注目企業インタビュー 支援を集めるために本当に大切なこと
CAMPFIRE柿原氏に聞く、クラウドファンディング活用術【後編】

「身近な人から目標の3分の1を集める」「支援者一人ひとりと丁寧に向き合う」―クラウドファンディングで成果を出すプロジェクトには共通点があります。前編に続き、CAMPFIRE柿原氏に、製造業のBtoC転換事例、テストマーケティングの活用法、そして成功のための実践的なアドバイスを聞きました。地域で挑戦する人たちへ向けた、熱いメッセージもお届けします。
株式会社CAMPFIRE 地域共創推進チーム 柿原 静香 様
※前編「地域の挑戦を応援する仕組みづくり」はこちら
老舗企業の挑戦、新たな販路へ
―B to B企業がB to C商品を作って成功した事例もあるそうですね。
はい。埼玉のメッキ加工の老舗企業です。新しい挑戦として、自社技術を活かしたメッキ時計を5年かけて開発したんです。
ただ、良いものを作ったけれど売り方が分からないし、ネットワークもない。そんな時に金融機関様が、クラウドファンディングの話をしてくださったんですね。この事業者様はクラウドファンディングでテストマーケティングをする手法をご存知で、その観点でやってみることになりました。
―プロジェクトはどのように進んだのでしょうか。
お知り合いの方には全国まで出向き直接プロジェクトをご説明されていたこともあり、プロジェクトを始めてから自力で250万円ぐらいの支援を得るところまでいきました。そこまでいくと、新規の顧客開拓のために有料の広告プロモーションを使える余力ができたので、これを活用することで最終的には550万円以上集りました。
―その後の展開もあったそうですね。
この取り組みは、製造業の会社が初めてB to C商品を作ってクラウドファンディングで結果を残すという、他でもなかなか無い成功事例でした。その後、CAMPFIREの提携先でもある、ビックカメラさんから「ビックFIRE」のオファーをいただきました。この企業さんもちょうどブランド1周年だから何かやりたいと思ってた、ということで、改めてクラウドファンディングで商品作りに関するプロジェクトをやってくださいました。
―すごい展開ですね。一生懸命プロジェクトをされているのが伝わります。
本当に一生懸命に取り組まれる方で、プロジェクトが終わったあとの「活動報告」もしっかり残してくださっています。

※イメージ図
テストマーケティングの達人―アパレル企業の6度の挑戦
―クラウドファンディングを使って、その後の事業が大きくなった、安定した、といった事例はありますか?
あるアパレルの会社様は、もはやクラウドファンディングの達人で、最初の6回ぐらいはテストマーケティングとして活用していました。
一番最初はアウター。特徴のある素材で「超撥水」を強く訴求して目標を達成してるんですが、14人からの支援で10万円ほど。この結果だと一般的には、クラウドファンディングってそんなに支援も集まらないな、という結論で終わりがちです。でもこの企業様はテストマーケティングとして捉えて、「この打ち出し方では刺さらないんだ。じゃあ、別の打ち出し方を考えてみよう」と、どんどんチャレンジされていったんです。
―試行錯誤を重ねて、勝ちパターンを見つけたんですね。
そうなんです。アウターに関しては超撥水と収納力。パンツに関しては超撥水と収納力と伸縮性。これが勝ちパターンと分かり、何度もプロジェクトを実施してくださっています。
―失敗を恐れずに挑戦することが大切なんですね。
クラウドファンディング実施後にしっかり振り返ることが大事ですね。うまくいかなくても「ああダメだ」じゃなく、打ち出し方がいけなかったかもしれないな、という気づきを得るためのステップだと考えられるかが重要なんです。簡単なことではないですが、それを乗り越えるためにも、一緒に頑張りましょう、と声をかけ一緒に走っています。
支援を集めるための「鉄則」
―支援を集めるプロジェクトの特徴、支援や共感を集めるために大事なことは何でしょうか?
