサイトでも売っていますが、こちらは大手ECサイトでの出店が得意な企業さんに卸しています。もちろん当社にも自身のサイトがありますので、そちらは管理しています。間口を広くしておくことで、いろんな手段でお客さんが買えるようにしています。

─通販で注文が多い地域はありますか?

福岡県は隣県ですから別として、関東圏のお客さんが圧倒的に多いです。特に東京都の人が一番多いですね。やっぱり所得が高いからというのもあると思います。通販をやっている仲間と話すと、みんな「関東のお客さんが一番多いよね」って言います。通販の7〜8割が関東圏と近畿圏のお客さんですね。

Big Advanceで実現した全国展開 地方の食材を大都市へ

─Big Advanceを導入されたきっかけを教えてください。

金融機関の方に勧められました。当社のようなローカル食材を売っている会社には合っているのではないかと。Big Advanceは参加企業が多いことが優れていると思っています。新しく参加する会社が増えていますし、新着順で表示されるので、当社のニーズに合致する企業がないかチェックしています。

他社さんの似たようなサービスでは、百貨店やスーパーで出店を募集しているからチャレンジしてみませんか、という内容が多いんです。一方でBig Advanceは様々な企業とマッチングできる機会があるので、その点を重宝しています。

─実際にどのような企業とマッチングされましたか?

ショッピングモールなどで生産者直販店を展開している企業とのマッチングに成功しました。

商談の機会を得てサンプルを送った後、なかなか連絡がこなくて、1カ月後にメールで問い合わせたんです。部長さんがすぐにお電話くださって「忙しくて返事が遅くなったけど、あの和風出汁がいいね、美味しかった」と。その後すぐにお取引が始まりました。

横浜市や千葉県船橋市、札幌、九州各地の大型ショッピングモールの店舗に置いていただいています。全国展開している企業なので期待しています。今年(2025年)7月から置いていただいているのですが、当社の商品はリピーターがつけば強いので、これからが楽しみなんです。

また、本当に最近なのですが、貿易会社さんとオンライン商談をしました。インドのバイヤーが興味を持ってくれて、1月にインドでフェアをやるということで、サンプルを提供しています。輸出が実現すれば、取引の規模は大きくなるので当社にとっては大きなビジネスになります。

低コストで挑戦し続ける販路開拓

─Big Advanceの良い点は何でしょうか?

一番は、コストが安いことです。展示会などは、参加料だけで、10万、20万はすぐかかります。大阪や東京などに行けば旅費もかかりますし、人件費も含めると何十万もかかるんですよ。

Big Advanceは月3000円ほどの会費で、商談ができるわけです。正直に言うと、先ほどお話した2社の裏では、9社、10社の失敗があります。でも、それは一般の商談会に行っても同じですから、しょうがないです。それに、失敗したところで会費で参加しているわけですから。特に腹も立たないんですよ(笑)。「こんなもんかな」と思って、諦めずにやるしかないという感じですね。

ネット上で商談ができるというのも便利です。オンライン面談なので、お互い顔を見ながら話ができるのも良いですね。商談会は、あれだけの数の会社が参加して、短期間で時間的な無駄もなく、我々とバイヤーをぎゅっと集約する場を設けてもらえるので、非常にありがたいです。

勉強会の仲間との出会いで生まれたヒット商品

─印象的な出会いについて教えてください。

先ほどお話しましたが、インターネットの勉強会で福岡に月1回ほど行っていたんです。そこで知り合った仲間と、勉強会の後に飲むわけですよ。博多の辛子明太子屋さんや飯塚の卵屋さん、革のバッグを作っている人とか、いろんな人と出会いました。

その中に、出汁で有名な企業の部長さんがいたんですね。当時、そちらの企業も、まだ出汁が売れ始めたころで、「良い出汁は売れるよね」って話をされていたんです。そこで仲間が「椎茸の出汁やったらいいんじゃない?」って言ってくれたのが当社の出汁開発のきっかけです。

商売人の出会いって、どこでどうなるかわからないけど、いろんな会に顔を出しておくと、ビジネスチャンスがあるということですね。

温暖化リスクと海外市場 次世代を見据えた商品開発

─今後の展望について教えてください。

商品開発については、実は、地球温暖化の問題も考えなければいけません。椎茸や昆布は、気温が高いとあまり良くないんです。今、椎茸も昆布も相場がかなり上がっています。海水温の上昇で、昆布は来年また高騰するんじゃないかと言われています。

値段が上がるだけならまだいいんです。取れなくなると、もうどうしようもないです。だから、温暖化に対しては危機感を持って、商品開発も進めていかないといけないと思っています。

あとは、やはり日本全国に広めたいですし、海外展開も常に見据えておかないといけません。そのためにはビジネスマッチングは必要不可欠だと思っています。

実はインバウンド向けの商品で「ホタテとしいたけのだしスープ」という商品を開発しました。アジアからの旅行者がホタテを好きだと聞いたんです。当社の椎茸とホタテを合わせたら美味しいんじゃないかと思って開発しました。シンガポールや香港のフェアに持っていったら、結構評判が良かったんです。この反応を見て、海外でも十分勝負できるという自信が持てましたね。

また、先ほどお話したインドでの展開も期待しています。これからインドは良い市場になると思いますから。

椎茸や昆布といった食材は、実は世界中のいろんな食文化に受け入れられやすいんですよ。ビーガンの方や、宗教上の食の制約がある方にも対応できますから。大分の美味しい椎茸を使った商品が、世界中のより多くの人に届けられる可能性があると思うと、本当にワクワクしますね。

<会社情報>

有限会社上田椎茸専門店
所在地大分県別府市 小倉町36-21
設立1948年
URL

https://www.shiitake-konbu.com

※情報と肩書は取材当時のもの
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