2025年03月13日

自動で環境を制御できるハウスで育つトマトってどんなトマト?

Big Advanceの商談会イベントを通して大手スーパーとのマッチングに成功したビレッジ開発。不動産業者が挑戦するユニークな「トマト栽培」に関する取り組みに焦点を当て、ここではもう少し詳しくお話をお聞きします。

株式会社ビレッジ開発 取締役農業部部長 下村 太一郎 様 取締役部長 松浦 隆 様

デンソー製農業ハウス「プロファーム T-キューブ」とは

ビニールハウスは換気によって室内の環境を整えています。従来のビニールハウスは、窓からの風などを利用して換気を行う「自然換気」のため、天候に左右されたり、害虫が侵入しやすいというデメリットがありました。また、管理には経験値が必要でした。

「プロファーム T-キューブ」は、アクティブ換気システムという自動で環境を整える装置により、気流や気温、CO2濃度などが均一化され、ハウス内の環境を一定に保つことができます。また、機械による環境自動制御を行うためデータ収集がしやすく、効率的な栽培が可能になります。

参考:DENSO Profarm T-cubeサイト

インタビュアー:この「プロファーム T-キューブ」を用いて農業に取り組んでらっしゃるということですが、下村さんは以前に農業をされた経験はあるんですか?

下村取締役(以下、下村氏と記載):農業の経験は全くなく、2022年から始めました。こういったハウスを使ったスマート農業のデータ駆動型経営は、データをどうやって反映して、 ビッグデータから規則性を見出して農業に活かすかを考えます。私も学生の頃は農業ではないものの、実験などに携わっていた経験があるので、実験してデータを分析し、改善する、といったやり方が活かせるのではないかと思って始めてみました。

松浦取締役(以下、松浦氏と記載):今のハウス栽培はデータで行うんですね。これまではハウス栽培の名人が経験と勘で行なっていた環境制御を、機械が再現するようにできています。私たちは不動産業者なので、農業を知っている人間が誰もいない中で素人にできるのだろうかと思っていましたが、毎日データを取って、次に何をするかの分析をしっかり行なっていくことで実現できています。栽培研修を経て、他業種でも農業に挑戦できるという実績になりました。

機能性表示食品「うるつやトマト」

ビレッジ開発が営む「次世代型農場でんでん村」で栽培されるトマトは「うるつやトマト」というブランド名を持っています。紫外線刺激から肌を保護するのを助けるリコピンの機能性と、「仕事や勉強による一時的な精神的ストレスと疲労感を緩和する」GABA(γ-アミノ酪酸)の機能性を併せ持つトマトです。また、選果機で非接触による糖度の調査を行なっており、表示される糖度を保証しています。
参考:ビレッジ開発のミニトマト栽培についての資料

インタビュアー:機能性表示食品だけでなく、糖度も保証されているとのこと。とても難しそうだなと感じましたが、どうですか?

下村氏:機能性表示食品は、通年でGABAとリコピンの量が最低量をクリアしたという証明がないと登録ができないんですね。実は1作目はそれがクリアできず、ノーブランドとして市場に出荷させていただきました。同時に、専門機関に検体を送って、最低量を超えることができたので、2024年1月からは機能性表示食品として販売を開始しています。

インタビュアー:もともと機能性表示食品としての販売を目指していらっしゃったんですか?

下村氏:そうですね、他との差別化を図ろうと考えたんです。トマトに付加価値をつけるなら、水を絞って高糖度のトマトを作るか、機能性表示かの2択だと思っていました。環境自動制御装置があるこの「植物工場」でやるのであれば、栄養成分が安定する化学肥料しか使わない代わりに、成分が安定する機能性の方が適しているだろうなと考え、機能性を選びました。ただ、糖度もちゃんと意識しないといけません。うちのトマトの品種は糖度をあげると酸っぱくなってしまうんですね。糖度と酸味のバランスをみながら、おいしいと感じられるレベルを探って栽培しています。

機能性表示食品と美味しさを両立するのは、果物でも野菜でも難しいところがあるようです。どうしても美味しいものは機能性が少ないし、機能性が多いものはあんまり美味しくないという傾向があるみたいですね。

インタビュアー:糖度をあげようとすると酸っぱくなってしまうのは意外でした。繊細な栽培技術が求められるんですね。輪作(同じ土地に異なる種類の作物を交代で繰り返し栽培すること)は必要ないのでしょうか?