「まずは身近な人へ」プロジェクトを伝えることが大事です。目安としては、目標金額の3分の1程度を”確実に身近な人から集め切る覚悟”があるかどうか。この見通しが立っていないプロジェクトは、公開のタイミング自体を再検討すべきかもしれません。ある程度支援者がいるプロジェクトは支援人数として反映され、新しい支援者にとっても安心感や信頼感につながる重要な要素です。実際に、公開初期に支援が動かないプロジェクトは、その後も支援が集まりにくくなる傾向があります。
―3分の1というのは、かなり高いハードルですね。
そうですね。でも、誰かから支援を得るということに、それぐらいの覚悟は持っていただきたいと思います。次に、支援者との丁寧なコミュニケーションを大切にすることです。支援をいただいたら終わりではなく、そこからが本当のスタートです。特に、近い関係の方ほど「知り合いだから応援してた」という気持ちも強く、丁寧な対応が“次の支援”や“他者への紹介”につながります。
支援直後に個別メッセージでお礼を送るのも重要です。SNSなどで感謝の気持ちを発信しつつ、支援者の声に耳を傾ける。進捗報告や改善を通じて、プロジェクトそのものを「一緒につくる」姿勢を見せる。こうした日々の積み重ねが、支援者を「顧客」ではなく「仲間」「ファン」へと育てていく力になります。
これまでご紹介した例もそうですが、コミュニケーションを大切にしているプロジェクトは、支援者の声を受け止めてリターンや事業内容を改善し、プロジェクト終了後も継続的な関係が生まれています。
―とはいえ、コミュニケーションは本当に大変だと思います。
そうですよね。でも定型文でなく、やっぱり一人ひとりにメールを書くことで、気づきを得られるんですよね。もっとこうしたらいいな、とか、支援者さんの傾向も見えてきて。
クラウドファンディングは、単にお金を集めるものではなく、“誰と、どんな関係を築きながら事業を育てていくか”という営みそのものです。応援してくれる人にしっかり届け、真摯に向き合うこと。それが、共感を集め、長く愛される事業の第一歩だと思っています。
よくある「もったいない」パターン
―逆に、こういうパターンはもったいないというケースはありますか?
よくあるのが、補助金の事業などで採択されてクラウドファンディングを開始した後に、集客がなくて相談が来るケースです。クラウドファンディングは事前の準備や戦略が大事なのでもっと早く相談していただければ…!と思うことがあります。
―なるほど。事前に相談して、しっかり計画を立てることが大事なんですね。
そうなんです。オープン前の段階からご相談いただいて、オープンの時にはしっかり集客されている状態を目指すようにプロモーションをやる。資金調達は融資と補助金で賄えているなら、クラウドファンディングは認知拡大やファンづくりに活用する。そういう使い方が理想なんです。
―他によくある失敗のパターンはありますか?
あとは、やるべきことをやり切れないケースでしょうか。身近な人への声かけ、丁寧なコミュニケーション、ページの改善、活動報告の発信など。全部こなすのは簡単なことではないのですが、そこをやり切れるかどうかが分かれ目になります。
「挑戦が許容される地域」を全国に

―プロジェクトに関わって支援を行う中で、地域に対する特別な想いがあれば教えてください。
クラウドファンディングを通じて地域の挑戦に関わる中で、まだ見えていない価値や可能性がたくさんあると感じています。伝統や技術、人の想いなど、本来であればもっと注目されるべきものが、”知られていない”というだけで埋もれてしまっている。その現実に、もどかしさと同時に、「届け方さえ変えれば、共感は必ず広がる」と信じて、日々プロジェクト支援に取り組んでいます。
クラウドファンディングは、単なる資金集めではなく、「誰が、なぜこの挑戦をしているのか」を言葉にして届ける営みです。プロジェクトをつくる過程では、ターゲットやペルソナを見つめ直し、表現を磨き、自らの価値を再定義していきます。たとえ結果が思うようにいかなかったとしても、そのプロセス自体が、次の挑戦に向けた大きな一歩になります。
―お話をお伺いしていると、支援者との関係性も変わっていくのかなと感じました。