下村氏:土耕栽培でしたら連作障害が起きるかもしれないので輪作が必要ですが、うちはココヤシのヤシ殻でできた「ヤシ殻培地」を使ってます。液体肥料で全て管理していて、有機栽培の要素はほぼなしでやっています。EC(電気電導率)とpH(水素イオン指数)は毎日測っていて、目標とする数値と差がないかをチェックしています。

いずれ技術が進歩して、病害虫の発生や、菌を持ち込んでもある程度原因が特定できるような技術ができたら、有機混合栽培というのもできるかもしれませんね。

夏作トマトの難しさの理由

インタビュアー:現在は「夏作」のトマト栽培を行なっているそうですが、夏に育てるのは難しいと言われているそうですね。

下村氏:やってみてわかったんですが、35℃近くなるとトマトの花粉が固まってしまって出なくなってしまいます。そうすると実がならなくなりますよね。自家受粉(同じ個体にあるめしべについて受粉すること)などのやり方もありますが、味が落ちたり収量が取れなかったりするようで、導入している例は少ないと聞きます。受粉用の蜂もいるのですが、暑くなると巣箱の幼虫や女王蜂に向かって羽を羽ばたかせて、扇風機代わりの役割を担うようになり、動かなくなってしまいます。花粉が少なくなる上に蜂も飛ばなくなるので、夏は厳しいということがよくわかりました。

実がなると同時に暑くなり、木が弱っていったので、余分なエネルギーを使う枝を切ることで木を復活させることができました。それで夏の収穫ができるようになったんですね。来季は、夏にハウス自体を冷やす工夫も必要だなと思っています。

トマトを使って地元との繋がりを作る

インタビュアー:「夏作」のトマトは希少な上に、機能性と美味しさを兼ね備えているからこそ、大手スーパー等との商談成約に繋がったと以前お聞きしました。他にも商品などは作られているんですか?

松浦氏:下村はなんでもやりたがります(笑)。割れてしまったり、売り物にならないようなトマトを地元業者に提供し、商品を色々開発しています。地元(刈谷市)のブリュワリーと提携して、発泡酒「白麴トマトサワー」を作ったり、お菓子屋さんとも連携してトマトが入ったフィナンシェを作ってみたり、カレーパンを作ってみたり。地元の食堂や福祉施設に納めて食材として使ってもらい、代わりに商品のラベル貼りをその福祉施設の方に手伝ってもらう、といった活動もしています。本当に色んなことにチャレンジしていますよ。

インタビュアー:他にもクラウドファンディングに挑戦しようとされていたり、本当に色々なことをされていて話が尽きません。最後に、農業を通して下村さんの転機になったような、印象的な出会いなどはありましたか?

下村氏:デンソー製のハウスを使うにあたって、デンソーの技術者の方に来ていただいて、色々ご相談にのっていただけるようになり感謝しています。そして農業初心者だった私に、トマト栽培のいろはを教えてくださったトヨタネのご担当者の方にも、本当に感謝していますね。

様々な取り組みに挑戦し続けるビレッジ開発。アイディアを次々に形にされていく様子に目が離せません。今後の活動にも注目です。ありがとうございました!

>>>ビレッジ開発の成功事例はこちら

<会社情報>
株式会社ビレッジ開発
所在地 〒446-0059 安城市三河安城本町 2丁目7-13 2F
設立  1974年2月
URL  https://village-kaihatu.jp/

※情報と肩書は取材当時のもの
※一部画像はビレッジ開発様提供

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