そうなんです。プロジェクトの準備中や公開中、終了後も、支援者の方々と丁寧にコミュニケーションを重ねていくことで、その支援は一度きりの応援者ではなく、「共に事業を育てる仲間=ファン」へと変わっていきます。そうして”人と人の関係性”が育っていくプロセスを、私は何度も目の当たりにしてきました。
だからこそ私は、「挑戦が許容される町」を、ひとつでも多く全国に増やしていきたいと強く思っています。完璧でなくても、計画が整っていなくても、想いがあれば一歩踏み出してみよう。そんな空気が地域の中に根づくことで、未来の担い手や小さな事業の芽が、もっと育っていくはずです。
―地方ならではの課題もあるのでしょうか。
その地域に根付いた慣わしがあったり、移住者の方が孤独な思いをするなどの課題があります。でも、どんな場所にいてもみなさんに応援されながらクラウドファンディングで挑戦できる環境であってほしいですし、周りの皆さんも許容して応援してくれるような、そういう町がたくさん全国にできたら嬉しいなぁと思っています。
地域に根差したクラウドファンディングの仕組みが1つ2つ3つと増えたら嬉しいです。
CAMPFIREでは、地域おこし協力隊の取り組みを支援する「HIOKOSHI」という企画もやっています。地域おこし協力隊の方々は外から来た方が多くて、客観的な視点で地域課題を捉えて、熱い思いを持って活動されているんですね。そういう方々がクラウドファンディングを通じて地域に馴染んで、応援の輪が広がるような取り組みを支えていきたいなぁと思っています。
これから挑戦する人へ―4つの準備
―地域の中小企業の皆さんがクラウドファンディングに挑戦しやすくなるためには、どんなことを準備したら良いでしょうか。応援メッセージもお願いします。
挑戦に向けて準備しておくと良いことをいくつかお伝えしますね。
まず、“誰に届けたいか”を明確にすること。例えば、「地域の人に」「若い人に」だけではなく、もう一歩深く「どんな価値観を持った人に共感してもらいたいか」を考えてみると、プロジェクトの設計も言葉の選び方も、すべてが変わってきます。
次に、自分の想いやストーリーを言葉にしてみること。背景にある原体験や、事業にかける想い、未来への願いなどです。少し恥ずかしいと思っても、素直な言葉のほうが届きます。プロっぽさより、“あなたらしさ”が一番大事です。
そして、“身近な人”に伝える覚悟を持つこと。公開初期に支援を動かすには、家族・友人・取引先・既存顧客など、すでに関係性のある方々の協力が不可欠です。支援を「お願いする」のではなく「共有し、巻き込む」意識で向き合ってみることが重要です。
最後に、支援者との対話を大切にする心構えです。クラウドファンディングは“売って終わり”ではなく、“関係が始まる場所”です。支援者からの声を素直に受け取り、発信を続け、仲間としての関係性を育てていく姿勢が、次につながる原動力になります。
―最後に、これから挑戦する方へメッセージをお願いします。
クラウドファンディングは、挑戦のハードルが低いとは言えません。でも、一人でやらなくて大丈夫です。仲間になってくれる人が、きっとそばにいます。
うまくいくかどうかよりも、「やってみたことで何が見えたか」がきっと大きな財産になるはずです。そして何より、挑戦そのものが、地域の誰かに勇気を与えることもあります。
私は、挑戦が許容される地域を一緒に増やしていく仲間として、心から応援しています。
<編集後記>
筆者が取材で訪れる先には、熱い想いを持った中小企業の方々がたくさんいます。「自分の町をもっと盛り上げたい」「この技術を多くの人に知ってほしい」と思うものの、なかなかうまくいかないというお話も耳にします。今回、柿原さんのお話を聞いて印象的だったのは、「届け方さえ変えれば、共感は必ず広がる」という言葉でした。地域には素晴らしい価値がたくさんある。ただ、それが”知られていない”だけ。
地域で奮闘する企業の皆さんにとって、クラウドファンディングは新しい可能性を開く鍵になるかもしれません。
あなたの地域には、どんな”知られていない価値”がありますか?
<会社情報>
| 株式会社CAMPFIRE | |
|---|---|
| 所在地 | 東京都渋谷区猿楽町18−8 ヒルサイドテラスF棟201 |
| 設立 | 2011年1月14日 |
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| ※情報と肩書は取材当時のもの | |










